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マンU香川に託された使命と、指揮官を悩ますV・ペルシーという武器

2012.09.03

英メディアは香川に及第点の評価

 マンチェスター・Uは変わろうとしている。アレックス・ファーガソン監督は、変化を期待している。

 

 プレミアリーグ開幕からの2試合、ユナイテッドは“変革のとき”を思わせる布陣を敷いてきた。伝統のサイドアタックから中央でボールを回して相手守備陣を崩すスタイルへ。分かりやすく表記すれば4−4−2から4−2−3−1へとシフトし、文字通りの司令塔としての役割を香川に託した。スルーパスで味方を生かし、ドリブルやシュートで自らもゴールを狙うこと。それが、香川に託された使命だ。

 

 過去、ウェイン・ルーニーらをトップ下に置くことはあったものの、その役割は司令塔というよりもサイド攻撃を活かす上での潤滑油という意味合いが強く、香川の司令塔としての起用法は新しい試みだったといえる。実際、開幕からの2試合は“初めてにしては”というエクスキューズがつくとはいえ、まずまずの成果を挙げていた。

 

 しかし第3節のサウサンプトン戦、ユナイテッドは苦戦を強いられ、従来のサイド攻撃へシフト。結果的に“フライングダッチマン”ロビン・ファン・ペルシーの大活躍により勝利を手にしたが、この結果はファーガソンに更なる悩みを与えることになった。

 

文=松岡宗一郎(サッカーキング編集部)
写真=Getty Images

ファン・ペルシーという一撃必殺の槍を得たユナイテッド

 

 新たな選手とシステムの導入は、チームをワンランク上のレベルへ引き上げる可能性を生む一方で、リスクを伴う賭けでもある。ユナイテッドの第3節に関しては、負の側面を露呈してしまったわけだ。

 

 相手にゴール前を固められた中で中央突破を試みることは、連係が確立していないチームにとって困難なミッションである。香川はボールをもらいにピッチを駆け回ったがスペースの無さや厳しい当たりを前に攻撃の起点とはなれなかった。

 

『スカイスポーツ』は「スペースを見つけるために動きまわった」と一定の評価は下したが、周囲との連係不足、特にダニエル・ウェルベックとの関係に問題を抱えていたことは明らかで、得点を生むことなくピッチから去ることに。

 

 その後、アタッカーのナニやストライカーのハビエル・エルナンデスを投入してやることがはっきりしたユナイテッドはサイドを起点とした攻撃を繰り出し、セットプレーから得点を決めていった。ユナイテッドは複雑なパス交換というバイタルエリアでの剣術を身につけなくとも、ファン・ペルシーという“一撃必殺の槍”にボールを集めさえすれば得点が生み出せることを証明したわけだ。

 

 

香川が直面した“プレミアの洗礼”

 

 香川にとって、この試合は“イングランドらしさ”を痛感した試合になったのではないだろうか。サウサンプトンは、エヴァートンやフルアムに比べ当たりが激しく、香川が吹き飛ばされるシーンが何度も見られた。

 

 もちろん、一瞬のタッチでマークを外し、シュートを放つシーンも見られたが、フィジカルという古典的な防具で守りを固めるチームとの対峙は香川を悩ませた。“プレミアの洗礼”、そう言い換えても良いかもしれない。

 

新たな悩みを抱えるファーガソン、判断に注目

 

 昨シーズンまで、ユナイテッドはファン・ペルシーのようなスペシャルなストライカーを保持していなかった。しかし、一撃必殺の槍を手にした今、ユナイテッドはかつてクリスティアーノ・ロナウドをワントップに起用したように、絶対的な能力を持ったプレーヤーの才能を引き出すシステムを取ることが可能になった。

 

 もちろんファーガソンの判断次第では現行の戦術への成熟度を高め、香川とファン・ペルシー、そしてルーニーの同時起用も可能だろう。しかし一方で“トップ下、香川”へのチーム内理解が進まなければ、従来の2トップ、サイド攻撃への回帰も考えられる。

 

 開幕からまだ3試合。数々の名選手がプレミアの水に馴染むのに時間を要していたことを考慮すれば、香川が直面した問題もまた言ってみれば一時の不安“マリッジブルー”のようなものだと言える。ただ、ユナイテッドという世界最高クラスのクラブでは、一瞬一瞬が勝負の時間となり、用意される時間は決して長くない。

 

 ユナイテッドは変わるのか。それとも従来のスタイルに戻るのか。すべてはファーガソンの判断次第だが、監督の構想を揺るぎないものとするために、香川の適応にも期待がかかる。託された使命、トップ下としてチームを新たな領域へと導くために。香川の挑戦は続く。

 

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