2012.06.14

日本をアジアの頂点に導いた先進国スペインの監督とブラジル育ちのエース


文・写真=座間健司

 フットサル日本代表が、アラブ首長国連邦のドバイで行われていたアジア選手権を制覇した。日本がアジアの頂点に立つのは2006年以来に実に4大会ぶりとなる。2年に1度行われるアジア選手権。今年は上位4チームがワールドカップ出場権を自動的に獲得するため、大会の重要度は増していたが、日本は決勝でタイに6ー1で勝利し、優勝を飾った。

 日本の優勝を語る上で欠かせないのが、ミゲル・ロドリゴ監督の功績だ。2009年に日本代表監督に就任した指揮官は世代交代を敢行。2007年にスタートしたばかりのFリーグに所属する将来有望な若手選手を中心にチームを構成した。2010年のアジア選手権では準備期間が少なく、準決勝にイランに0-7の大敗を喫していたが、チームを率いて3年目となる今回は、しっかり準備を施し、アジア王者の称号を手にした。

 ミゲル監督の母国スペインは、フットボール同様にフットサルでも強豪国だ。2度の世界王者に輝き、2年に1度行われる欧州選手権では現在大会5連覇を果たしている。

 また、スペイン人監督も世界中で活躍している。今大会のアジア選手権では参加16カ国のうち、日本を含めてスペイン人監督は4人。その4人のうち2人がチームを率いる日本とクウェートはワールドカップ出場権を獲得している。彼らの指導力がアジアのレベルの底上げをしていることは間違いない。

 なぜスペイン人監督の指導力は高いのか? 

 その答えはスペインの指導者ライセンス制度にある。スペインのライセンス制度は国が認可している資格なのだ。フットサルの監督ライセンスが国家、もしくは政府が認める資格となっている国はスペインだけだ。スペインのライセンスには、インストラクターから1部リーグのチーム指導に必要なレベル3まで4段階ある。カテゴリーによって講習、そして実技トレーニングの期間は違うが、とにかく出席し、試験をパスしなければ資格を手にすることはできない。資格を手にした人間は、いろんな観点からフットサルを勉強してきたエキスパートばかりだ。
 
そして、資格を手にしている人数も多い。少なくとも、ライセンス制度の初歩であるインストラクターの資格がなければ、子供たちを指導することはできないからだ。ゆえに選手たちは幼少の頃からフットサルのエキスパートの指導の下で練習に励むことになる。だからスペインからは“個人戦術”に優れた多くの素晴らしい選手が輩出されるし、リーグの競争力も高い。

今回の日本代表には、ミゲル・ロドリゴ監督の他にフィジカルコーチとしてスペイン、ロシアなど欧州の名門クラブでの指導歴を持つスペイン人のチチョも加わった。もちろん選手たちのタレントもそうだが、日本代表のアジア制覇の大きな要因のひとつにスペイン人の指導力があったのだ。ミゲル監督は代表監督だけでなく、日本フットサル界のライセンス制度の創設という仕事も並行して行なっており、これからも日本フットサル界の発達に尽力している。


ミゲル・ロドリゴ監督(右から3人目)を中心に日本を優勝に導いたテクニカルスタッフ(左)
大会MVPに輝いた日本代表の19歳逸見勝利ラファエル。今大会全試合でゴールを決めている(右)

 今大会の最優秀選手に選ばれたのは、日本代表の逸見勝利ラファエルだった。現在、日本唯一のプロチーム、名古屋オーシャンズに所属する彼は、15歳の時に来日し、その後、日本国籍を取得。それまではブラジルで生活していた。彼は他の日本代表選手と違い、幼少の頃からフットサルをしており、15歳まで毎週末、ブラジルでのリーグ戦で公式戦をこなしてきた。
 
18歳からフットサルを始めた選手がほとんどの日本代表にあって、彼はブラジリアンフットサルスクールで育った、つまり唯一、幼少の頃から監督がいる環境でフットサルをプレーしてきた日本代表選手なのだ。19歳とチーム最年少だが、フットサルの試合数はキャプテンの木暮賢一郎らベテラン選手と比べても遜色はないだろう。彼は「どうすれば勝てるのか」ということを熟知している。勝つプレーを肌で知っているのだ。逸見は毎試合ごとに得点を決めて大会MVPに輝いた。彼のような選手をブラジルではなく、今後は国内で育成することが日本の課題のひとつだろう。

 11月にタイで行われるワールドカップへの出場権を手にした日本。本大会に向けて、日本サッカー協会の大仁邦彌副会長やミゲル監督は、昨季Fリーグに1試合だけエスポラーダ北海道の選手として出場した横浜FCの三浦知良の招集を前向きに検討している。

ブラジルでプロのキャリアを始め、イタリアのチームに所属するなど経験豊富な彼が、世界最先端であるスペイン人指揮官の指導をどう思うのか。また、幼少からフットサルに慣れ親しんでいる逸見のプレーをピッチ上でどう感じるのだろうか。きっと三浦知良はフットサルを通して、また新たなフットボール観を手にするに違いない。
 
【プロフィール】
座間健司(ざま・けんじ)
1980年7月25日生まれ、東京都出身。2002年、東海大学文学部在学中からバイトとして『フットサルマガジンピヴォ!』の編集を務め、卒業後、そのまま『フットサルマガジンピヴォ!』編集部に入社。2004年夏に渡西し、スペインを中心に世界のフットサルを追っている。フットボールは2008-2009シーズンからビジャレアルのソシオとなり、定期的に試合観戦をしている。2012年よりフットサル、フットボールを中心にフリーライター&フォトグラファーとして活動。公式ブログはこちらから。メルマガ「座間健司のワールドフットサルマガジン」も毎週火・木曜日に配信中。購読はこちらから。試し読みもできます。

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