
文=馬見新拓郎 Text by Takuro MAMISHIN
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images
カナダでFIFA女子ワールドカップを戦うなでしこジャパンに、新たな変化をもたらしている選手がいる。左サイドバックから左サイドハーフへとポジションを変えた、鮫島彩(INAC神戸レオネッサ)だ。
鮫島は2011年の女子W杯ドイツ大会と2012年のロンドン五輪で左SBとして活躍したが、今大会はひとつポジションを上げた新たな場所で光りを放っている。
グループリーグ第2戦のカメルーン戦では猛烈な攻め上がりで見事に先制点を決め、第3戦のエクアドル戦では、この日が28回目の誕生日だった鮫島から宮間あや、菅澤優衣香と経由して決勝点が生まれた。

『新たな場所』とは書いたものの、左SHのポジションは、実はTEPCOマリーゼやベガルタ仙台レディースで鮫島が慣れ親しんだ場所だ。時間帯によってはこれまでの左SBも任されているため、鮫島が代表で求められる役割は増す一方だが、彼女はそれを実直にこなして結果を残し続けている。
鮫島にとってのこの4年間は、怪我とともに歩んだとも言い換えられるほど、他選手と比べてプレーに集中できる期間が短かった4年間だった。とりわけ、ロンドン五輪からの3年間は右足の怪我に悩まされた。
2011年の東日本大震災以後、ボストン・ブレイカーズ(アメリカ)やモンペリエHSC(フランス)でのプレーを選択し、その間に左SBとして女子W杯とロンドン五輪のタイトル獲得に貢献。
帰国後、プレナスなでしこリーグの仙台へと移籍してからは、怪我で長期離脱を余儀なくされた。2013年シーズンは国内リーグでのフル出場試合が3回に留まり、2014年始めにも右ひざ半月板を負傷して、さらに苦しい期間は続く。当然、2013年3月から約1年7カ月間は代表のピッチからも遠ざかることになった。

だが、2014年10月のカナダ遠征メンバーに選出されると、代表復帰2試合目でいきなりゴール。今大会で日本が準々決勝と準決勝を戦うエドモントンでゴールネットを揺らし、自身2回目の女子W杯登録メンバーに名を列ねた。
「各国の選手スキルや戦術はすべて上がっていると思う。自分たちは研究され尽くした中でのW杯。まずはポジションの近い選手とコミュニケーションを取って、さらにいいものを作り上げたい」と意気込んで臨んだ女子W杯で、鮫島に用意されていたのは左SBではなく、左SHのポジションだった。
佐々木則夫監督の「チャンスメイカーの役割を期待して」という起用に対し、鮫島は如何なく持ち味を発揮した。

グループリーグ4得点のうち、鮫島は1得点、1起点の活躍を見せた。しかしエクアドル戦後、試合内容に不満が残ると本人は話している。
「DFラインの4人は練習でもあまり組んだことがないメンバーだったけど、大会ではイレギュラーなことは起こり得ること。できた部分とできなかった部分があった。それでもやっぱり、攻撃が単調になったところもすごく気になる」
エクアドル戦も、前後半で左SBと左SHのふたつのポジションをこなした鮫島。これからも攻守両面で様々な考えを巡らせながらプレーを続けていく。