柏では37番を背負う細貝 [写真]=鈴木潤
J2に降格した2009年以来、8年ぶりのリーグ3連敗。しかも前節のベガルタ仙台戦は、勝利してもおかしくない内容だったにもかかわらず、後半アディショナルタイムに集中を欠いた一瞬の隙を突かれて敗れるという、ダメージの残る敗戦だった。
だが、そのショックを引きずり、重苦しい雰囲気や悲壮感が漂うどころか、むしろチームにはモチベーションが漲り、活気に満ち溢れている印象さえ受ける。もちろん選手が次の試合へ向けて気持ちを切り替えたということもあるだろう。しかし理由はそれだけではない。チームの雰囲気を一変させるビッグニュースが3月24日に飛び込んできたのだ。
細貝萌の移籍加入である。
「チームがリーグ3連敗しているので、自分の移籍がきっかけとなって上に上がっていくことができればいいと思う。チームの結果が出ていないから自分に与えられる役割は大きいと感じてレイソルを選んだ。だからチームも僕を必要としてくれたんだと思う」
細貝は、柏への移籍を決断した要因の一つをそう語っている。
細貝の移籍加入会見後に行われた広川邦生強化部長への囲み取材によれば、細貝の運動量、球際の強さ、海外や日本代表での経験を高く評価し、チームの守備力強化を見据えて3月に入ってから獲得に動いたという。
今季の柏は、昨季リーグワースト8位だった44失点を減らすために、キャンプから入念に守備戦術の向上に取り組んできた。だが開幕4試合全てで先制を許し、喫した失点は7と、その成果が出ているとは言い難い。柏が浮上するために、守備の立て直しは急務。細貝は、その大きな役割を担い、そして細貝自身も自分に与えられた責務を意気に感じ、柏を新天地に選んだ。
ましてや柏はスタメンの平均年齢が22~24歳という非常に若いチームだ。そこに豊富な経験を持つ細貝が加わることは多大な影響力をもたらす。いや、おそらく若い選手ばかりではない。
「質の高い選手が入るというのはチームにとってはプラスのこと。みんなで競争しながら高めあっていければいい。みんながハジ(細貝)の加入を歓迎している」
その言葉を述べるキャプテンの大谷秀和をはじめ、“ベテラン”と呼ばれる年長者たちも大きな刺激を受けているに違いない。
ドイツからの移籍証明書など、登録の問題をクリアしなければならないが、細貝自身は「次の広島戦に出場するつもりでいます」と7年ぶりのJリーグのピッチへ向けて強い意気込みを見せ、準備を進めている。
まだ試合に出場すらしていないのだから、「救世主」と呼ぶには時期尚早である。それでも“細貝効果”はすでに表れ始めている。これからの巻き返しに向け、柏に楽しみな戦力が加わった。
文=鈴木潤
By 鈴木潤