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アスリートを取り巻く課題解決に挑む、株式会社JAMSが描く未来

2023.07.28

[写真]=兼子愼一郎

 長く国内のスポーツ界で課題とされている「アスリートのキャリア」。引退後のセカンドキャリアをどうするかだけでなく、現役中から準備をする必要性など、様々な取り組みが進められている。キャリア形成の課題に取り組むアスリート専門の人材サービス企業、株式会社JAMSの代表取締役である君塚健太氏に、現状や今後について話を聞いた。

インタビュー=須賀大輔

―――『株式会社JAMS』を立ち上げた経緯を教えてください。

君塚 前職時代も同様の転職支援をしていましたが、その時からアスリートのキャリアを支えたいと考えていました。その中で、別の会社を経営していた大学の同級生である秋元寛とともに「アスリートのキャリア支援を一緒にやろう」という話になり、今から2年前に株式会社JAMSを立ち上げました。

―――競技経験はお持ちだったんでしょうか?

君塚 高校までサッカーをやっていて、秋元とは大学のサッカーサークルで一緒になりました。会社名はそのチーム名なんです(笑)。

―――前職時代にもアスリートの方々から相談を受けていたんですか?

君塚 直接の相談はありませんでしたが、アスリートのセカンドキャリア問題は、私たちが現役の頃からあったので、気になってはいました。私自身、就職活動をするときに一般の転職支援の会社を受けましたが、調べる中でアスリートのキャリア問題は出てきていたので、いずれやりたい気持ちは持っていました。

[写真]=兼子愼一郎

―――一般の方の転職とアスリートの転職は異なりますか?

君塚 まったく別物です。転職に対する思いで言うと、一般の方は今までのキャリアと今後のキャリアを見据えて、人生をかけて転職活動をしますが、アスリートの方は『いま、スポーツだけでは食べていけないので、お金が必要だから就職したい』という方が多いです。ただ、アスリートの方がそういう思いで就職して失敗しているケースも多い。だから僕は、『日銭を稼ぐだけの仕事ではなく、将来のキャリアにつながる仕事を探していきましょう』と話をするようにしています。

―――『株式会社JAMS』と他社さんとの違いや特徴、強みはなんですか?

君塚 少数ゆえにあえてアナログでやっています。私のモットーとしましては『出会ったからにはその人の人生における、何かのきっかけになりたい』という思いがあります。なので、かなり密にコミュニケーションを取ります。他社さんのケースでは、いまある情報やデータベースから親和性の高い会社や仕事をピックアップしてご紹介する形が多いと思いますが、私たちはご本人とお話をして、その方に合う企業を一緒に探していくところからスタートします。そこは多少違うと思いますし、強みでもあると思っています。

―――すごく丁寧で親切なやり方ですね。

君塚 秋元が別の会社を経営していることもあり、企業の経営者とのネットワークを持っています。私も前職時代からのネットワークがあるので、その人脈やつながりを生かし、直接相談するなどして、場合によってはポジションを作ってもらうこともあります。

―――アスリートの方からはどんな相談、悩みが多いですか?

君塚 正直言うと、「今すぐの収入を何とか確保したい」です。その際にお伝えさせてもらうのは、「その後のセカンドキャリアを考えた準備を今のうちからしていきましょう」ということです。すると、「自分がどういうキャリアを築いていけばわからない」、「今までサッカーしかしてこなかったので、自分に何ができるかわからない」といった悩みを打ち明ける方が多いですね。

―――今すぐにお金を稼ぎたいのなら、アルバイトでも…と思ってしまいますが、就職するメリットとはなんでしょう。

君塚 それが、セカンドキャリアに結び付きます。20代でアルバイト経験のみという方と、1~2年でも営業をやっていた方では、その先のキャリアがかなり違ってきます。それを知らず、アスリートの方の中には時間の融通を利かせるためにアルバイトをしていることも多いですが、そうするとセカンドキャリアの道が難しくなるので、今のうちから1~2年でも営業をやってみましょうと会社を紹介しています。

―――相談者は、どんな競技、どんな境遇の方が多いですか?

君塚 現時点ではサッカーをやっている方がほとんどです。カテゴリーとしては、関東1部や2部など地域リーグにあたります。中には各クラブのスポンサーさんの会社で働いている選手も多いですが、その場合、希望したキャリアで働くことができているとは限りません。今、必要なお金を稼ぐために働いているということだと思います。そう考えると、必ずしもスポンサーさんの会社で働くことだけが選択肢ではありません。相談に来たアスリートの方には、例えば不動産に興味があれば管理業務をやるなど、それぞれに合った職種を紹介しています。

―――実際、相談に来た方とは、まず何からやっていくのでしょうか?

君塚 ご本人が今後の人生をどう考えているのか、そこから話していきます。例えば「あと何年くらい現役生活を考えているのか」。「あと何年で次のキャリアに移ろうと考えているのか」といったことです。そこから逆算して、「今はこれをしましょう」と進めていくイメージです。ただ現実は、「今は現役だから」と自分のキャリアプランがわからない、決まっていないという方が多いです。あくまでも一般論ですが、サッカーであれば平均25~26歳で引退すると考えると、その後のキャリアが人生において圧倒的に長い訳ですから、早くから準備しておけば、良い道に行けるし、そうでないと道を狭めてしまうこともある、とじっくり話をしていきますね。

―――これまで、どんな業界に就職した方が多いですか?

君塚 不動産や広告、シェアハウス運営の会社などです。楽しいと言っている方もいれば、思っていたよりも大変と言っている方もいますが、多くの人が「練習よりは辛くない」と言っています(笑)。一方、紹介させていただいた企業の社長さんからは「爽やか」、「人当たりがいい」という声をいただいています。

―――会社を立ち上げたばかりだからこそ感じている課題や問題点はありますか?

君塚 正直、まだ小さい会社なので、業界に対するインパクトはかなり小さいです。ただ、ゆくゆくは「セカンドキャリアを解決する」という課題解決の一助となりたい思いがあります。僕らがやっていることは、まだまだ現場の部分です。ただ、大きく言わせてもらえるならば、サッカー界ならJリーグの在り方や構造の部分から変えていかないといけないと思っています。スポーツ団体やチームがもう少し本気でセカンドキャリアに取り組んでもらえるようにならないと大きくは変わらないと思っているので、将来的にはそういうところに提言していきたいですね。

[写真]=兼子愼一郎

―――近年、“デュアルキャリア”という言葉を聞く機会も増えました。競技と仕事の割合は5:5が理想なのでしょうか?

君塚 それは選手次第です。基本的にやっているスポーツ競技が第一だよ、と選手にも伝えています。キャリアに関しては、引退した後に徐々に割合を振っていけばいいと思っているので、そのために今から準備しましょう、というイメージです。

―――良い意味で、競技のリタイアを早める人もいますか?

君塚 それも一つの考え方、判断だと思います。いずれは全員が引退する訳で、その時期が早くなるだけなので。本人しかわからない心の葛藤もあると思います。大事なことは“自分で決める”ことです。選択肢がある中でジャッジをして、就職した先で頑張っていくことも、一つの生き方だと思います。

―――海外に比べると、日本はアスリートのセカンドキャリアも遅れていると感じますか?

君塚 スポーツをビジネスと捉える意識は海外の方が大きいと思っています。日本のスポーツがまだまだなのは、ビジネスとしての可能性が小さいからです。もっともっと大きくなっていいですし、大きくなっていかないといけない。そうなれば、どこかの競技団体が盛り上がり、そのリーグが盛り上がり、チームやクラブに良い影響が出て、選手たちにも恩恵が降ってくる。良い循環を作れるようにしていきたいですね。

―――今後のビジョンはありますか?

君塚 大きいモノで言えば、スポーツ業界に何かで貢献したいです。私も秋元もサッカーを経験し、スポーツに支えられてきたので、スポーツ業界に恩返しをしたい。今はアスリートのセカンドキャリアに着目していますが、ゆくゆくはスポーツ業界を支援する、スポーツ業界が発展していく仕事をしていきたいです。

―――どこかのクラブのスポンサーになる考えはありますか?

君塚 あまり格好つけたくはないですが、どこかのチームを支援することよりも、私自身がキャリア支援をずっとやってきたので、もっと広義で貢献していきたい思いが強いです。

―――アスリートのキャリア問題を変えていくには時間がかかりますか?

君塚 そう思います。ただ、諦めずにやっていきたいですし、目の前で日々苦しんでいるアスリートはいるので、支援を続けていきます。

 いまの状況で果たして小さい子どもたちがプロスポーツ選手を目指したいと思うかどうか。例えば、今のままでは日本のサッカー業界は発展していかないと思っています。子どもたちには“Jリーガー”を目指してほしい。サッカー界にポテンシャルはありますし、僕らみたいな会社がもっと頑張らないといけない。いろいろな競技の業界や団体の考え方を少しずつ変えていかないといけないと感じています。

―――相談に来るアスリートの方や採用を考えている企業の方にメッセージをお願いします。

君塚 キャリア問題は、自分で考え過ぎても行き詰まるだけで、不安になってしまうモノです。見えない将来を考えるのは難しいです。ただ、誰かに相談すれば光は見えてくると思いますし、どんなことでも構いませんので、一度、ご連絡を頂ければ少なからずプラスの情報をお伝えできると思います。若くてポテンシャルのある人材は多数いますので、ぜひ、お声掛け頂ければすぐに対応させていただきます。

秋元 私自身の会社では、これまでに現役選手を10人以上採用していますが、企業側の理解がないと難しい部分はあると思います。朝に練習があるから出勤できないなど、普通の社員とは違う雇い方をしないといけません。ただ、彼らには彼らの武器があります。今までずっとスポーツをやってきた体力面や精神面は武器ですし、企業側も現役生活を邪魔せず、仕事でもパフォーマンスを発揮できるような雇い方ができれば、会社としてのイメージも、業績もよくなると思います。実際に私の会社がそうです。その意味では、企業側へのコンサルティングの仕事もやっていきたいと思っています。

[写真]=兼子愼一郎

―――実際、アスリートを雇ったメリットはどんなところにありますか?

秋元 団体行動をしてきた人間が多いので、会社の雰囲気が明るくなったり、快活なコミュニケーションが取れたりするので、お客さんに喜んでもらえることが多いです。例えば、お客さんがご年配の方だとお孫さんと接するように喜んでくださいます。受け入れる側の企業さんの理解も向上させていきたいですね。

君塚 アスリートの方からは「これしかできない」、「これしかやってきていない」といった理由で、不安を覚える言葉を耳にしますが、一つのことをこれだけ長くできることは素晴らしいスキルです。「これしかやっていないから他は何もできない」と思うのではなく、一つのことを長く継続してできることは、それだけ情熱を傾けられるということです。今までやってきたものを仕事で越えることは難しいかもしれないですけど、それに準ずるくらいのキャリアを見つけることさえできれば、継続する力はとても魅力的ですし、強みになるので自信を持ってくださいと伝えたいです。

株式会社JAMS https://jams-ws.jp

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