市立長野との二回戦では先制点を決めた東山MF阪田澪哉 [写真]=小林渓太
石川県で夏に開催された和倉ユース。東山の2年生MF阪田澪哉は「突破とスピードは僕の武器。どんどん仕掛けられるような選手になりたい」と語っていた。
特長は瞬間的なスピードと長距離のスプリント、長短において自在に操るスピードにある。スピード溢れる選手は全国にいるが、阪田の場合はスピードを生かすためのファーストタッチのうまさや、体のねじれを使った方向転換が非常に優れている。ボールが来る前に自分が仕掛けたい方向、やりたいプレーをイメージし、しっかりと実行に移せる位置に止めてからスピードに乗る。時にはわざとファーストタッチで相手を食いつかせてから、鋭いターンで逆を突いて相手のプレスをかわしていく。
この能力に今年、大きな武器が加わった。それは守備力だ。インターハイ2回戦で前橋育英と対戦をしたとき、マッチアップをしたV・ファーレン長崎内定のMF笠柳翼に対し、最終ラインに戻ってドリブルコースを消したり、積極果敢なプレスバックを仕掛けて自由を奪った。他にも相手ボランチに積極的なプレスを仕掛けるなど、守備面で目を見張る活躍を見せた。もちろん守備だけでなく奪ってから前に出る姿勢をうかがわせるなど、単純な攻撃的なドリブラーではないことはこの時に改めて認識できた。
前橋育英戦は阪田の献身的な守備もあって1-0の勝利。チームはそのままベスト8まで駆け上がったが、彼の口からは反省の弁しか出てこなかった。
「もっと守備面で予測をしないといざ攻める時に、ボールを奪ってからの判断が遅くなってしまう。あくまでも僕の武器は前へのスピードなので、奪ってからそれが出せるように工夫をしていかないといけないと思っています」
求めているものはより高いところにある。第100回の選手権に向けて課題に真摯に向き合ってきた過程は今大会の姿を見て理解できた。初戦の市立長野戦で右サイドから見事な跨ぎフェイントから右アウトサイドに持ち出して右足一閃。ゴール左隅に突き刺して、先制弾をもたらした。
そしてインターハイの再戦となった準々決勝の青森山田戦。チームは変則的な『5-3-2』システムを採用した中で、『3』の右に入った阪田は両サイドに流れてボールを引き出したり、最終ラインに近い位置でボールを受けては、鋭いターンで前を向いてドリブルで運んでいくだけではなく、2トップや相手の両ワイドに対しても積極果敢にプレスを仕掛けに行く。
インターハイで課題としていた、奪ってからの前への推進力も随所に見せた。22分にはカウンターからFW李隆志の浮き球のパスを受けると、鮮やかなトラップでドリブルを仕掛けシュートまで持っていった。32分にも素早い守備から攻撃の切り替えを見せ、右サイドでドリブルを開始。相手の重心の逆のコースを取る切れ味鋭いドリブルで1人かわして中へカットインをすると、左足に持ち替えてクロス。中央が反応しきれずゴールには至らなかったが、明らかに青森山田の守備を動揺させていた。1-1で迎えた後半も阪田のキレは落ちなかった。
50分にカウンターから右サイドを高速突破し、中央の李へマイナスの折り返し。59分にもマイボールにしてからのポゼッションで、ゆっくりとボールを回すと見せかけて、一気に加速をして前に持ち出すと、食いついてきたDF2人の間を通すスルーパスをMF真田蓮司に渡して、チャンスを作り出した。
逆転された後も攻守のつなぎ役として献身的かつ積極的なプレーを見せた阪田は、後半アディショナルタイムにも味方の短いクリアのセカンドボールを拾うと、40メートルドリブルを見せて最後までチームにベクトルを前に向け続けさせたが、あと1点が届かなかった。
夏に続いてのベスト8敗退となったが、阪田は成長の跡をはっきりと見せた。まだ2年生。来年はよりたくましくなってこの大舞台に立つべく、次なる目標に目を向けているはずだ。
取材・文=安藤隆人