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【静岡ダービー直前企画】山田大記(磐田)「相手が清水。そう思うだけで心にたぎるものがある」

2012.10.05

Jリーグサッカーキング11月号掲載】

 

レジェンドナンバー、10。若くして、サックスブルーのエースナンバーを受け継いだことがこの男のポテンシャルを証明している。地元・浜松出身。静岡県内でのライバル関係を誰より知る彼はこの一戦が単なる一試合でないことを、自らの経験から知っている。

 

インタビュー・文=南間健治

 

写真=兼子愼一郎

 

静岡県出身の者にとって、ダービーは特別な試合になる

 

浜松に生まれ育った山田選手にとって、静岡ダ―ビーとはどんな試合なのでしょうか。

 

山田 Jリーグが始まってから、とにかく県内で一番盛り上がる試合ですね。小さい頃から静岡県の西部地区でサッカーをしてきましたが、当時は清水FCが、ジュビロのジュニアユースでプレーしている時はエスパルスのアカデミーがライバルでした。高校は藤枝東高へ進学しましたが、その時も清水東高や清水商高など、清水のチームをずっとライバルとして意識していました。そういう経験をしてきたこともあるので、エスパルスは個人的にはすごく負けたくない相手です。静岡県はサッカーが盛んだと言われていますが、それを象徴しているのが”静岡ダービー”ですし、静岡県で生まれ育った者にとって特別な試合だと思います。

 

山田選手が5歳の時にJリーグが開幕しました。物心ついた頃からダービーは身近なものだったのでしょうか。

 

山田 ダービーが近くなると、試合前からテレビなどですごく報道されていましたからね。小さな頃からJリーグを見ることが多かったですし、ダービーの注目度がすごく高いことは当時から感じていました。そういう記憶は残っています。

 

県西部出身者は土地柄から、清水のチームへのライバル意識が強いものですか?

 

山田 同じ県にJクラブが2チームありますし、どちらが上なのかを考えると、お互いにとって常に負けたくないライバルチームだと思います。小学校の頃は清水FCか浜松JFCのどちらかが全国に出る機会が多かったこともあって、浜松のチームと清水のチームは昔からすごくライバル関係にありました。清水とは比較されやすかったですし、ジュニア年代からプロに至るまで、そういった雰囲気があったと思います。もちろん県外のチームにも負けたくないですが、それ以前に清水のチームに負けたくないという思いは幼い頃からずっとありました。

 

山田選手は県西部から藤枝東高へ進学しています。それも”サッカー留学”と考えられるのでしょうか。

 

山田 どうでしょうね。ただ、こちらから藤枝へ行くことに関しては、僕らの時はそこまで特別な感じではなかったと思いますし、同じジュビロのジュニアユースからも僕以外にも2人行っています。当時のチームメートで清水商高や静岡学園高へ行った選手もいましたし、高校進学に関して県西部を出ることについて、あまり”サッカー留学”という意識はありませんでした。

 

藤枝も昔からサッカーが盛んです。

 

山田 そうですね。藤枝も”サッカーの街”と言われていて、清水をライバル視していました。年配の方には「清水出身の選手は藤枝に来ないように」と言う方もいるほどでした。さすがに今は少なくなったと思いますが、実際にはそういった意見が出るくらい、清水と藤枝もライバル関係にあると思いました。それは向こうへ行ってから知ったことです。

 

県西部でも藤枝でも、清水はライバルだったわけですね。やはり自分の中にも「清水に負けてはならない」というスピリットは刷り込まれているのでしょうか。

 

山田 その気持ちはかなり強くあります。

 

 

“静岡ダービー”は、単なる1ゲームではないんです

 

プロ入り後のダービーについて、会場の雰囲気や会場入りするまでの道のりなど印象に残っていることはありますか?

 

山田 スタジアムにはそれぞれの”カラー”がありますよね。他のチームが日本平に来た時の雰囲気は分かりませんが、例えばバスでスタジアムへ入る時のブーイングはすごいですよね。あそこまで大きなブーイングを受けると、やはり相手サポーターもジュビロが一番負けたくない相手なんだろうなとは感じます。他のスタジアムではあんなにブーイングされることはほとんどないですし、ちょっと異色な感じがします。

 

チーム内の雰囲気もダービーだと違ってくるものですか?

 

山田 クラブに長く在籍しているほど、「絶対に負けたくない」という思いがあると思います。僕自身もずっとこちらで育っているので、個人的な思い入れは強いです。他の選手がどの程度ダービーを特別視しているかは分かりませんが、加入前に特別意識していなかった選手も、ダービーを経験して注目度の高さや他の試合とは違う特別な意味を持っていることをすごく感じているとは思いますよ。もちろんどの試合も大切だと思っていますし、チーム全体としてはそこまで大きな変化があるわけではありませんが、やはりダービーともなるとメディアや周囲の注目度が違います。(小林)裕紀は「ダービーってこんなに注目されたりして、ちょっと違うんだね」とも話していました。ダービーに関しては、チーム内よりチーム外から様々なプレッシャーを感じますし、サポーターの皆さんもちょっと雰囲気が違います。そういうところは感じますね。やはりダービーの前の週は練習場に来てくださる方もいつも以上に多いように思いますし、「ダービー、頑張ってください」と言われる機会は多いです。そういったところでも自分たち以外の人たちのダービーに懸ける思いを感じる場面が多いとは思います。

 

静岡ダービーでの自分のパフォーマンスを振り返るといかがですか?

 

山田 昨シーズンのエコパでやった試合はチームが勝って、自分としても決勝点をアシストできたので、プロに入って一番うれしかったと言っていいくらい印象に残っている試合です。ただ、アウスタではいいプレーができている印象があまりありません。昨年の対戦ではチームとしてもあまりシュートを打たせてもらえませんでしたし、今年4月の試合でもあまりいいプレーができませんでした。相手もすごくエネルギッシュにプレーしてくる印象がありますし、真正面からぶつかり合うことでお互い難しいゲームになっているのではないかと思います。

 

クラブ公式サイトのプロフィールでは、自身のベストゲームに先ほど挙げたエコパのダービーを挙げています。その理由を教えてください。

 

山田 何よりエスパルスに勝ったことがうれしかったからですね。ホームで負けるわけにはいかないという気持ちでプレーして、その中で勝てて、決勝点をアシストできたことがうれしかったんですが、理由を問われれば、自分のプレーが良かったことよりも、相手がエスパルスだったことが一番の理由です。そのあたりからも自分の中で清水に対して特別な思いがあるのかなと感じます。

 

それだけの気持ちで臨むダービー、勝った瞬間はどんな心境になるのでしょうか?

 

山田 ダービーに勝った後はホッとしますね。でも、勝ちたいと思う気持ちが強いからこそ、負けた時に一番悔しいのもエスパルスなんです。そういう部分からも個人的に入れ込んでいるんだなと感じますね。

 

プロ入り後、リーグ戦での静岡ダービーは1勝1分け1敗。様々な思いを味わっていると思います。

 

山田 ダービーではうれしさも悔しさも感じましたね。逆転負けを喫した今シーズンの対戦は悔しかったですし、自分の未熟さを感じたゲームでした。ただ、これまでの試合展開を振り返ると、相手のゲームながら引き分けたり、こっちのゲームだったけど負けてしまったり、いろいろ場面や内容を経験しました。今はチーム状態がいいですし、昨シーズンと比べてやるべきことが明確になっていて、どうすれば自分たちの展開に持ち込めるかという感覚はつかめています。だからこそ今回はより強い気持ちを持って10月のダービーを迎えられる。それがいろいろな結果を経験したからなのかは分かりませんが、今までのダービーに比べると10月の試合はすごく自信があります。そういった理由もあるので、もしかすると勝ってもそこまでホッとしないかもしれませんし、極端に言えば「勝って当たり前」というくらいの気持ちで挑めるのではないかと思っています。

 

ダービーの過去戦績を振り返ると、ジュビロが圧倒しています。ただ、ダービーにはチームの調子、順位に関係ないということも言えると思います。

 

山田 確かにチーム状況がダービーに与える影響はあまりないとは感じますが、4月の静岡ダービーで自分たちが負けてエスパルスが勢いに乗ったように、ダービーがその後にもたらす影響というのはすごく大きいですし、そういう意味でもこの対戦は単なる一試合ではないと思っています。仮にダービーの時点で自分たちのほうが上の順位だったとしても、相手はより強い気持ちで臨んでくるでしょうし、難しい試合になることは間違いない。何が起こるか分からないのがダービーです。その後に与える影響の大きさを考えても、何があっても負けられないですね。ここからシーズン終盤に入っていくところなので負けられない試合が続きますし、一試合一試合がシーズンの結果に結びつくので、終盤に向けて勢いをつける意味でも今回の試合はすごく大事になります。みんなもそういった重要性を感じながらプレーするはずです。

 

今シーズンはキャプテンマークを巻いてピッチに立っています。自分自身、何か変化はありましたか?

 

山田 全くなかったですね。ゲームキャプテンであることを意識しようとも、意識しないようにしようとも思っていなくて、何か特別に考えているわけではありません。どちらかといえば練習のほうがそのことを意識しますね。試合が始まれば全員が高いモチベーションでやるべきことをやれると思いますから。

 

激闘 静岡ダービー Jリーグサッカーキング2012年11月号

Jリーグサッカーキング最新号

 9月24日発売のJリーグサッカーキング11月号は、伝統の静岡ダービーを大特集! 10月6日(土)に開催される大一番を前に、ジュビロ磐田、清水エスパルスの両クラブの思いを徹底的にクローズアップしました! 巻頭二大インタビューでは両チームのエースが登場。山田大記(磐田)と大前元紀(清水)の両選手がそれぞれダービーやライバルに対する意識を語ってくれています。また、チームへの思いが人一倍強いユース出身選手の言葉もピックアップ。山本康裕選手、エスパルスの山本海人選手のインタビューでは、生え抜きの2人ならではの熱い思いが満載。両チームの全選手に取材を敢行したダービーへのコメント集も要チェックです。

 また、今回はクラブとともに叩き続けてきたサポーターの方々にもフィーチャーしました。アンケートを実施した両クラブのサポーターが選ぶ静岡ダービー名勝負ベスト5の結果、そして直撃取材で聞いたダービーに懸ける思いを掲載しています。その他、両チームをよく知る豪華な面々も登場。澤登正朗さんと名波浩さんのレジェンド特別対談や、両チームでプレー経験を持つ山西尊裕さんインタビュー、山本昌邦さんと長谷川健太さんの元指揮官対談では、ダービーの歴史や知られざるエピソードが満載です。ぜひ、ご一読ください。

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