2017.05.08

【ライターコラムfrom川崎】「背中を追ってきた」大島僚太の“16”を継ぐ、静学の後輩・長谷川竜也

長谷川竜也
プロ2年目のシーズンを迎えている長谷川竜也 ©J.LEAGUE PHOTOS
川崎フロンターレの取材を中心に活動。将棋界にも精通。著書に「将棋でサッカーが面白くなる本」(朝日新聞出版)。「川崎フロンターレあるある1&2」、「将棋ファンあるある」(TOブックス)。「サッカー脳を育む」(中村憲剛/ぴあ)では企画&構成も担当。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。

 3-0で完勝した明治安田生命J1リーグ第10節のアルビレックス新潟戦。

 立ち上がり、果敢にプレッシングをかけてくる新潟に手こずるも、次第に川崎フロンターレがボールを動かして主導権を握り返していく。新潟は前傾姿勢になっていたダブルボランチの背後にスペースが生まれており、川崎の選手がその場所に顔を出してボールを受けて、攻撃の起点にし始めたのだ。そこからの仕掛けでFKを獲得するなどチャンスを掴んでいった。

 試合後、復帰戦となった大島僚太は、「相手は前から来ていたが、タツヤが裏をとってくれたし、いいところで顔を出してくれた。そこでしっかりとボールを付ければ、相手を置き去りにできていました」と振り返る。

 大島が口にした「タツヤ」とは長谷川竜也のことである。昨年に順天堂大学から加入した2年目の選手だが、大島にとっては静岡学園の後輩にあたる存在でもある。

 長谷川が川崎でつけている背番号は『16』。これは大島が2年前までクラブでつけていた番号だ。昨年、大島は10番を背負うにあたり、自身がつけていた番号の後釜を「タツヤがいいんじゃないんですか」とそれとなく伝えたそうである。そんなところからも両者の関係性が垣間見える。

 ただ大島僚太長谷川竜也は、去年はJリーグのピッチで同時に出場する機会はなかった。長谷川がJリーグ初スタメンとなったのはサガン鳥栖戦だが、当時は大島がリオデジャネイロ・オリンピックの期間中。その後、シーズン最終盤に長谷川はスタメンを掴むも、この時期は大島がケガで離脱中だった。その後の天皇杯で大島は復帰したが、今度は長谷川がケガで離脱。すれ違っていたのである。

大島僚太

長谷川の高校の先輩である大島僚太 ©J.LEAGUE PHOTOS

 ようやく公式戦同時出場を果たしたのは、今年のAFCチャンピオンズリーグ第3節・広州恒大戦だ。60分に長谷川が途中交代で入り、そこでピッチでの初共演となった。そのことについて長谷川は、こう振り返っていた。

「去年は一回も(同時出場は)なかったですね。自分がケガして、リョウタくんがケガしていて、(ACLの)広州恒大戦で初めて(同じピッチに立ちました)。一緒にできるのは、素直に嬉しいですね。ずっと背中を追いかけてきたので。そういう選手と一緒にやれるのは、自分もやってやろうという気持ちになる」

 Jリーグのピッチで二人同時に先発出場を果たしたのは、4月1日のJ1第5節・ベガルタ仙台戦だ。この試合で長谷川は今季初ゴールを記録するのだが、後半の立ち上がりに大島が負傷交代。右ヒラメ筋の肉離れで約1カ月の離脱となってしまった。競演はまたも長続きしなかった。

長谷川竜也

仙台戦での得点後、小林が長谷川を祝福 ©J.LEAGUE PHOTOS

 一方の長谷川は、スタメンに定着するほどのパフォーマンスは見せられず、ここ最近はベンチから戦況を見つめる機会が続いていた。ようやく先発のチャンスが巡ってきたのが、この新潟戦だった。試合前、自分の中にこんなテーマがあることを口にしていた。

「いま、自分の中で取り組んでいることがあります。それは前を向いて仕掛けることであったり、もう少し自分を出すこと。周りに合わせようとしてしまい、そっちが優先になってしまった。まずは自分の良さを出すことを第一優先にする。そういうプレーが出たら効果的だし、相手にとっても嫌なはず。前を向いて仕掛けること。それは外から見ていて感じていたし、そういったところを自分は意識していきたい」

 その思いは後半のピッチで表現されることとなる。それが、50分に生まれた追加点のシーンだ。長谷川が高い位置でボールを奪い返すと、そのままサイドから力強くドリブル。猛然とゴールに向かって運んでいったのだ。

「普段だったら、後ろに下げて(ボールを)つなぎ直していたと思います。でもあのときは自分でいこうと決めていました。ミスしてもいいや、自分でやってやろうと。パスではなくドリブル。まわりと合わせるのではなく、自分で打開していく。そういう狙いが2点目につながったと思います」

 ドリブルで打開していく意思を見せたことで、この瞬間の新潟守備陣は周囲の4人が長谷川に引きつけられている。そこで生まれたスペースに走り込んでいたのは小林悠。阿部浩之の落としを受けると、難なく流し込んだ。

小林悠

新潟戦、小林の得点をともに喜ぶ長谷川 ©Getty Images

 長谷川にはアシストこそつかなかったが、「自分がカットインしたときに阿部ちゃんがうまく止まってくれた。そこに当てて、3人目で悠さんが動き出す。話し合っていた、理想の形でした」と、力強いドリブルで起点となり、満足げな表情だった。

 長谷川は65分まで出場し、大島は76分まで出場。お互いにフル出場とはならなかったが、勝利に貢献。奇しくも、2人が初先発での共演を果たした第5節・仙台戦以来の白星でもあった。

 試合後のミックスゾーンで、長谷川に大島僚太の存在についてあらためて聞いてみた。「やっぱりやりやすいですね」と笑顔になり、こう言葉を続ける。

「ミスしたときも一番に声をかけてくれるので、積極的にやろうと思えます。(ピッチに)いてくれるだけで、自分としては大きな存在です」

 クラブ史上初めて日本人で10番を背負った大島僚太。その大島の背番号16を引き継ぎ、その背中を追いかけている長谷川竜也。そんな若武者に注目してみるのも面白いかもしれない。

文=いしかわごう

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