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【2015-16シーズン序盤戦通信簿 欧州10大クラブを徹底検証】<第6回>アトレティコ・マドリード篇

2015.09.22


 2015-16シーズンが開幕して約1カ月が経過。チャンピオンズリーグも本戦が始まり、ヨーロッパ各国リーグの戦いも本格的にスタートしました。

『サッカーキング』では4大リーグから10チームをピックアップし、夏の補強やここまでの戦略を分析。さらに少し気が早いですが今シーズンの達成目標までを考察し、毎日1チーム、10日間にわたり連載形式で「2015-16シーズン序盤戦通信簿 欧州10大クラブを徹底検証」をお届けします。

 第6回は、スペインの2強に風穴を開ける結果と成績を近年示しているアトレティコ・マドリードです。ディエゴ・シメオネに導かれた“第2のマドリッドのクラブ”を分析します。

アトレティコ・マドリード

文=Footmedia

基本フォーメーション

夏の戦力補強評価

採点…5(5点満点)

 この夏は、バルセロナとレアル・マドリードを上回る、約1億2000万ユーロを使って大型補強を敢行。とはいえ、決して“乱獲”ではなかった。ルシアーノ・ビエット、ジャクソン・マルティネス、ヤニック・フェレイラ・カラスコ、ステファン・サヴィッチら、いずれも欧州の舞台で確かな実績を残し、また年齢的にも今後の伸びしろを残す実力者たちをクラブに迎え入れた。

 一方で、ヤン・オブラク、コケ、アントワーヌ・グリエスマン、ディエゴ・ゴディンら、高額オファーが届いた主力選手たちの引き留めにも成功。アルダ・トゥランやミランダなど一部の中心選手は退団したが、ディエゴ・シメオネ体制5年目で最も豪華なチームが完成した。それでも2強を上回る陣容とは言えないが、本気でタイトル奪還を目指しているのは明らか。2年前のリーグ優勝を知るメンバーは少なくなったが、継続的な成功を収めるために常時メンバーを入れ替えるのは現代サッカーの定石となりつつあり、うまく新陳代謝を図ったという点でも高い評価を与えられる。

新戦力のここまでの評価

 ここまでピッチ上で最も輝いているのは、“出戻り組”になる。ポルトからのレンタルバックを果たしたオリベル・トーレスは、持ち味のパスセンスだけでなく、献身的な守備や球際の強さなど、逞しさも披露。プロ選手として一皮抜けた印象がある。また、チェルシーからの復帰を果たしたフィリペ・ルイスは変わらぬ安定感を見せ、早くも左サイドバックの定位置を確保した。

 一方、ビエット、J・マルティネス、カラスコ、サヴィッチら“新入り”たちは、出場時間の差こそあれ、いずれも真価を発揮するところまでには至っていない。もちろん、出戻り組にはシメオネ・サッカーをすでに知っているというアドバンテージがあり、彼らの評価を下すのは時期尚早と言えるだろう。ただ、新入りがこれまでのレギュラーメンバーを上回るぐらいの存在感を見せなければ、2強に追いつき、追い越すことは難しくなる。いったい、誰がサバイバルレースを勝ち抜くのか。それを観察していくのも、今後の楽しみの1つになる。

チームとしての注目ポイント・選手

 大型補強の裏には、「攻撃戦術の進化」という目的がある。“堅守速攻”のスタイルはすでに完成しているものの、昨シーズン、勝負どころで結果を出せなかったのは、それ以外に攻め手がなかったから。それは“強者”の立場に変わったことで、守備的に戦うチームが増えた格下相手との試合でも露呈した課題だった。それゆえ、多士済々の前線の駒を使い分け、攻撃バリエーションを増やしていけるかどうかが注目される。

 実際、シーズン開幕から19日のエイバル戦までの公式戦5試合で、先発した2トップの組み合わせは3パターンを数え、試合状況に応じて積極的なメンバー交代も行われている。ただ、その中でも軸になることが期待されているのは、新戦力のJ・マルティネス。チームで唯一“ポスト役”を務められる選手であり、彼を起点に、スピードとテクニックに優れるグリエスマン、ビエット、カラスコ、アンヘル・コレアらが絡む攻撃が完成すれば、指揮官が思い描くチームの進化は実現する。すでに第3節セビージャ戦で加入後初ゴールをマークしたが、まだリーガのテンポに慣れていない様子も見られ、さらなる順応が待たれるところだ。

チームとしての懸念点

 シーズン最初の大一番となったバルセロナ戦で逆転負けを喫したとはいえ、開幕からの公式戦5試合で4勝、さらに勝利した試合は全て無失点で終えるなど、決して悪いスタートではない。さらに、ここまで明らかな問題があるわけでもない。ただ、純・新メンバーが完全にチームに適応できるかどうかという点に関しては一抹の不安が残る。

 特にJ・マルティネスやビエットらFW陣は、得点を奪うこと以外に、守備面でも多くを要求される。過去に在籍したクラブでは味わうことがなかった仕事量の多さのなかで、自分のプレーを出し切れるかどうか。もし彼らの適応に時間がかかるようだと、結局は昨シーズンまでの主力選手への負担が増し、チームとしての進化も停滞するという悪循環に陥ることになる。そのあたりは、シメオネ監督の指導力、メンバー選考にも左右され、指揮官にとっても真価を問われる1年となりそうだ。

シーズン最終目標・予想

 言うまでもなく、今シーズンの目標は“打倒2強”。先日のバルセロナ戦では敗北を喫したが、彼らを含めて、2強との対戦は少なくともまだ3度残っており、目標を達成するだけのポテンシャルはある。そして次に控えるのは、10月4日の“マドリード・ダービー”。再びホームでの試合であり、逆にここを落とすようだと早くもプランの再考を余儀なくされる。とはいえ、先を見据えず、目の前の試合を全力で戦うのが、シメオネのチームの変わらぬ姿勢。「1試合ずつ」確実な結果を残していけば、その先に大きな成功を収めることができるはずだ。

By Footmedia

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

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