[ワールドサッカーキング 1018号掲載]
リーグ首位を快走するチェルシーの中で、エデン・アザールが際立ったプレーを見せ続けている。彼はディディエ・ドログバの抜けた攻撃陣を力強くけん引し、チームに新たな風を吹き込んだ。移籍直後からフルスロットルで猛進し始めたアザールに、絶好調の理由を聞いた。
インタビュー・文=ヘイターズ・チームワーク 翻訳=田島 大 写真=Akio Hayakawa/Photoraid.uk
昨シーズンのプレミアリーグで6位に甘んじたチェルシーが、開幕から快調に勝ち点を積み重ねている。開幕前にはディディエ・ドログバの退団を不安視する声もあったが、チームは元エースの不在を感じさせないパフォーマンスを披露。その攻撃陣の核となっているのが新戦力のエデン・アザールだ。
開幕からすべての試合に先発出場し、スピード溢れるドリブルと創造性に富んだパスで数多くのチャンスを創出。アザールは早くも新生チェルシーの新たな顔になりつつある。
2010―11シーズンにリールを57年ぶりのリーグ優勝に導き、昨シーズンは2年連続でリーグ・アンの年間MVPを受賞。驚異的な進化を続ける21歳の若武者は、イングランドの地でもその能力を存分に発揮している。 新天地で最高のスタートを切ったアザールが見据える先にあるのは、すべてのタイトル獲得だ。
僕はこの国のスタイルを気に入っている自分に合っていると思う
君がロンドンに来て既に2カ月が経過した。改めてプレミアリーグの第一印象を教えてほしい。
アザール 第一印象は「ワクワク」、いや、「超ワクワク」って感じだったかな。プレミアリーグがどれほど素晴らしいリーグかはここに来る前から知っていたつもりだったけど、実際にプレーしてみると想像以上だった。美しいスタジアム、きれいな芝、熱狂的な雰囲気、そして激しい試合……。リーグ・アンしか知らなかった僕にとっては、何もかもが新鮮だよ。
プレミアリーグとリーグ・アンの最も大きな違いは何だろう?
アザール 試合の雰囲気だよ。例えば、フランスのファンは15分ぐらい盛り上がったかと思うと、次の15分は静まり返ったりする。でも、イングランドのファンは90分間、常にマックスのテンションで応援してくれるんだ。ピッチ上のテンションも同様で、プレースピードはとにかく速い。しかも90分間、そのテンポが落ちることはないんだ。僕はこの国のスタイルを気に入っている。自分に合っていると思うよ。
ウィガンとのリーグ開幕戦でプレミアデビューを飾り、いきなり2つのゴールを演出して勝利に貢献した。あの時はどんな気分だった?
アザール もちろん、最高だったよ。最初の試合からゲームを楽しめたしね。でも、ホームデビューを飾ったレディング戦のほうが印象は強いかな。初めてのスタンフォード・ブリッジで、あの独特の雰囲気を存分に満喫できた。試合にもきっちり勝つことができたしね。
イングランドのファンも君のテクニックを満喫している。ドリブルは昔から得意だったの?
アザール 子供の頃から「ボールを持ったら仕掛けろ」と言われてきたから、ドリブルで相手を抜くのは得意と言うよりも“習慣”だね。うまくペナルティーエリア内までボールを持ち込めれば、DFはうかつに僕に触ることはできない。相手はハンドブレーキを降ろしたままプレーしないといけない。そういう時にこそ、思い切り仕掛けるようにしている。
イングランドのサッカーに触れて気づいた点は?
アザール イングランドのサッカーはとても層が厚いと思う。僕らはプレシーズンでブライトンと対戦したんだけど、彼らはチャンピオンシップ(2部)のクラブにもかかわらず、本当に手ごわい相手だった。試合中、ひと時も気を抜けないし、休む時間もない。ビッグクラブとの対戦ならなおさらだよ。
リーグのレベルについてはどう?
アザール 改めてレベルの高さを感じている。最近のプレミアリーグはよく「5強」とか「6強」と表現されるけど、どのチームと対戦しても簡単な試合なんてないんだ。特にアウェーゲームは本当に難しい。まだ数試合しかこなしていないけど、それをイヤというほど実感している。でも、常にファンの後押しがあるから気を抜くことなく試合に臨める。だからこそ、このリーグはエキサイティングに感じられるんだと思う。これこそ僕が望んでいたものさ。