2014.01.05

『堅守・市船』のイメージを大きく変えた『超攻撃的2バックシステム』

文=安藤隆人

「もったいない」。

この一言に尽きる。

 選手権準々決勝、インターハイ王者の市立船橋は、昨年の選手権準優勝の京都橘に0-2で敗れ、国立を目前に大会から姿を消した。

 京都橘は間違いなく素晴らしいチームだった。ゆえにこの敗戦は波乱ではなかった。だが、市立船橋は間違いなく今大会ナンバーワンの力を持っていた。

 京都入団内定のFW石田雅俊、DF磐瀬剛ばかりに目が行くが、そのわきを固める選手も実に役者ぞろいだった。来年は間違いなく注目の的になるであろうGK志村滉、クレバーな読みとポジショニングが光るDF柴戸海、高性能の左足を駆使するDF山之内裕太、高いボール奪取力が魅力のMF打越大樹、機動力のあるFW横前裕大、バランス感覚に優れたFW成田悠冴など、個性的な選手が多くいた。

 さらに「選手の特性を見て、戦い方を決める」と春先に話していた朝岡隆蔵監督は、思い切った戦術を採った。磐瀬と柴戸という本来ダブルボランチを務める二人を最終ラインに置いて守備が安定した。同時に、積極的なビルドアップが可能になり、攻撃時には両サイドバックを高い位置に張り出させ、石田、室伏航、成田といった、キープ力と裏への飛び出しが光るセカンドアタッカーを3シャドーに置き、彼らが高い位置から仕掛けられるようにした。

 この『超攻撃的2バックシステム』は、これまでの『堅守・市船』のイメージを大きく変えた。破壊力ある攻撃で相手を圧倒するだけでなく、ハイリスクな戦術を取りながらも、守備面では全員が素早い攻守の切り替えで相手を潰し、数々の戦いをモノにしてきた。

 インターハイを制すると、県予選決勝で高円宮杯プレミアチャンピオンを下し、プレミアリーグ参入戦も制した。今大会でも優勝候補筆頭で、京都橘戦も一人一人の技術が高く、戦い方はぶれなかったが、相手の身体を張った守備を崩せず、相手エースの2発に沈んだ。

 国立にはたどり着けなかったが、これで彼らのサッカーの価値が落ちるわけではない。

 夏の王者ゆえの、伝統校『市船』ゆえのプレッシャーは想像を絶するものがあった。どのチームも彼らに対しては、徹底した研究と対策を施す中、周りからは『勝って当たり前』の目で見られた。

「研究されるのは想定内でやっている。それでも勝たないといけないのが市船。選手たちは市船がどういうチームであるか分かっていると思う。その中で良く戦ってくれた」と朝岡監督が言ったように、彼らは1年を通して、市船のプライドを持って、指揮官が掲げたサッカーを実践し続けた。

「このチームは素晴らしかった。でも、負けてしまうと、証明することが難しくなってしまう。結果が伴わなかった今、もう何も言えない」。

 朝岡監督は目から溢れてくる涙を必死にこらえながら、気丈にこう言った。彼の言葉を代弁するわけではないが、間違いなく、このチームはハイレベルで、1年かけて熟成させた味のあるチームだった。

もっと見たかった。こう思わせてくれただけでも、彼らがやってきたことは非常に意義あるものだった。彼らはまさしく『記憶に残るチーム』であったことを、ここに記しておきたい。

文=安藤隆人

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