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[昌平]きっかけは3年前のインターハイ…進化続ける埼玉屈指の技巧派集団【高校サッカー選手権】

2020.01.01

埼玉県代表の昌平にはU-17代表歴を持つ須藤直輝(2年)など個性的なアタッカーがそろう [写真]=松尾祐希

 本格強化から12年目。着実にステップアップを続ける埼玉屈指の技巧派集団が2年連続で全国舞台に挑む。

 チームを率いるのは藤島崇之監督。自身も習志野で玉田圭司(V・ファーレン長崎)や吉野智行(元浦和レッズほか)らと1998年度の選手権に出場し、優秀選手に選ばれた実績を持つ。順天堂大卒業後に指導者となり、青森山田の中等部監督などを経て、2007年に昌平の監督に就任した。最初は結果に恵まれなかったものの、基本技術を重んじる指導で選手を育て、2014年に選手権に初出場。2016年には松本泰志(サンフレッチェ広島)や針谷岳晃(ジュビロ磐田)らを擁し、インターハイ初出場でベスト4の快進撃を見せた。昨年も同大会で4強入りを果たすなど、埼玉県内ではなく、全国でも名の知れた存在になりつつある。

昌平を率いる藤島崇之監督 [写真]=松尾祐希

 実際に昌平にやってくる選手の質も変化し、最初は県内の街クラブが主だったが、今ではJリーグの下部組織や県外のクラブからも入学するようになった。となれば、チームのスタイルにも変化はある。基本技術やボールを大事にするスタンスを持ちつつ、個の力にも力を入れるようになった。きっかけは入部者の質が高まったからでもあるが、もう1つ理由がある。それは2016年のインターハイ準決勝だ。

 この試合で昌平は市立船橋に0-1で敗れた。2回戦で優勝候補の東福岡を下すなど、初出場ながらベスト4。この結果は多方面から賞賛されたが、指揮官だけは異なる感情を持っていたという。

「当時はグループに特化しながら、ボールを動かすサッカーをやっていた。でも、2016年のチームは杉岡大暉君(湘南ベルマーレ)、原輝綺君(サガン鳥栖)が所属する市立船橋に対して、グループで相手の個を崩せなかった。グループをグループで守られたのではなく、グループを個で守られたんです」

 インターハイ後、藤島監督はサッカーの考え方を微調整。グループで戦いながらも、個で戦える選手の育成を目指した。対人プレーの練習ではより個で局面を打開できるように指導し、チームの色も少しつずつ変わってきた。そこから3年。新たなスタイルに入学当初から取り組んできた選手が最上級生を迎え、真価が問われる1年がスタートした。春先はグループと個で県内のライバルたちを圧倒。Jクラブも関心を示した主将の大和海里(3年)、U-17代表歴を持つ須藤直輝(2年)など個性的なアタッカーが結果を残し、1月の県新人戦はライバルを退けて優勝。他校の監督からも「今年の昌平は止められない」という評価を得た。しかし、4月の関東大会予選、6月のインターハイ予選はともに2回戦で敗退。押し込むまでは良かったが、「(高い位置から仕掛ければ)オープンな展開になりやすい。そういう意味で守備のリスクがある」という指揮官の言葉通り、カウンター主体の相手に涙を呑んだ。

 そこから守備の改善に着手し、攻撃を仕掛けるための守備を徹底。奪われたら、高い位置で取り返す。球際では相手に負けない。「日々の練習でも身に付きました」と須藤が言うように、夏以降はこぼれ球や五分五分のボールを拾う意識が向上。チームのウイークポイントを補いながら、チームはさらなるバージョンアップに取り組んだ。

[写真]=松尾祐希

 迎えた選手権予選。浦和南の2回戦こそ苦戦したが、それ以外は磐石の戦いで勝ち上がる。決勝では西武台に4-0で快勝。7試合で21得点・1失点という圧倒的な強さで2年連続の出場を決めた。

 3年前から大きく変わった昌平。初戦は西の技巧派集団・興國と対戦するが、この3年で培ってきた力を発揮できれば、恐れるに足らない。自分たちの力で新たな歴史を作る。

取材・文=松尾祐希

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