2018.06.20

【コラム】今こそメッシとの共存を…“生かされ上手”のディバラがエースを救うカギに

メッシ ディバラ
2人が揃ってW杯のピッチに立つ瞬間は訪れるだろうか… [写真]=Getty Images
サッカーキング編集部

 32年ぶりのワールドカップ制覇を狙うアルゼンチンが、早くも苦境に立たされている。

 難敵が揃うグループDの初戦で、初出場のアイスランド相手に1-1のドローという手痛い結果。王者ドイツが敗れ、ブラジルも引き分けスタートとなったことを考えれば、アルゼンチンだけが苦しんでいるわけではない。ただ、リオネル・メッシに頼り切りの戦術を見ると、この先も彼らが苦戦を強いられるだろうということは想像に難くない。しかもメッシは、PK失敗という精神的なダメージを受けてしまった。

 ホルヘ・サンパオリ監督はグループステージの残り2試合もメッシ中心の戦術を崩すことはないだろう。それでもいくつかの変更はあるはずで、選手起用に注目が集まる。そこで個人的に期待しているのが、アイスランド戦では出番のなかった背番号21、パウロ・ディバラだ。

 ユヴェントスではすでに絶対的エースとしての地位を確立しているが、代表においては12試合0得点と本領を発揮できておらず、W杯メンバー落選も囁かれた。最終的に23人の枠に入ったものの、プレースタイルがメッシと被るという理由もあり、指揮官からは重宝されていない。

 たしかに左利きのアタッカーで足元の技術に優れ、右サイドからのカットインや正確なシュートを得意としている点は似ているが、メッシとディバラは似て非なる選手である。共存は可能なはずだ。むしろディバラこそが、メッシを救うカギを握っているのではないだろうか。

ディバラ

アイスランド戦では出場機会は訪れなかった [写真]=MB Media/Getty Images

 今シーズン、メッシは公式戦で45ゴール18アシストを記録した。一方、ディバラは26ゴール7アシストと、主にトップ下でプレーしていた割にアシストが少なかった。なんでもできるメッシは“生かし、生かされる”選手だが、ディバラはどちらかと言えば“生かされる”タイプの選手なのだ。代表でもクラブでもチームメイトであるゴンサロ・イグアインは今シーズンの公式戦で8アシストを記録したが、そのうち5つがディバラへのものだった。生粋の点取り屋であるイグアインがお膳立てに回るほど、ディバラが“生かされ上手”だということがわかる。

 また、ディバラはオフ・ザ・ボールの動き出しが巧く、瞬時に空いたスペースを見つけてフリーでパスを受け、少ないタッチで正確なシュートへつなげるプレーを武器としている。常にゴールを意識してポジション取りをするため受けてからの迷いがなく、振り足が速いためミドルレンジからでも得点を奪うことができる。もちろんメッシも同じようなプレーを得意としているし、そういったシーンは度々目にするが、それはあくまでも“バルセロナのメッシ”だ。周りに非凡なパスセンスを持つ選手が多いバルセロナでは、メッシは自由に動いて好きなポジションでパスを受けることができるが、配給役がいない代表ではメッシがゲームメーカーを務めなければならない。つまり役割が違うのだから、タイプが似ていても問題はないはずだ。

 アイスランド戦ではすべての選手がメッシを生かすために走り、パスを集めたが、逆にメッシがボールを持ったときに“生かされる”選手がいなかった。そうなれば相手は守りやすい。しかしディバラなら、メッシに“生かされる”ことができる。また、ディバラは“生かされ上手”だと記したが、同じビジョンを描くことができるメッシと組めば、彼が“生かす”側に回ることも可能だろう。同じタイプだからという理由だけで共存不可と決めつけるのは、あまりにももったいない。

ディバラ メッシ

共存は難しいと見られているディバラとメッシ [写真]=Getty Images

 では、実際にこのふたりを併用する場合、システムはどうなるだろうか。これまでサンパオリ監督のもとで両者が揃ってピッチに立ったのは3試合のみ(ディバラのプレー時間が終盤の3分間だけだった昨年11月のロシア戦は除く)で、その際のシステムはいずれも「3-4-2-1」。ディバラとメッシはシャドーの位置でコンビを組んだが、それぞれ無得点に終わった。

 同時に起用するのであればこのシステムが最も適しているように思えるが、チームとしてなかなか結果が出なかったこともあり、指揮官は2-4と大敗した昨年11月のナイジェリア戦を最後に3バックを封印。以降は「4-2-3-1」を使い続けている。

 このままシステムを変更しないのであれば、併用の可能性として第一に考えられるのはディバラを右サイドに置く形だが、その場合は守備面が懸念される。また、メッシを1列上げてディバラをトップ下に置く、あるいはその逆、というのは一つのオプションになり得るが、アイスランド戦で素晴らしいゴールを決めたセルヒオ・アグエロを外すのは簡単な決断ではない。

 一方、システム変更に踏み切るのであれば、「4-3-2-1」のシャドーで組ませるパターンか、「4-3-1-2」でどちらかをトップ下、どちらかをツートップの一角で起用する方法もあるが、ぶっつけ本番で試す勇気があるかどうか……。そう考えると、3バックに再チャレンジするほうが現実的とも言える。

 ただ、ここまで記したのはディバラを先発に組み込む上での考察であって、最も簡単なのはジョーカーとして途中投入する方法だろう。攻撃が停滞した場面で、どうしても1点が欲しい場面で、多少システムを崩してでもサンパオリ監督には是非、21番を起用してほしい。蹴らせてもらえるかはわからないが、彼にはメッシのそれを上回るほど正確なフリーキックもある。そしてなにより、ワールドカップのような大会を制するためにはラッキーボーイの存在が不可欠だ。パウロ・ディバラはアルゼンチン代表メンバー23人の中で最も、その可能性を秘めているように感じる。

文=本間慎吾

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