」としてdocomo、au、SoftBankの公式サイトに登場しました。現在行われているブラジル・ワールドカップ出場権を懸けたアジア最終予選やユーロ2012の特集、イングランドやドイツ、スペインなど、ヨーロッパ初の特別書きおろしコラムなど、サッカーの”今”を伝える会員限定コンテンツが盛りだくさんです。
今回は、ユース世代を中心に取材を続ける安藤隆人氏のコラムを展開するサッカーキングプラスのコンテンツ「ユース教授が振り返る才能たちの”原点”」の中から、絶好調でロンドン・オリンピックへと臨むU-23日本代表FW永井謙佑にスポットを当てたコラムを特別にサッカーキングで公開します!
今月下旬から始まるロンドン・オリンピックの最終メンバーが発表された。タレントがひしめき合う攻撃陣では、サプライズ選出やまさかの落選など、様々なドラマが展開されたが、そんな中、猛烈なアピールを見せて18人の枠に滑り込んだのは一人の男がいた。永井謙佑である。
関塚ジャパンが立ち上がった当初、そして、ロンドン・オリンピック出場権をかけたアジア予選の途中まで、絶対的なエースとしてチームに君臨。A代表のサポートメンバーとして南アフリカ・ワールドカップにも帯同した経験も持つ彼だったが、鳴り物入りで入団した名古屋では得点をなかなか奪えず、不調に陥ってしまう。
すると、たちまち五輪を目指すチームのエースの座からも陥落。所属チームの処遇と同様に、後半途中からのジョーカーとしての起用が多くなる。そして、そこでもジョーカーになり切れなかったことで、彼の関塚ジャパンに置ける存在価値は日に日に薄れていった。
しかし、今年に入りオリンピックが近づいていくにつれて、彼は大きな躍進を見せる。3トップの右サイドのポジションに入ると、得意のカットインからのシュートの形の精度が格段に向上。第13節までは僅かにリーグ戦2得点に留まっていたが、第14節の鹿島戦ではスピードを生かした突破と、思い切りの良いシュートで2得点を記録した。
すると、これがきっかけとなり、第15節の磐田戦で1得点、ACLの影響で延期となっていた第9節のG大阪戦でも2得点と、3試合連続5得点の大活躍で、一気にオリンピック代表入りを手繰り寄せた。続く第16節の横浜FM戦でも1得点をマーク。自らの手でつかみ取った五輪代表の座を祝福するゴールを挙げた。
彼のゴールを量産する様は、これまで何度も見てきた。驚異的という言葉がぴったりなスピード、加速力は昔から変わっていない。筆者が彼を初めて見たのは、彼が九州国際大学付属高校2年生の時。第一印象は「なんや!このスピードは!」だった。まさに「速い」という言葉がぴったりで、マイボールになった途端「ギュン!」と音を立てるように加速し、あっという間に裏に抜け出して相手DFを置き去りにする。積んでいるエンジンの性能が、他の選手と全く違うのだ。
ただ、そのスピードを生かしきれているとは言い難く、愚直なまでに走り続けているといった印象が強かった。しかし、大学界の強豪・福岡大学に入学後、そのスピードを生かすべく、緩急のつけ方やシュートまでの流れを徹底して叩きこまれていく。自身も積極的な自主トレを行い、貪欲にそれを身につけていった。
福岡大を取材に訪れると、全体練習後にセンターライン付近からいろんなイメージを膨らませながら、カットインからのシュート、縦の突破からのシュートを繰り返し行なっている永井の姿があった。シュートのパターンもインステップ、インサイド、アウトサイドを使い分け、様々なバリエーションを試し、ストライカーとしての牙を研ぎ澄ませていた。
こうした努力が、永井を単なるスピードスターではない、多くのゴールパターンを持つストライカーへと変貌させた。黙々と磨きあげた武器は、例え一時的な不調に陥っても、最後の最後で我が身を助ける。
メンバー発表の直前になって得点を量産し始めたのも、決して彼が特別な何かをやったのではなく、これまでやってきたことを黙々と継続してきたからこそである。得点量産の中で見せた一度止まってからの技ありシュート、丁寧に合わせたシュート、こぼれ球を狙ったシュートは、これまで彼が見せてきた数あるゴールパターンの一部でしかない。
もう一度言うが、彼のゴールは単純なスピードからの突破というパターンだけではない。コツコツと努力を積み重ねた結果が、今の得点量産につながっている。
永井の躍進はロンドンまで継続されるのか。これは日本のサッカーファンすべてが望んでいることでもある。五輪チームのストライカーとして『俺は速いだけではない』ことを、世界に見せつける時が来た。