2012.07.11

マンUが香川の活躍に期待…公式HPで「シンジの準備は整っている」

Reported by Titus Chalk Photo by Itaru Chiba

 アジアのスター、そしてブンデスリーガの覇者であるシンジが、今シーズンからイングランドのフットボールに挑む。
 
 神戸出身のシンジは地元の公園で2本の木の間にゴールを決めて遊んでいる頃から、ビッグクラブでのプレーを夢見てきた。
 
 その才能に見合ったビッグクラブでのプレーというシンジの願いは、J2からボルシア・ドルトムントを経て、ユナイテッドへ移籍したことで叶った。そしてその才能は本物だ。
 
 セレッソ大阪と17歳で契約したシンジは、日本で初めて高校卒業前にプロ契約を交わした選手となったが、フットボールに対して熱狂的なファンがいることで知られるドイツの工業地帯ルール地方、ドルトムントへは、35万ユーロ(約3500万円)という僅かな移籍金、そして無名に近い状態で渡った。
 
 シンジが両親と初めてドルトムントを訪れて、ホームスタジアムで試合を観戦した時の気温はマイナス14度。本人はカルチャーショックよりも「寒さ」に対するショックを受けた。しかし、熱狂的なサポーターとユルゲン・クロップ監督率いる若く元気なチームを間近に見たシンジは、ドルトムントへの移籍を決断する。
 
 そして移籍後は、驚異的な速さでドルトムントに馴染んでいくことになる。デビュー4戦目は「ダービーの母」と呼ばれる宿敵シャルケとの対戦だったが、シンジはアウェーで個性を存分に発揮した素晴らしいプレーを披露。2ゴールを決め、3-1の勝利に貢献した。
 
 両ゴール共に利き足ではない左足のゴールだったこと、また試合後に押しかけたサポーターに肩車されたことから、この試合は決して忘れないだろうとシンジは振り返っている。
 
 ドルトムントの権威的存在のジャーナリスト兼映画監督、フレディ―・ルッケンハウスにとっても、この試合のシンジのプレーは印象的だったようだ。また、シンジのドルトムントへの貢献はこの試合だけに留まらないと、アジアカップでの怪我で離脱した2010-11シーズン後半を除いた在籍2シーズンを通じて、コレクティブで速いプレスを標榜するドルトムントのフットボールに不可欠な存在だったとしている。
 
「彼はプレーメーカーではない。彼はセカンドストライカーで、ドルトムントで本領を発揮したのはそのポジションだ。運動量が豊富で、走ることを嫌がらない。そして非常にクリエイティブな選手だ」
 
 シンジ自身は自分のことをアンドレス・イニエスタのような選手だと表現しているが、まさにその通りと言えよう。トップ下でのプレーを好んでいるが、日本代表で見られるように左サイドでのプレーも可能な選手だ。イニエスタ同様、思考スピードが速く、足元のプレーが上手く、そして視野も広い選手なのだ。
 
 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は、「シンジは高いスキルを持ったテクニカルな選手だ」と表現する。イニエスタ同様、相手ディフェンダーに囲まれてもボールを失わないシンジの特色はそのスピードにあるとし、「難しい局面での“実行”スピードは素晴らしい」と続けている。
 
 この才能によって、シンジは昨シーズン13ゴールを挙げ、怪我に泣かされた2年前のシーズンも8ゴールを挙げた(リーグ2連覇とDFBカップを獲得している)。しかし、シンジはゴールを決めるのではなく、生み出す才能にも秀でており、常に相手ディフェンスを切り裂くパスのタイミングを狙っている。また、ドルトムントがバイエルンを5-2で圧倒した今シーズンのDFBカップ決勝を観戦したアレックス・ファーガソン監督とマイク・フェランコーチも気が付いていただろうが、シンジはロングパスも素晴らしい。
 
 この試合でドルトムントがカウンターを仕掛ける時はシンジがその中心を担っていた。ボールをセンターサークルまで運んでから、慌てふためく相手ディフェンダーの裏に正確なパスを通していた。幾度となくバイエルンの中盤を切り裂き、鋭いパスでディフェンスを分断しつつ、ダニー・ウェルベックのような献身的な走りをするシンジは間違いなくファーガソン監督に強い印象を残しただろう。
 
 シンジに弱点はあるのかという点については、考えすぎてしまうことだろうとルッケンハウスは指摘し、「シュートのタイミングが遅い時や、ボールを持ち過ぎてしまう時がある。シュートはするが、まだためらってしまう時がある」と説明している。
 
 しかし、これはシンジという本の小さな染みに過ぎず、これまで高い技術を持つ選手に優れた判断能力を植え付けてきたファーガソン監督のような人物にとっては問題にはならないだろう。またシンジ自身の学習意欲も高い。シンジは、「ファーガソン監督は、私を信じてくれと繰り返し言ってくれています。監督のような素晴らしい人がこのようなことを言ってくれるのは、非常に大きな意味があると思っています」とコメントしている。
 
 成長したいという彼の意欲は、トロフィー獲得の意欲と同様に明確なものだ。そしてその意欲が同じ目標を持つ仲間と引き合わせ、過去最大の挑戦を運んできてくれるだろう。