2017.05.26

【ライターコラムfrom群馬】新加入の韓国人FWカン・スイル…ドーピング違反から2年、日本でのリスタート

2015年にドーピング違反で長期出場停止処分を受けていたカン・スイルは今月に群馬に加入した [写真]=伊藤寿学
サッカー、高校野球などを中心に取材活動を続けるライター。ザスパの取材は今年で15年目。Webサイト「群馬サッカーnews Gマガ」を運営するほか、編集プロダクション業務を行っている。

 ドーピング違反で約2年間プレーしていなかった元韓国代表ストライカー、カン・スイルが、日本でリスタートを切った。5月13日のJ2リーグ第13節愛媛FC戦で先発出場、707日ぶりにピッチに立った。

 アメリカ人の父を持つ韓国人FW。馬力あるスピーディーなドリブルと、パワフルなヘッドが武器のストライカーだ。2011年にKリーグデビューを果たすと、着々とゴールを積み重ねて、ステップアップを図った。そして、2015年のロシア・ワールドカップ2次予選の韓国代表に初選出された。
 
 ショッキングなニュースが流れたのは、代表デビューを間近に控えたときだった。

 ドーピング検査により、陽性反応が発覚。FIFAなどから約1年11カ月の出場停止制裁処分を受けた。カン・スイル本人が、ザスパクサツ群馬の取材陣に語った内容によると、日本製の育毛剤ミクロゲン・パスタを使用したことがドーピングにつながったという。

「一体、何が起きたのか分からなかった。サッカー選手として幸せの絶頂から、奈落の底に落とされた気分だった」。サッカーキャリアの頂点が視野に入りながらの転落。選手として最も充実していた27歳からの2年間が「空白」となった。目標を失ったストライカーは、失意の時間を過ごした。

 「元韓国代表選手が売り込みをかけているらしい」。そんな噂が届いたのは、昨季だった。群馬の関係者によると、代理人からのリストに名前があったというが、プレーできないため獲得には至らなかったという。

 カン・スイルが、群馬の練習場に姿をみせたのは制裁解除が近づく今年の3月だった。Kリーグ時代は長髪が特長だったが、来日の際は長髪ではなく丸坊主。その表情は、非常に穏やかだった。

「この2年間は、毎日が苦しみの連続だった。朝起きてから何をすればいいのか分からず、ただ時間が流れるのを待つだけだった」

 群馬は開幕から低迷していた。今季から指揮を執る森下仁志監督の戦術、選手起用がハマらずにチームは開幕から11試合勝ちなし。最下位に低迷するなどJ3降格の危機に瀕していた。焦ったクラブは、カン・スイルとの契約を急ぎ、制裁解除を確認した上で選手登録、ピッチに送り込んだ。

カン・スイルはパワフルなヘッドとドリブルを武器とするストライカー [写真]=J.LEAGUE PHOTOS

 復帰戦となった第13節愛媛戦はチームにフィットしなかったが、第14節レノファ山口FC戦で復帰初ゴールを挙げて勝利をたぐり寄せると、第15節カマタマーレ讃岐戦でも前線で献身的に動き回り、チームの2連勝に貢献した。

 カン・スイルの実力は本物だ。代表に匹敵する力を持つ選手の加入によって、群馬は息を吹き返した。

「もう一度、韓国代表に戻るためにプレーする。失ったすべてのものを奪い返したい」

ドーピング違反から2年、カン・スイルは失われた栄光と時間を取り戻すために戦う。

文=伊藤寿学

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