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“フランス版・銀河系軍団”パリSGがバルセロナに学ぶべき「継続力」

2013.01.13

イブラなどスター選手を獲得したパリSG

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2011年夏にカタール王族に買収されたパリ・サンジェルマンは、 有能な人材を次々に補強し、隆盛を極めた1990年代の面影を取り戻しつつある。 一方で、その急激な変化に伴い、クラブ内には様々な問題がはびこっている。 彼らが真のビッグクラブとして成功をつかむために必要な条件とは 。

 

文=ピエール・ダルトワ Text by Pierre DARTOIS

写真=アフロ Photo by AFLO

 

スポンサーの撤退で没落した人気クラブ

 

 1970年に創設されたパリ・サンジェルマンは、フランス国内で最大の人気を誇るマルセイユとともに、フランスサッカーのシンボルとして高い注目を集めてきた。第1次黄金期と呼ばれるのは、リーグ・アンの放映権を持つ衛星放送会社『カナル・プリュス』がパリSGの経営権を握った、90年代初頭から2000年代中期のおよそ15年間を指す。

 

 第1次黄金期のパリSGにはダヴィド・ジノラやユーリ・ジョルカエフを始め、ライー、レオナルド、ロナウジーニョ、ジョージ・ウェア、マルコ・シモーネ、ペドロ・パウレタといったスター選手が在籍。93ー94シーズンにはクラブ史上2度目のリーグ優勝、そして96年にはラピド・ウィーンを下してカップウィナーズ・カップ優勝を経験した。

 

 しかし、『カナル・プリュス』撤退後は深刻な財政難に陥り、ビッグネームを獲得できないだけでなく、リーグ・アンでも下位に低迷。そんな状況に救いの手を差し伸べたのが、カタールマネーだった。

 

オイルマネーの流入で超大型補強に成功

 

 2011年夏、パリSGの株式を100パーセント保有して経営権を握ったのは、『カタール・インベストメント・オーソリティー』(QIA)だ。会長に就任したナセル・アル・ケライフィは、クラブOBのレオナルドをSDに据え、積極的な補強に乗り出した。レオナルドは潤沢な資金とイタリア時代に築いたコネクションをフル活用し、ローマからジェレミ・メネズ、パレルモからハビエル・パストーレを確保。シーズン途中にはチームが首位を維持していたにもかかわらず、監督のアントワーヌ・コンブアレを解任し、これまでミランやチェルシーの指揮官として数々の実績を残してきたカルロ・アンチェロッティをチームに招いた。

 

 結局、QIAのリーグ・アン挑戦1年目は伏兵モンペリエにリーグタイトルを奪われてしまったものの、8シーズンぶりに2位でフィニッシュ。フランス国内にとどまらず、ヨーロッパ全土に十分すぎるほどのインパクトを残した。

 

 レオナルドは2年目の今シーズンに勝負を掛けた。ミランからズラタン・イブラヒモヴィッチとチアーゴ・シウヴァという攻守の要となるビッグネームの獲得に成功。更には、ナポリ躍進の立役者となったエセキエル・ラベッシや、アンドレア・ピルロの後継者と呼ばれる若き司令塔マルコ・ヴェラッティも手に入れた。イタリアで磨かれた選手を主体に構成された《フランス版・銀河系軍団》は、経済危機に苦しむヨーロッパの中では、その地位を不動のものとしつつあり、再びワールドクラスの選手を抱えるチームとなった。

 

 今年1月には、昨夏の時点でサンパウロと交渉成立に至っていたルーカス・モウラがチームに合流。更に、移籍マーケットではローマのダニエレ・デ・ロッシ、インテルのウェスレイ・スネイデル、チェルシーのアシュリー・コールの獲得にも乗り出している。

 

 また、来シーズンに向けた移籍報道も過熱。「パリSGは、レアル・マドリーのジョゼ・モウリーニョ監督とクリスチアーノ・ロナウドをセットで引き抜くのではないか」とのニュースが連日メディアをにぎわせている。つい数年前までマーケットとは疎遠の関係にあったパリSGは今や、マンチェスター・シティー、チェルシー、R・マドリーと並んで《マーケットの主役》に躍り出た。いずれにせよ、伝統的にチームよりもスター選手に愛情を注ぐ傾向が強いパリSGのファンにとっては、次から次へとビッグネームが加入する現状は願ってもない流れだろう。

 

パリSGに必要なのは現場を維持する継続性

 

 しかし、パリSGが本当の意味でビッグクラブへと変貌を遂げるには、何が必要なのだろうか?

 

 まずは、チームのまとめ役だ。開幕時はフランス人のクリストフ・ジャレが主将に任命されたが、11月下旬のディナモ・キエフ戦を境にブラジル人のT・シウヴァが腕章を継承した。監督はイタリア人、主力の大半はセリエA経験者、フランス語を話せないキャプテン。となると、チームの《イタリア化》は更に加速する。そして、出番が減少するフランス人選手はチームを去っていくーー。ただし、エースのイブラヒモヴィッチは積極的にコミュニケーションを図り、クラブに欠けてきた《勝者のメンタリティー》を植えつけようとしている。その意味では、チームのイタリア化が一概に悪いというわけではなさそうだ。

 

 アンチェロッティが認めているように、今のパリSGはまだ個人プレーが目立つ場面が多く、チームとしての成熟度は低い。しかし、裏を返せば、それだけ成長の度合いも大きいということ。効果的な補強を続け、チームのコンビネーションを高めていけば、近いうちにビッグイヤーを手にするだけのポテンシャルは十分にある。

 

 それを実現するために最も必要なことは、アル・ケライフィ会長の忍耐力かもしれない。モウリーニョも結構だが、まずはレオナルド&アンチェロッティという優秀なチームスタッフが継続して仕事ができる環境を整えることが成功の近道となるはずだ。「継続は力なり」。それは既に、バルセロナやマンチェスター・ユナイテッドが実証しているではないか。

 

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