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【インタビュー】内田篤人「僕は主人公じゃなくていい」

2012.10.12

サムライサッカーキング Nov.2012 掲載]
内田篤人インタビュー
Interview and text by Yusuke ASANO Photo by Itaru CHIBA

 取材場所はコートヤード・バイ・マリオット・ゲルゼンキルヘン。シャルケのホームスタジアム「フェルティンス・アレーナ」から徒歩3分圏にあるこのホテルのロビーに、内田篤人は予定時間の5分前に現れた。「今日は取材の時間をいただき、ありがとうございます」との挨拶には、「いえ、こちらこそ。この2日間は、ずっとソファーの上で過ごしていましたし(笑)」の返し。言葉のチョイス、そして間合いの取り方が実に上手い人だ。

 3年目を迎えたシャルケ、ドイツでの日々、日本代表への思い、日本人としての矜持、サイドバックとしての在り方、そして目指すべき人生のスタイル。飾らない“自分の言葉”で発信される『内田篤人の流儀』を、とくとご堪能あれ。

ドイツでの3年目、シャルケでの3年目

──まずは、シャルケでの今シーズンについて。昨シーズンはコンディション面の問題もあり、特に前半戦は出場時間が限られていました。3年目の今シーズン、意識的にオフのコンディション調整で気を遣ったことはありましたか?

内田篤人 オフはいつもっていうか、毎年トレーナーを一人つけて、高校の同級生と一緒に練習をやるんですけど、メニューは「大きく変わらず」でした。基本的には体幹トレーニングをやったり、走ったり。

──走りのメニューも多いんですか?

内田篤人 ボールを使って走ります。素走りはあまり得意じゃないし、その辺はトレーナーさんがうまくやってくれるので、言われたメニューを、とりあえず全力でやります。けっこう楽しいですよ。みんな銀行員とか学校の先生だったりするんで、全然動けなくて(笑)。同級生と一緒に練習するのは、すごく楽しいです。

──みんな最後までトレーニングについてこられるんですか?

内田篤人 一応(笑)。途中で足がつったり、足がもつれてコケたりしながら。でも、みんな静岡のやつらだしサッカー上手いから。本当に、すごく楽しいです。きつい練習は楽しくやらないともったいないから。

──ドイツでの生活も3年目ですが、ドイツ語の向上はいかがですか?

内田篤人 ミーティングとか、サッカーの場面では、言っていることはだいたい分かります。でも、レストランとか、電車に乗るとか、そういった面ではちょっと分からないですね。まあ、別に仕事だけできればいいかなって。

──電車に乗ったりする機会もあるんですか?

内田篤人 いや、正確にはないです。何度か(電車の)チケットを買おうとしたことがあるんですけど、いつもあの自販機(券売機)みたいなところの前で挫折して、結局は乗らない。これまでに4、5回繰り返しました(笑)。

──困ることはないですか?

内田篤人 全然ないです。「Ich spreche keinDeutsch.」そう言っておけばいいかなって。

──意味は?

内田篤人 「ドイツ語しゃべれません」。それで何とかなりますよ。

──でも、ミーティングとか、監督の話などは理解できると。

内田篤人 サッカー用語というか、サッカーに関することはだいたい分かります。

──フーブ・ステーフェンス監督について「厳しいけどフェアな監督」という表現をされていましたが、監督としてどういう人物ですか?

内田篤人 選手を平等に見ますね。「調子が悪いな」って思ったら使わないです。ちょっと本来の調子じゃないなと思ったら、絶対に使わないですね。

──それは毎日の練習を見て判断するということですよね。

内田篤人 そうですね。「あいつ、いつもあそこの球際は行っているのに今日は行かなかったな」となったら、すぐに次の日からサブ組に入るし。でも、逆に言うと、そういう風に入れ替わりがある分、チャンスもいっぱいありますね。

──その都度、選手への説明はあるんですか?

内田篤人 ないです。あるのかもしれないけど、僕は聞きには行かないです。昨シーズンもケガをした時とか、自分の調子が悪いからっていうのは分かっていたので、ここで聞きに行くのもどうかなって。自分の100パーセントをやって試合に出ていないなら聞きに行くのもありかなって思いましたけど、100パーセントじゃないし。それで理由を聞きに行くのは、なしかなって。あとはもう、「上手けりゃ試合に出られるだろう」って思っていたから。良い選手ならね。そこはなんかこう、言葉で誤魔化したくないというか、言い訳っぽくなるし。「今、調子が良くないんだけど」みたいなことを言いに行くのはちょっと違うかなと。練習で、プレーで見てもらおうと思っています。

──3月に放送された『情熱大陸』は、出場機会が得られない時期にフォーカスしていましたよね。

内田篤人 はいはいはい。あそこが一番ね、上がる前。本当にいい時に来ました(笑)。実は、『情熱大陸』の収録は他のチャンス、タイミングもあったんですよ。チャンピオンズリーグのベスト8、ベスト4ぐらいの時。最初は「いいじゃないですか、面白い」と思ったんですけど、一生に一度あるかないかぐらいじゃないですか、CLの準決勝を戦えるなんて。だから、ちょっとそこで密着はやめてほしいなと思って。その結果、タイミング的には試合に出られない時期と被ったんですけど、普通に出場できている時をテレビで映すより、出られない時期を映すほうが面白いと思って、「じゃあ来てよ」みたいな。実際、そういう世界ですからね、サッカー選手って。華はあるかもしれないけど。個人的には、出られない時のほうが面白い、それを見てもらうのもまた一つかなと思いました。

──放送の最後で「今は冬の時期」と言っていましたが、今を季節で表現するといかがですか?

内田篤人 まあ、一応試合には出られているんで、春先。春先のジャケットが……。

──似合うくらい。

内田篤人 そう、春先のジャケットが似合うくらいの季節ですね(笑)。

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