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ジャイキリ本の著者が明かす④「言われたことしかやらずに自分で仕事をつくっていかない人は「やる気がない」のだと誤解していました」

2016.09.19

 中小企業の社長や大企業のリーダーに向けて「チームビルディング」を広める仲山進也さん。インターネットのショッピングモール「楽天市場」に出店する方に向けた学習機関「楽天大学」の学長を務めるが、実は楽天株式会社ではマネジメントがうまくできず、自ら部長の座を別の人間に譲った過去を持つという。一方で、ヴィッセル神戸の経営に参画したときには周囲を巻き込みながら、チームを作っていった。

 様々な働き方と人とのつながりを通して、「チームビルディングプログラム」が出来上がった。自らの経験を踏まえながら、効果的なチーム作りのアプローチを教えてくれた。

インタビュー・文=菅野浩二
写真=兼子愼一郎

――今では「チームビルディングプログラム」を展開し、結果を出せるチーム作りのノウハウを広げている仲山さんですが、楽天では“部長白旗宣言”をしたそうですね。

仲山進也 マネージャー業をほかの人に譲って、自分は講座コンテンツをつくって提供する現場の仕事だけをやることになりました。

 サッカーのクラブチームの監督が主人公の漫画『ジャイアントキリング』に、村越というキャプテンが出てきます。村越は自分ですべてを背負い込んでキャパシティーオーバーになっており、プレーのパフォーマンスは落ちるし、イライラのマイナスオーラを発してチームの雰囲気を重くもしていました。私もまさにそんな「村越状態」に陥ってしまっていて。

 そのときは、チーム作りが自分の仕事なのだとは思ってもいなくて、各自が与えられた仕事をちゃんとやることが大事だと思っていました。仕事を任せても、クオリティに納得がいかないと、「これじゃダメだから」と全部自分で引き取ってしまっていたので、どんどんやることが増えていき、逆にメンバーは無力感にさいなまれて辛かったと思います。
 仕事は自分で考えて動くのが当然だとも思っていたので、言われたことしかやらずに自分で仕事をつくっていかない人は「やる気がない」のだと思っていました。でもそれは、全体像が見えているのが自分だけで、みんなには全然共有できていないことが原因だったと、今ならわかります。

 さらに、背中を見せるのがリーダー、みたいなことを本か何かで読んで、何も言わずして自分の思いを汲んでもらえるのがいいチームなのだから、察せないほうに問題があると誤解していました。でもそれは、「チームを作った成果としての状態」であって、最初から何も言わずして察し合えるわけがなかったのです。

 そんな「残念なマネージャー」だった過去の自分に教えてあげたい内容が、「チームビルディングプログラム」に詰め込まれています。もう手遅れですが(笑)。でも、あの「部長白旗宣言」の体験があったからこそ、今このチームビルディングを広める仕事を楽しくやれているので、逆によかったと思っています。

――仲山さんはヴィッセル神戸の経営に携わった経験もあります。サッカークラブで働く中で気づいた効果的なチーム作りのアプローチはありますか。

仲山進也 サッカークラブで働くことは、サッカー好きな人からすれば憧れの職場ですよね。でも実際に入ってみると、やるべきことは結構「普通の会社」と変わらないんです。しかも、ヴィッセル神戸は、三木谷がオーナーになる前は神戸市役所からの出向者が多い組織だったので、「これまで市役所だったのがいきなりベンチャーに変わったら、フロントで働いているみなさんは意味がわからなすぎて混乱するだろうな」と思いました。そこで、「三木谷浩史ってこんな人」という講座をつくって、考え方や価値観を共有する勉強会をやらせてもらいました。ちなみに、そのコンテンツを見た楽天の役員が「これはいいね」と、その後、新人研修で使ってくれていました(笑)。

――それから、どんなことをしていったのでしょうか。

仲山進也 まわりを見渡すと、ユニフォームやグッズがあったので、「売るものがあるなら楽天市場に出店してみよう」と思い、ネットショップを立ち上げました。グッズ担当者に「店長」になってもらって一緒にやり始めたのですが、クラブのフロントの人数は20名ほどで多くはないのに部署がはっきり分かれていて、お互いあまり絡みがない感じでした。グッズ担当の範囲だけだとネットショップでやれる企画にも広がりが生まれないと思って、ほかの部署の人たちにも協力してもらえる工夫を考えました。

 まず、メルマガ。広報の人に依頼して、試合がある前日に「予告メルマガ」、当日に「結果速報メルマガ」、不定期で「選手情報メルマガ」を出してもらうようにしました。

 次に、何か面白い売りものが作れないかという雑談の中で「試合の日にスタジアムツアーをやったら面白くない?」となって、スタジアム運営担当が動線を考え、営業担当が「仮装してナビゲーターやります」、チーム担当が「ベンチに入っていない選手を最後にサプライズで登場させるのはどう?」と意見が出てきて、それをネットショップで販売したところ、あっという間に人気商品になりました。

――広がっていったわけですね。

仲山進也 クラブのほとんどの部署が関わるスタジアムツアーがネットショップに載っているので、みんなに「自分ごと」としてネットショップを意識してもらえるようになりました。

 みんなが自分の得意分野を持ち寄って、掛け合わせることで価値が生まれたわけです。「チーム」になれた一体感がありました。

 世の中の多くの組織では、分業化が進みすぎてバラバラにがんばっている状態になっています。隣の部署の仕事は、よくわからないから、もちろん口も出さない。それだと効率的に業務をこなす分にはよいかもしれませんが、チームになれているとは言えず、もったいないなと思います。

「ヒエラルキー型の組織マネジメントとはまったく異なるチーム作りの視点を持つことで、見える世界が変わってきます」

――サッカーキング・アカデミーで開催される5月23日(月)の単発セミナーや6月6日(月)からの3Days短期セミナーでも、そのあたりのことが学べますか?

仲山進也 単発セミナーのほうは、体を動かすアクティビティを交えつつ、バラバラにがんばっている組織が「チーム」になるまでのプロセスを、体験的に学んでいただく予定です。
 短期セミナーのほうは、人気漫画『ジャイアントキリング』とそれを題材にした私の著書『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』を読み込んでいきながら、チーム作りについて理解を深めていく内容です。漫画を読んだことがなくても大丈夫ですが、できれば初回に4巻までは読んでおいていただくと、理解度がグッと上がると思います。

 いわゆるヒエラルキー型の組織マネジメントとはまったく異なるチーム作りの視点を持つことで、見える世界が変わってきます。チームマネジメントで苦労している経営者の方や中間管理職の方、あるいはサッカーチームの指導者やキャプテンの方に参加していただければうれしいです。

――「チームビルディングの講座」なので、課題図書である仲山さんの本と漫画を買うにしても会社の経費で落とせそうですね(笑)。

仲山進也 確かに。『ジャイアントキリング』はチーム作りを学ぶ最高の教材ですから(笑)。

 あとは、夢中で仕事(やサッカー)をやりたいのに、なんとなくモヤモヤしながら働いている、という人にもぜひ来ていただきたいです。いわゆる「ゾーン」に入るためのヒントもお伝えする予定になっていますので。

楽天株式会社 楽天大学 学長
仲山考材株式会社 代表取締役
仲山 進也(なかやま しんや)

北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。
シャープ株式会社を経て、1999年に社員約20名の楽天株式会社へ移籍。初代ECコンサルタントであり、楽天市場の最古参スタッフ。
2000年に「楽天大学」を設立、楽天市場出店者42,000社の成長パートナーとして活動中。
2004年、Jリーグ「ヴィッセル神戸」の経営に参画。
2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員となり、2008年には仲山考材株式会社を設立、Eコマースの実践コミュニティ「次世代ECアイデアジャングル」を主宰している。
著書『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』
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『あの会社はなぜ「違い」を生み出し続けられるのか』
『あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか』
『「ビジネス頭」の磨き方』

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By サッカーキング編集部

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