浦和戦に先発した金森(右)。なかなかゴールに迫ることができなかった [写真]=Getty Images
「何もできなかった」。そう語る表情に悔しさがにじむ。浦和レッズとの対戦を終えた金森健志(アビスパ福岡)は、焦りの色を隠せない様子だった。金森が埼玉スタジアムで放ったシュートは0本に終わり、62分にはピッチを後にした。スコアは0-1。「一人ひとりの技術が本当に高かったし、スピードが全然違うと感じた」と力の差を思い知らされる試合だった。
金森は今季、自身初となるJ1の舞台で戦っている。シーズンオフのキャンプでは「全試合で得点を取りたい」と意気込んでいたが、開幕してからの3試合でノーゴール。「フラストレーションがだいぶ溜まっている」と不満をあらわにする。
11日の浦和戦は、そんな現状を象徴するような試合だった。左シャドーの位置からDFの背後を狙うスプリントを繰り返しても、味方からのボールがなかなか出てこない。1トップのFWウェリントンが競ったセカンドボールを献身的に拾っても、浦和の守備に阻まれシュートまで持ち込むことができない。相手は昨季のファーストステージを無敗で駆け抜けたチーム。井原正巳監督が「力の差を痛感するゲームになった」と認めたように、福岡は得意の速攻を完璧に封じられた。
「もっとボールを呼び込まないといけない。自分に(ボールを)出して欲しいという思いもあった。自分が積極的に攻撃の組み立てで中心となって、そこでうまくウェリントンと連係ができれば、もっと攻撃のかたちが増える」(金森)
5年ぶりのJ1昇格を果たしたチームを残留させるためには、金森の活躍が欠かせない。持ち前の鋭いドリブルは、福岡の縦に速い攻撃を支えている。「レベルは非常に高い」と感じるJ1においても、「全然やれないという感じはしない。自分のドリブルが通用する場面もある」と自信を示す。その金森が今、最も欲しているのはゴールだ。「点を取って結果を残していかないといけない」。そう自分に言い聞かせるように話すのには理由がある。
今年1月に開催されたAFC U−23選手権(リオデジャネイロ・オリンピック アジア最終予選)で、金森はメンバーに入ることができなかった。これまで手倉森ジャパンにコンスタントに呼ばれていたが、直前の強化合宿で右大腿部を負傷。U−23日本代表が韓国を劇的な逆転劇で破ってアジア王者に輝き、リオ行きの切符を手にする光景をただ見守るしかなかった。だからこそ、金森にはリオ五輪のピッチに立ちたいという思いがある。
浦和戦の後、手倉森誠監督が視察に訪れていたことを伝えると、金森の表情が一瞬強ばった。「(A代表のヴァイッド)ハリルホジッチ監督が来ていることは知っていたけど……あんまりアピールできなかった」。リオ五輪のメンバーに入るためには、目に見える結果が必要だと分かっている。「ケガをしてすごく悔しい思いを味わった」からこそ、本大会出場に懸ける思いも人一倍強い。リオ行きは「今年の目標の一つ」と力を込めた。
そしてチャンスは巡ってきた。3月21日から始まるポルトガル遠征のメンバーに、金森も名を連ねた。25日にU−23メキシコ代表と国際親善試合を、28日にスポルティング・リスボンと練習試合を行う。今回、招集人数が通常より1名少ない22名なのは、五輪登録メンバーが18人となる本大会を見据えてのこと。試合も中2日に設定し、「連戦をさせたい狙いもある」(手倉森監督)と限られた戦力で連戦を乗り切るシミュレーションをする構えだ。この遠征に呼ばれたFWは3人。最終予選でしっかりと結果を残した久保裕也(ヤング・ボーイズ/スイス)と浅野拓磨(サンフレッチェ広島)がいる中で、金森は改めて自分の存在価値をアピールする必要がある。
福岡は19日にジュビロ磐田と対戦する。昨年、J2での対戦成績は3戦全勝。相性のいい相手だけに、ここでJ1初ゴールを奪えれば遠征にも弾みがつく。「もっともっとやんなきゃいけない」。初挑戦のJ1でも通用すると見せつけることが、リオへの近道となる。
文=高尾太恵子
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By 高尾太恵子
サッカーキング編集部


