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【インタビュー】家長昭博(G大阪)が語る『本当の本田圭佑』

2012.09.23

サムライサッカーキング Oct.2012 掲載]

同じ日に生まれた二人は、運命の糸を手繰り合うように小学6年生で出会い、
中学時代はチームメートとしてサッカーに明け暮れた。
「昔も今も、圭佑は圭佑のまま」
これまでなかなか語ることのなかった
“本当の本田圭佑”について、家長昭博が口を開いた。

家長昭博
Interview and text by Misa TAKAMURA Photo by Kenji YASUDA

 本田圭佑に初めて会ったのは小学6年生の冬。翌年からガンバ大阪ジュニアユースへの加入が決まっていた僕が、初めて同チームの練習に参加した時です。圭佑は僕よりも早く、何度か練習に来ていたせいか、すっかりチームになじんでいて、てっきり先輩だと思っていたら、同期だと聞いてびっくり。その時は特に話さなかったけど、黄色の派手なスパイクを履いていたことだけは覚えています。その後、ジュニアユースで一緒にプレーするようになってからは、とにかく個性的で存在感があったという印象です。僕らの同期には圭佑に限らず、かなり個性的な選手が集まっていたけど、中でも圭佑は群を抜いて目立っていた。ただ、これは僕が京都の田舎者だったから、そう見えたのかもしれない。圭佑も含めて、他の大阪出身の選手が話している内容や言葉遣いは、僕から見ると明らかに大人の域に達していましたから。

 ただ、圭佑とはなぜかすぐに仲良くなりましたね。誕生日が同じということは大阪トレセンの選考会で知ったとはいえ、お互い全く興味を示さなかったけど(笑)、練習の帰りは必ず一緒だったし、互いの家にもよく遊びに行った。その反面、ケンカもよくしましたね。例えば、チームでは僕が左サイドハーフで、彼が左サイドバックだったんですが、お互いに自分中心にプレーしたいがために相手にパスを出さずにケンカになったり。お互いに相手のプレーを認めていたはずだけど、絶対に、それを認めているとは言わない、いや、言いたくない関係でした(笑)。

 ピッチ外でもかなり低レベルのケンカをよくしましたね。互いに負けず嫌いで、何でも競争しなければ気が済まない性格からか、腕相撲に始まって、ゲームや遊びでも常にどっちが強いかを競い合ったし、また遠征に行けば「1日の中で、誰が一番牛乳を飲めるか」に始まり、「誰が一番白飯を食べられるか」まで、他の選手も一緒になって実にしょうもないことで争いました。そんな僕らを、周囲は「そんなん、どっちでもいいやん」的に見ていたけど、僕らにとってはそこは譲れない勝負でした(笑)。ちなみに勝率は……恐らくどっちも負けたという感覚はないはずですよ。実際、勝ち負けをつけ切れないことも結構ありましたしね。唯一、僕が負けを認めるのは腕相撲くらい。僕もたいがい腕力には自信があったのに、圭佑だけには勝てなかった。あの腕の強さはハンパないです。いや、腕だけではなく、ケンカも強かったし、気も強かった。だから明らかに彼のジャンルは“ガキ大将”に入りますが、圭佑の場合はみんなが触れられない、怖くて近づけないタイプではなく、周りからはイジられるし、自分もみんなをイジるしという親しみのあるガキ大将でした。ただ、僕らの同期のほとんどが、圭佑みたいなガキ大将タイプでしたからね。誰かが仕切ろうとしても、あまりに個性が強すぎて誰も周りを仕切れず、でも、それぞれが自分を一番だと思っていたと思います。

 だからユースに昇格するにあたって、圭佑と離ればなれになったのは……どうでも良かった(笑)。お互い、そんなことに感傷的になるタイプではないですから。それに、そもそも圭佑はユースでプレーする気はなかったんじゃないかな。ジュニアユース時代に、一度「ユースに上がりたいと思っている奴は手を挙げろ」的な話になった際も、僕と圭佑だけ手を挙げていなかったから(笑)。僕としては「まだ先のことは決めていない」という考えで手を挙げなかったのですが、素直じゃないというか、どこか尖っているような性格は似ていた気がします。

 ただ、これは今にも通じることだけど、彼は単なる思いつきで行動したり、何かを発言するタイプではないですね。例えば、服装にしても言動にしても、後からそのことについて尋ねると、必ず彼なりの理由がある。だからその時もきっと彼なりの考えがあったんだと思います。そもそも、圭佑の場合、子供の時から周りの意見に流されるタイプではないですし。ある意味、一匹狼というか……根はすごく優しいし、周りにも気を遣えるタイプなんですけどね。家族への思いやりや周りの人を大切にする姿は尊敬できるところでもある。ただ、自分が貫きたいことがあって、そのために邪魔になるようなことが入ってきそうになると必ず一匹狼になる。そのあたりの芯の強さ、軸がブレないことも、昔から変わっていない圭佑の強さかもしれません。

 別々のチームになって以降の彼の動向は、特に彼だけを注目していたわけではなく、同じ世代という括りの中で見る程度でしたけど、いつの時代にも僕にとっては「変わらないな」と思う圭佑がいましたね。最近は“ビッグマウス”という言われ方をすることも多いみたいだけど、僕はそうは思わないし、彼も恐らくそんなつもりはないと思う。彼の子供の頃を思い起こしても、圭佑にとっては普通のことを言っているだけだと思いますよ。ただプレーに関しては当たり前ですが、変化は感じます。最近の彼は、彼自身が昔、イメージしていたプレーをできるようになっているというか。昔の彼は、持っているイメージや技術は高かったとはいえ、僕くらいの身長しかなかった分、そのイメージに身体がついてこないという場面も多かった気がするけど、今はそれがリンクし始めている。それがサッカー選手としての良い変化につながっていると思います。

 そんな彼といつか一緒のチームでプレーしたいかと聞かれれば、一応「はい」と答えますが、本音を言うなら、そこにもあまり興味がない(笑)。圭佑に同じ質問をしても、恐らく同じ答えが返ってくると思います。もちろん、同じプロサッカー選手である以上、そういう機会があったらあったでうれしいけど、お互いそこに素直に喜びを感じるタイプではないですから(笑)。それに、周りが言うほどライバルという感覚もない。これまでも、これからも、それぞれが好きなサッカーを自分の思うやり方でやっている仲間であり続けると思います。

 ちなみに素顔の本田圭佑を皆さんは知りたがるかもしれませんが、本当にあのままですよ。確かに“本田圭佑像”を彼なりに作っているところも多少はあるだろうけど、そういうふうに持っていくのも圭佑だし、あいつが求めている本田圭佑もああいうことだと思うから、世の中に見えている本田圭佑も、間違いなく圭佑の一部だと思います。

家長昭博 1986年6月13日、京都府生まれ。長岡京サッカースポーツ少年団からG大阪ジュニアユース、同ユースを経て、2004年7月にトップ昇格。大分、C大阪を経て、11年にスペインのマジョルカへ移籍。韓国の蔚山現代を経て、今年7月に古巣・G大阪に。同じ日生まれの本田圭佑とは中学時代、年代別代表などでともに汗を流した仲間であり、親友の一人。

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