2014.02.05

「A代表も、知的障害者のサッカーも、ブラインドサッカーも」――落合啓士

 2011年に産声を上げ、サッカーファン、映画ファンから熱い支持を集めてきた「ヨコハマ・フットボール映画祭」。今年も2月8日(土)〜11日(火/祝)の4日間で世界のサッカー映画の珠玉の作品か9作品を一挙上映! そこでサッカーキングでは映画祭の開催を記念し、豪華執筆陣による各9作品の映画評を順次ご紹介。今回はブランドサッカー日本代表・落合啓士さんより特別上映作品『プライドinブルー』 についての映画評をご寄稿いただきました。
プライドinブルー

「A代表も、知的障害者のサッカーも、ブラインドサッカーも」落合啓士

 INAS-FID(国際知的障害者スポーツ連盟)サッカー世界選手権。2006年ドイツワールドカップの後、同じドイツでこのような大会があったことをどれだけの人が知っているのだろう?

 恥ずかしながら私も知らなかった。

 私は視覚に障害がある。障害をもっている私でさえも知らないことを、健常な人が知るためには素晴らしい映画だったのではないだろうか。

 障害が発覚した時の本人の気持ち、家族の気持ちなど同じ障害者としてすごく共感できた。かつて私がなかなか受け入れられなかったのは、周囲の人からあわれな目で見られる、そのような社会の空気があったからだ。今は昔よりもだいぶよくなってきているかとは思う。

 障害を受け入れるにはなにかきっかけが必要だが、世界中でもっとも愛されているサッカーというスポーツにはその力がすごくある。そう断言できるのは私もサッカーに救われた一人だからだ。

 国歌斉唱が流れる時はいつも鳥肌がたつ。映画の中の彼らも似たような気持ちになっているのではないだろうか。それはサッカーA代表も、知的障害者のサッカーも、ブラインドサッカーも、どのカテゴリーでも同じ瞬間だから。

 映画の中の試合は厳しい戦いが続く。日本のアマチュアスポーツに多いことだが、海外のチームと試合をすることが少ない。だから大会を通してさまざまな経験をしていく。そのため大会では試合ごとによくなる。

 予選グループでは初戦が大事だ。海外の知的障害者のサッカーの現状はわからないが、経験値の差が出たのではないだろうか。現地の観客の声援がすごかったが選手たちはどう感じたか気になるとこだ。私もアウェイで大声援の中プレイしたことがあるが、それまでそんな大声援の中で試合したことがなかったから多少なりとも影響を受けた。

 そんな中、日本コールがあることはとても勇気づけられたのではないだろうか。順位決定戦となった一戦は大きな経験になったことだろう。そしてドイツの地でも韓国と試合するというのはライバルの宿命なのだと感じた。なぜなら私たちブラインドサッカー日本代表も2006年アルゼンチンで開催された世界選手権の順位決定戦の最後に韓国と試合をしたからだ。

 アマチュアスポーツは仕事との両立が難しい。それを理由に技術があっても代表をやめる選手も少なくないだろう。そして障害者の雇用は簡単ではない。そんなことも考えさせられた。

 この映画を通して障害とはなんなのか、あたりまえに混ざり合うにはなにが必要なのかを考え、それをアクションする方が一人でも増えてくれると嬉しい。

【プロフィール】
落合啓士(おちあい・ひろし)
1977年8月2日、神奈川県横浜市出身。ブラインドサッカー日本代表。日本の10番を背負うキャプテン。ブラインドサッカーチーム「buen cambio yokohama」代表も務める。ニックネームはおっちー。

『プライドinブルー』
(日本/ドキュメンタリー/84分/2007年制作)
上映:2月11日(火・祝)11:00~
監督:中村和彦
出演:加藤隆生/宮原優樹/斉藤秀平
舞台:006年もう一つのワールドカップドイツ大会(国際知的障害者スポーツ連盟サッカー世界選手権)

【ヨコハマ・フットボール映画祭2014について】

世界の優れたサッカー映画を集めて、2014年も横浜のブリリア ショートショート シアター(みなとみらい線新高島駅/みなとみらい駅)にて2月8日(土)・9日(日)・10日(月)・11日(火/祝)に開催! 詳細は公式サイト(http://yfff.jp)にて。

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