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川島永嗣インタビュー「一つの作品でありたい」

2012.12.12

[サムライサッカーキング1月号掲載]
「なるべくしてなった」と振り返るGKとの出会い。「みんなが必死に打ってくるのを、逆に止めるのが楽しかった」そんな川島少年は、いまや日本を代表するGKになった。常に最後尾から鋭い形相で相手選手を威圧し、チームメートに安心をもたらす的確な指示を出す。懸命にゴールマウスを死守するその姿は、実に魅惑的だ。彼の奥深くにある、フィールドプレーヤーとはまるで違う特殊で特別なGK独特の考え方に迫る。

Interview and text by Yoshihiro IWAMOTO Photo by Ryu Voelkel

自分に才能があると一度も思ったことはない

──まず、GKをやることになったきっかけから聞かせてください。以前取材させてもらった時に、「小学生の時からもうGKだった」という話は聞いたんですが、それは「サッカーを始めた時から」ということでいいんですかね?

川島 そうです、もう最初からですね。サッカーを始めた時からGKでした。もちろん、最初の最初はポジションなんて決まっていなかったですけど、その頃から、フィールドプレーヤーとしてボールを蹴るより、GKをやっているほうが楽しかった。

──ただ、GKというポジションをやることは、他のポジションをやることとは全く違うわけで、いわば、別のスポーツをやると言っても過言ではないわけですよね? そういうことについても、全く考えなかったわけですか?

川島 全く考えなかったですね。というか、シュートを止めるということ自体が、みんなが決めようとして必死にシュートを打ってくるのを止めるのが、本当に楽しかったんです。

──それって一般的にはかなり変わった考え方ですよね。

川島 でしょうね(笑)。でも、「GKには変わり者が多い」ってよく言うじゃないですか。

──確かに、そう言う人は多いですね。以前に、ジャンルイージ・ブッフォン(ユヴェントス)にインタビューした時にも、「GKはみんな頭がいかれてるんだよ!」ってコメントしてました(笑)。

川島 ハハハ(笑)。ただ、今のチームメートからは、「エイジが世界で一番まともなGKだ」って言われてますけどね。

──それは間違いないです!(笑)

川島 やっぱり、GKって特別なポジションで、常に決定的なミスと隣り合わせのポジションだし、責任も人一倍負わなきゃならないし、そういうことも踏まえて考えると、まともでいるってことは、かなり難しいポジションなのかなとは思いますよ。常に自分の責任は自分一人で背負わなきゃいけませんしね。

──自分自身がGKに向いている、またはGKとしての才能があると初めて感じたのはいつ頃ですか?

川島 向いてるなんて思ったことないですよ、一度も。才能があると思ったこともないですし。

──日本代表の正GKになった今でも?

川島 そうですね。そういうことについて、考えたこと自体がないです。というか、考えてもしょうがないことじゃないですか。自分にもともと才能があったから、日本代表になれたり、海外でプレーできているのかといえば、そうではないと思うし、自分がもともと持っているものだけで常に勝負してきたわけでもない。才能についてあえて言うとすれば、他の人と比べて、自分は(才能が)足りてないんじゃないか、と思うことのほうが多かったと思います。

──今回、インタビューするにあたっていろいろと資料を調べている中で、真実かどうか確認したいエピソードがあったので、この機会に確認させてください。「川島永嗣は高校時代、サッカー部の練習後にグラウンドに残って、一人で大きな声を出しながらイメージトレーニングしていた」というエピソードなんですが。

川島 それはホントですね(笑)。練習が終わってみんながいなくなった後に、普通に一人で自陣のゴール前に立ちます。そして、キックオフから試合終了まで、一通りの流れを実際の試合を思い浮かべながらやってましたね。「もっとライン上げろ!」とか言いながら(笑)。

──なぜ、そういったトレーニングをやろうと思ったんですか?

川島 いや、頭の中だけでイメージトレーニングするんだったら、実際にピッチでやってみたほうが早いんじゃないか、みたいな感じでしたね。

──ちなみに、同じことをやってる人とこれまでに会ったことはあります?

川島 ないですね(笑)。もちろん、今はもうやってないですよ。でも、当時はいろいろなシーンを思い浮かべてやってましたね。

──今は対戦相手のプレーイメージを思い浮かべたりしているんですか?

川島 いや、むしろ、そういうイメージにとらわれないようにしていますね。もちろん、相手のイメージを入れておくのも大事ですけど、試合の中で起こることは当然それがすべてじゃないし、予想外のことに対応できることのほうが大事だとも思いますので。

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