2017.04.20

【インタビュー】矢島慎也が明かす胸の内、試練の時をどう乗り越えるか

矢島慎也
サッカーキング編集部

 ファジアーノ岡山で2シーズンの武者修行を積んだ生粋の“浦和っ子”が、古巣への復帰を決断した。

 選手層が厚い浦和レッズでポジションを確保するのは容易なことではない。実際、MF矢島慎也はここまで思うように出場機会をつかめていない。

「別に話すことなんてないですよ」

 そんな冗談を言いながら自嘲気味に笑う。こうして始まった今回のインタビューで矢島が吐き出した言葉には、戸惑いやじれったさが詰まっている。それでも厳しいサバイバルに挑み、「僕のサッカー人生はまだまだ続いていく。この時間も無駄にはできない」と腐らずに汗を流す23歳の表情には、たくましさが漂っていた。

矢島慎也

インタビュー・文=高尾太恵子
取材協力・写真=ナイキジャパン

■今までやってきたサッカーと真逆

――3年ぶりに戻ってきた浦和レッズの印象はいかがですか?
うまく説明できないんですけど、やっぱり浦和は難しいサッカーをしていると思います。岡山とはやっていることが違うし、自分の考えと違うことを求められることも多いですね。プレー中に起こるあらゆるシチュエーションの中で自分が考えていることと、(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督が求めていることが違う。そういう状況を抜け出すためにも、早く浦和のサッカーを吸収していかなければいけないと感じています。

――つまり、あるシチュエーションで矢島選手はAを選択すべきだと思っていても、監督の答えはBであると。
簡単に言えばそうですね。自分が今までやってきたサッカーとは真逆。似ているようで、全く違う。別物なんですよ。今までの自分のプレーとは違うことをしないといけない。大きく変わらないといけない部分です。

――今まで自分が持っていなかった引き出しを増やしていく作業をしているということでしょうか。
はい。ただ、それが想像以上に難しくて……。おそらく選手には一人ひとりにサッカー観のようなものがあって、僕にも約20年のサッカー人生で培ってきたものがある。それが全く違うので、難しいです。

――期限付き移籍で岡山に加入する前とは違った壁ですね。
そうですね。当時はついていくだけで精一杯でした。でも、今はいろいろなことを考えながらできている。岡山ではコンスタントに試合に出ていたし、特に守備面での成長を感じています。だから、今のチームでもやれる自信はある。もちろん、個々の質の高さは練習を通して感じているけど、その中で自分ができないとは思いません。浦和の選手たちは、一対一の局面や球際といったサッカーの本質の部分のレベルが高いので、むしろ一緒にプレーしていてすごく面白いですね。

――岡山ではボランチでプレーしていましたが、浦和ではシャドーで起用されることが多い。ポジションの違いにも戸惑いがあるのでは?
ありますね。でも、ポジションが変わったことを言い訳にはしたくない。ボランチとシャドーにはそれぞれ役割がありますけど、シャドーのほうがより得点という結果を求められると思うので、ゴールは常に狙っています。

――先ほど「自信がある」という言葉が出てきました。岡山でボランチをやっていた強みはどんな部分で生かせると思いますか?
やはり守備面です。動きを予測して、相手からボールをかすめ取るプレーはうまくなったと思います。ただ、浦和の守備は前線からどんどん人に当たっていくスタイルなので、普通のチャレンジ&カバーとはちょっと違う。チャレンジしてチャレンジして、という守備スタイルはキャンプの時から求められていたんですが、意識の部分でのギャップは大きかったですね。ただ自分にとってはどちらのスタイルにも対応できることがベストなので、今は日々吸収しているところです。

矢島慎也

■“あの感覚”を失わないために

――話を伺っていると、どこか迷いのようなものを感じます。
それはあるかもしれません。でも、やるしかない。せっかく岡山で試合に出て成長していたのに、出場機会が減ったからといってコンディションを落としてしまうようではダメです。自分がやれることを続ける。試合に出られなくてもしっかりと練習をして、足りない部分を補って、今後につなげていかないといけないんです。チャンスはいつ訪れるか分からない。だから今は、やり続けるしかないんですよ。

――移籍を決断する上で、こういう状況もある程度覚悟していたかと思います。
そのとおりです。「ここに来て、後悔していないか?」とよく聞かれます。試合に出られないという点だけで言えば、後悔していないと言うのは嘘になる。でも仮に別のチームに移籍して、試合に出ていたとしても、きっとどこかで「浦和でやりたい」という気持ちが出てきたと思うんです。だからここに帰って来たことに意味はある。今は出場機会が限られているけど、僕のサッカー人生はまだまだ続いていきます。この時間も無駄にはできないと思っています。

――ウェスタン・シドニー戦では、まさに限られた時間で結果を残しました。(編集部注:2月21日のAFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第1節で85分から途中出場)
思っていたよりもボールに触れられたので、点を取りたかった。そういう意味で手応えは全然なかったですけど、5分間でアシストできたのは良かったですね(笑)。自分がうまくなるために何をすればいいのか。出場時間を増やすためにも、今はそれを考えるしかないです。

――そういうことを考える時間は、岡山時代よりも増えましたか?
いや、試合に出ている時のほうが考えている時間は多かったです。試合に出ていれば、選手の意識が高まるのは当たり前なんですよ。試合に出ると課題や修正点が分かる。でも、試合に出ていないとモチベーションを保つことさえ難しいことがあります。そういう時期に、いかに意識を高く持てるかが本当に大事だと思っています。そうでないと、いざチャンスが巡ってきた時に何もできない。岡山で試合をこなしながら、いろいろなことを考えていたあの感覚を失いたくないので、そこはすごく意識しています。

――「いつ出てもいいように準備をしておく」と言っても、そんなに簡単ではないと。
難しさを痛感しています。でも、他の選手はそういう態度を表に出さないんですよ。試合に出られなくて絶対に悔しいはずなのに、黙々と練習をやって、足りない部分を自主練習で補っている。そういう姿を見ていると、自分もやらないとダメだという気持ちになる。先輩たちがやっているのに、20代前半の僕ができないのはおかしいでしょう。僕のサッカー人生はまだまだ続いていくわけだから、1日も無駄にはできないんです。

――では、最後に新デザインの『マジスタ』の印象を聞かせてください。
色がかっこいいですよね。久しぶりに白がベースでシンプルだし、逆に目立つので気に入っています。僕はこのスパイクを履き続けているので、親しみがありますし、「この靴でないと!」という思いもある。軽くて、蹴りやすい。ボールコントロールもしやすいですね。

矢島慎也

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