インタビュー・文=ホセ・フェリックス・フェルナンデス
翻訳・構成=高山 港
カンプ・ノウで現役生活を全うしたいと思っているよ
まずは今シーズンの序盤を振り返ってもらおう。宿敵レアル・マドリーとのスーペル・コパは、2試合ともベンチスタートだった。
ファブレガス(以下F)──クラシコをベンチから観戦することほど悲しいものはないよ。ただ、そういう思いをしているのは僕だけじゃない。ベンチスタートはどの選手も経験していることだし、誰にとってもつらいことさ。ただ、不満は口にしたくない。ハードスケジュールの中で勝利をつかむには、多くの選手をローテーションさせながら戦わなければならないからね。
第3節のバレンシア戦では決定機を2度も外し、カンプ・ノウの観客席からブーイングが起こったそうだけど。
F──それはちょっと言い過ぎだと思うな。ファンとの関係が悪くなったことは一度もない。ゲーム中はもちろんのこと、街を歩いていてもファンの愛情を感じているよ。僕のコンディションが悪いと指摘する人もいるけど、自分の体のことは僕自身が一番よく分かっている。体調は悪くないよ。
確かに君は、リーガ・エスパニョーラでは第10節までの全試合で先発に名を連ねている。
F──僕はポジティブな考え方をする人間なんだ。僕の努力は間違いなく報われている。昨シーズンは、チーム事情からベンチスタートが多い時期もあったけど、今はとても充実した日々を過ごしているよ。
まさかとは思うけど、アーセナルの主将という立場やプレミアリーグという刺激的な戦場を捨ててバルサに戻った決断を後悔してはいないよね?
F──それはないな。16歳の時は、アーセナルに行くことが僕のサッカー人生における大きなチャンスだと思った。少なくともあの時点では、バルサのトップチームで出場機会を得ることが難しかったし、たとえトップに昇格しても、出番をもらえるまでには相当な時間を要するのは間違いなかった。だからあの時はアーセナル移籍という決断を下した。それはそれで間違ってはいなかったと思う。そして昨夏、僕はバルサに戻ってきた。世界最高クラスの選手たちとの熾し れつ烈なポジション争いに身を投じることを承知で移籍したんだから、後悔は全くしていない。バルサでなかなか定位置を確保できないのはあくまで想定済みのこと。今はカンプ・ノウで現役生活を全うしたいとさえ思っているよ。
外の世界を知って、改めてバルサへの愛着が強くなったようだね。
F──僕はバルサに戻るためにあらゆる手を尽くした。1シーズンだけプレーするために戻ってきたわけじゃない。ここで長期間、できることなら現役を退くまでプレーするつもりで戻ってきたんだ。バルサでやるべきこと、目標はたくさんある。確かに今の状況は予想とはちょっと違うものだけど、今は昨シーズンの屈辱を払拭したいと強く願っている。僕自身、国内リーグやチャンピオンズリーグ(以下CL)での優勝経験がないから、どうしても優勝の感激を味わってみたいんだ。
じゃあ、バルサからの移籍を希望しているというのは完全なガセネタだね?
F──僕がバルサを出たがっているって? そんなことありえないよ! 世界最高のクラブから移籍したがるわけがないじゃないか。
でも、ジョゼップ・グアルディオラ前監督のような重要人物が去った今のバルサは、君にとって最高に居心地がいい場所ではないんじゃない?
F──確かに、ペップ(グアルディオラの愛称)は僕がバルサに戻る決断を下すのに重要な役割を果たした人物だ。彼がいたからこそ、僕はすんなりバルサに戻れたと思っている。ただ、だからと言ってティト(ビラノバ監督)との関係がギクシャクしているわけじゃない。僕は下部組織時代、ティトの下で2年間プレーしているんだ。僕にとっては《育ての親》とも言える人物さ。良好な関係は当時も今も、これからも変わらないよ。
今後、監督の判断で君の出番が減る可能性もあるよね。
F──バルサの中盤は質、量ともに世界最高だからね。出番が減るのはやむを得ないと思っているよ。それに、ティトはアンドレス(イニエスタ)をサイドに固定するつもりがないみたいだ。となると、自動的にセンターポジションの競争がより激しくなる。バルサの中盤センターには世界最高の選手がひしめき合っている。ここで常時出場するのは至難の業だよ。