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日本・シンガポールメディア座談会2015レポート/東南アジアからスター選手を呼ぶには

2015.11.30

11月11日(水)、アジアサッカー研究所では、日本とシンガポールのメディアによる座談会「Singapore-Japan Media Talk」をシンガポールにて開催した。同座談会の開催は昨年10月に引き続き2回目。今年は11月10日(火)〜12(木)において、『高橋陽一「ボールはともだち」SJ49 シンガポールツアー2015』の一環として実施した。同ツアー内で行ったチャリティイベントで交流を深めたシンガポール障がい者サッカー代表チーム「Singapore Cerebral Palsy Football Team」のモハメド・ザイヌディーン監督による、同チーム紹介や、キャプテン翼の作者である高橋陽一氏への質問会も併せて行われた。

この座談会は、シンガポール・日本のメディアが両国、ひいてはアジアサッカー界の現状や課題への相互理解を深め、さらなるアジアサッカー界の発展に繋げていこうという目的のもと、アジアサッカー研究所が昨年に引き続き開催。「(欧州クラブと比較し、)Jリーグがアジア戦略において、まだ実現できていない事は何か」という事を主なテーマに3カ国のメディア関係者が意見をぶつけた。その中でも、シンガポールメディアから日本サイドに対して、「現状ではシンガポール国内でJリーグに興味を持つ人は増えないだろう。」という辛辣な意見が多くを占めた。

「Jリーグは昼間しかやっていないから、(シンガポールでも放映されてはいるが)観ることが難しい。」(※注:実際にはナイトマッチもあるがその程度の認知度のようだ)「J2、J3はおろか、J1でも知っている選手がいない。」「ドルトムントがアジアツアーを行った際は試合前のPRから丁寧にやっていた。Jクラブはそこまで力を入れているようには感じられない。」海外メディアが語るJリーグ・アジア戦略の厳しい現実。だが、それらの意見の中に課題解決に向けたヒントが存在した。

「スター選手を取ることで、Jリーグの注目度は一気に高まるのではないか。」シンガポールメディア側から発せられた、1つの意見。今年、シンガポール人選手(DFサフワン・バハルディン)が初めてオーストラリアリーグ(Aリーグ)移籍を果たし、Aリーグがシンガポール国内で注目された背景もあり、議論は一気に加速。どのようにすれば、日本に東南アジアのスター選手が移籍しやすい環境を作る事ができるのか、という方向へ話は進んだ。

その環境構築として、挙げられた事は主に2つ。1つは言語の壁をなくす事。これは昨年も言われた課題であるが、やはりJリーグ内でコミュニケーションを取る上で日本語しか話さない選手、関係者が多い事は、海外選手から見てマイナスに映るようだ。そして、もう1つはサッカー協会やスポンサー企業のサポート、それに付随するメディア露出をさらに高める事が挙げられた。

東南アジアのスター選手を獲得する事で、Jリーグの注目度向上に繋げる事ができるのは、2013年にJ2コンサドーレ札幌がベトナム代表FWレ・コンビンを獲得した成功事例から見ても有効な策だと言える。しかし、東南アジアの1流選手を獲得する際においては、何千万単位の高額年俸がネックになる事が多い。

そこで、シンガポールなど東南アジアのビジネスマーケットを拡大しようとしている日本企業のスポンサリングやサッカー協会等のサポートにより、移籍の実現性を高める事ができるのではないか。それに併せて、各種メディアと連携し、プロモーション効果を最大限に高める事で、企業に出資する意味を持たせる事が不可欠であるという事が、2つ目の策の大筋である。2015年シーズンでは、セイコーエプソンがスポンサーを務めるJ1松本山雅がシンガポールから選手を獲得する事を検討していた事例(※)が話題に上り、このような方法が理想的ではないかと、今回の議論では結論づけられた。

※エプソンのシンガポール法人がシンガポールサッカー協会のスポンサーをしている関係もあり、U-14のシンガポール代表チームから育成年代の選手を3名、1週間程度松本山雅FCに派遣。同社がCSRの一環としてグラスルーツのサッカーを支援していることからこの企画が実現。派遣したタイミングが、ロシアW杯予選の日本代表vsシンガポール代表の一戦でシンガポール代表のGKイズワン選手が大活躍した時に重なり、松本山雅のフロント関係者がイズワン選手の獲得を匂わせたため、シンガポールのマスメディアでも大きな話題となった。偶然が重なった形だが、結果的にエプソン社のシンガポール内の露出は一時的に高まる結果となった。

1994年にイタリアに移籍したカズがスポンサー(ケンウッド)をつけて行った形に近いと言えるだろうが、当時スポンサーがイタリア市場を睨んでいたたわけではなく、あくまで日本国内での認知度アップが狙いだった。このモデルの場合、シンガポール市場の小ささが一つ大きな壁と言えよう。企業からすると、タイやインドネシア、ベトナムなどの比較的な大きな市場のほうが優先度が高そうだ。

Jリーグのアジア戦略を活性化させる為の1つの有効な手段はスター選手の獲得。そして、その為には「言語」の壁を無くす事はもちろんだが、「メディアがPRをもっと積極的に行う事で、スポンサー企業にメリットを感じさせる事も重要である。」という方向性で、今回の座談会は終了した。Jリーグでは、東南アジアのスター選手の獲得(および活躍)という、実はレベルの高い欧州リーグでは逆に実現が難しい事実を逆手に取って実現できるかもしれない。

アジアサッカー研究所では、今後も海外メディアとの座談会を行い、アジアサッカーの発展に向けた意見交換を行っていきたい。



なお、この座談会前にモハメド・ザイヌディーン監督による、脳性まひ7人制サッカー(以下、CPサッカー)・シンガポール代表チーム「Singapore Cerebral Palsy Football Team(以下、シンガポールCPチーム)」の紹介セッションを実施。CPサッカーの基本的なルール(前後半30分ずつ、コートは通常の半分の大きさ等)から、計13名で週3回練習しているといったシンガポールCPチームの紹介があり、CPサッカーという普段は触れる機会の少ない分野への理解を深めた。


座談会後には、キャプテン翼の作者である高橋陽一氏への、海外メディアからの質問セッションも設けられた。「翼の引退後を描く予定はあるのか?」「新しいシリーズを描く予定は?」など、多くの質問が寄せられ、キャプテン翼のアジアでの人気を改めて実感させた。


(会場協力: Cityhub: 20 Collyer Quay #23-01, Singapore)

Cityhub は、シンガポールで自分自身を確立するために探している起業家、新興企業と多国籍企業のためのワンストップのビジネス·ソリューションを提供することを目的として、 1999年に設立された最初のサービスオフィスです。

それ以来、Cityhub は、シンガポールの大手サービスオフィスの一つに成長しました、また、ホーチミン市、ベトナムの賑やかな海岸に拡大している。

長年にわたり、Cityhub は、複数の拡張や移転、ラッフルズ·シティであるビジネスハブで会社を位置づけるその最新の動きを受けています。他の場所では、ホーチミン市のビジネス地区にあるNgee Ann City(高島屋)の一等地に広々とした15,000平方フィートの面積だけでなく、一流のサイゴントレードセンターのペントハウスを含む。

シンガポールでのブランド名としての地位を確立した、Cityhub は、当社の優れたサービス、スタイリッシュなオフィスインテリアと最先端のオフィス設備がそれらを獲得、私たちの顧客リストに多くの成功した多国籍と地元企業をカウントします。Cityhub は継続的に当社の現在および潜在的な顧客のために最高品質のサービスを確保し、当社のサービスや施設を改善することを目指しています。

(アジアサッカー研究所/平井・四方)
写真協力:Junpiter Futbol

「サムライフットボールチャレンジ」とは、
アジアのサッカークラブや事業者の”中の人”になって、本物のサポーターやスポンサーを相手にリアルな運営を体験し、楽しみながら学ぶ&自分を磨く海外研修プログラムです。ビジネスでも大注目のアジア新興国は、チャンスも無限大。何を成し遂げるかはあなた次第!日本にいては絶対得られない体験をこれでもか!と積重なてもらいます。経験・年齢・性別・語学力不問です。
http://samurai-fc.asia/

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By アジアサッカー研究所

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