FOLLOW US

日本代表メンバーの言葉で振り返るオマーン戦。「勝つべくして勝った試合」の難しさ

2012.06.04

 敵将のポール・ル・グエンが「日本が勝つべくして勝った試合」と振り返ったワールドカップ・アジア最終予選の初戦。埼玉スタジアムの最多入場記録を更新する6万3551人ものサポーターが見守る中、日本はオマーンに3−0で勝利し、本大会に向けて好スタートを切った。

 試合後、アルベルト・ザッケローニ監督は「出場した14人の選手全員を褒めたいと思う」と語る一方で、「何人かの選手に関しては緊張しすぎていた感があった」とコメント。先制点を決めた本田圭佑も「初戦ならではの固さ」を指摘したように、快勝の中にも“難しさ”があったオマーン戦をメンバーの言葉で振り返る。

■アルベルト・ザッケローニ監督(日本代表)
「サポーターの後押しもあり、素晴らしいゲームができた。ベンチから見る風景は素晴らしいものがあった。選手たちもサポーターの後押しを受けて、この試合の大切さを再確認したことと思う。そして、再確認した上で、このゲームに入ってくれた。選手たちは初戦を取ることの大切さを理解し、強い思いを抱きながら戦ってくれた。描いていたとおりのゲーム内容だった。ただ、何人かの選手に関しては緊張しすぎていた感があった。それは非常に集中していたと言い換えることができるが、いつもならランチの後に軽い談笑なりするところを、食べてすぐに部屋に戻る選手が多かったので、ちょっと緊張しているなと思った」

「相手は中央を固めて、我々の真ん中のスペースを消してくる戦い方をしてくるだろうと予想していた。それが3次予選の後半を無失点で切り抜けてきたやり方だ。その上で崩していく必要があったが、それができるかは自分たち次第だという話をしていた。今日はサイドが積極的に攻め上がり、それによって相手ディフェンスラインの間隔を広げて、そのギャップをうまく突くことができた。サイドはある程度リスクをかけていこうというプランだったが、たくさんチャンスを作ることができたし、守備の面でも相手にチャンスを作らせなかったので、意味のあるプランだったと思う。今日出場した14人の選手全員を褒めたいと思う」

「試合前は、速いリズムでプレーしようという話をした。このチームの能力が生かされるのは、リズムが速いときだ。パスの際の距離感が2、3メートルではなく、15メートルくらいで、オフ・ザ・ボールの動きがきちんとできているときに、良いプレーが出る。ハーフタイムにも、引き続きオフ・ザ・ボールの動きをやめずにプレーしろという話をした。その指示どおりに動いてくれて、非常に満足している」

「先制した後、リズムは確かに落ちたが、前半の全体を通して見ると、それほど悪くなかったと思う。ただ、このチームの選手たちの能力を考えれば、前半で試合を決めてもよかったのかなとも思う。リズムが落ちた要因としては、先制したことでオマーンがあの段階から前掛かりになるのではないかと、選手たちが探りながらプレーしていたからではないかと思う。しかし、オマーンは前掛かりにならず、我々は自分たちでスペースを見つけるしかなかったので、ハーフタイムには継続してスペースを作る動きをしてくれと話した」

「この試合にメンタルとフィジカルの調整がうまく合うか心配していたが、選手たちはこの試合の大切さをよく理解していたので、良い形でゲームに入ることができた。試合のほとんどの時間を自分たちのリズムでプレーできた。我々としては、チームのコンセプトができてきている段階なので、今後もメンタルとフィジカルをどう合わせていくかが大切になってくる。結果とシュート数だけを見れば簡単な試合に捉えられがちだが、オマーンは3次予選の後半を無失点で切り抜けてきているチーム。そうした相手からこういう形で勝利できたことは素晴らしいと思う」

「本田(圭佑)はボールをキープできる選手。周りの選手がオフ・ザ・ボールの動きの中でいい形で動き出せば、彼は自然とボールを離す。加えて、今日は本田自身もオフ・ザ・ボールの動きが良かった。相手のボランチにマンマーク気味につかれていたが、それをうまく外していた。ゴールシーンについては、試合前から、クロスが上がったときにファーサイドに、あのタイミングで入ってくれという話をしていて、そのとおりに動いてくれた。彼は私の指示を忠実に聞いてくれる印象がある」

「今後、このゲームの勝利をどう活用していくか。なぜ勝てたのか、どのようにして勝ったのかをしっかり分析することが大切。今日は良い試合だった、簡単な試合だったな、というところで止まってしまうようではダメ。これまでも、チームには常に成長するようにリクエストを出してきた。これからもそのリクエストを出し続けていくつもりだ」

■内田篤人(シャルケ)
「(オマーンが想定よりも引いてこなかったが?)まあ、1点取れればね。1点目ってオフサイドじゃなかった? 俺、ゴール裏のスクリーンみて、オフサイドっぽいけどいいのかなと思ったけど」

「(チームとしては早めに点を取って楽になったか?)これまでの予選では、点を取れずにじりじりという展開が何回かあったんで、さくっと取れれば落ち着いてゲーム運びができる感じにはなりますけどね」

「(途中交代については)イエロー出たからね。1回注意あるかなと思ったけど、いきなり出ましたね。でも酒井(宏樹)君、すごくいいし。刺激があって楽しくなってきたかなと。お互いにライバルはいたほうがいいし、向こう(シャルケ)でスタメンで出なかったときもいろいろそのほういいって思ったんで。のんびりやっちゃうタイプだから、努力しなくなっちゃうから」

■清武弘嗣(セレッソ大阪)
「(自身の評価は?)ゴールを決められたらよかったですけど、決められなかったんで、今日はダメだったなと思います。取りやすいコースに(シュートを)打ちましたし、ゴロだったら入ったと思うので、ちょっと力入りすぎてましたね。次に切り替えます」

■長友佑都(インテル)
「(1点目をお膳立てしたクロスは?)(ゴール前に)人数が多く入っていたので、僕的には合わせやすかった。2本目の岡崎(慎司)に預けたのも、3~4人が入ってくれていたので、あれだけ入ると相手はつかめないですし、あとはクロスの質だけだと思います」

「(クロスの質は何点か?)まだまだ良くしていかないといけない。まだまだ未熟ですけど、一つひとつ成長していきたいと思います。監督からは『相手の右サイド、僕ら側からすると左サイドを突いていけ」とかなり言われていたので、それを意識しました」

■長谷部誠(ヴォルフスブルク)
「(3点取れたが?)正直、もうちょっといけましたね。あと2、3点は取らなきゃいけなかったかなと思います。結果だけ見れば素晴らしいスタートだと思います。実際、相手もシュートを打ってないし、そういう意味では、初戦をこういう形で勝てたので。ただ、逆に今日勝てたからといって、また次の試合でも勝てる保証はないし、今日の修正点をしっかり見直して、次に切り替えたいです」

「試合後、監督には『完璧だ』と言われましたが、自分の中では、ボールをつなぐところのミスとか、もうちょっと動けたかなと感じています」

■前田遼一(ジュビロ磐田)
「(先制点は前田選手が2回ボールに触り、長友選手にボールが渡って生まれたが?)みんなが良い距離感でできたのはあると思います」

「(長友の上がりは)見えていました。強いて言えば、自分が中に入って合わせたい気持ちはありましたね」

「(得点について)ちょっとは役に立てたかなと思いましたけど、その前にヘディングシュートを外していたので、絶対に決めたかったですし、そこは良かったです」

■本田圭佑(CSKAモスクワ)
「(普段より高い位置でボールを回そうとしていたが?)意識はしてます。ただ、効果的なボールのもらい方は割と少なかったかなと、自分としては認識してます」

「(早い時間帯に点を取れたことは)大きかったですね。僕自身にとっても大きかったですし、チームとしても少し力を抜くことができたんじゃないかと思います」

「今日はノッキングというか、ワンテンポ遅れると、その選択肢をやめて横に出すでしょ。そうすると全体的にスピードが上がらなかったりするので、消極的ということではないんですけど、そのタイミングで出せないことで一歩遅れるとか、そういうケースが何度か見られたので、僕の感覚としてはそれも初戦ならではの固さかなと思います」

■香川真司(ドルトムント)
「チームとしてすごく良いスタートが切れたと思います。あの時間に点を取れて、すごく試合に入りやすかったと思います」

「(相手の右の裏を突けたか?)いや、逆に今日は僕らの右サイドを中心に攻撃を組み立てていたと思いますし、そこでうまくサイドバックとかサイドハーフが攻め切れていたので、ボランチも絡めて起点になっていましたし、なかなかこっちの左サイドは苦しい時間帯が続いていました。(長友)佑都君が何回かオーバーラップして良い形は作れたと思いますが、単発の攻撃が多かったかなと思います」

「僕はこういう試合でもっと結果を求めたいですし、ましてやシュートをもっと打たないと始まらない。そこに入っていくタイミングであったり、呼び込みであったりが必要になってくると思います」

【関連記事】
日本代表、W杯へ好発進…本田・前田・岡崎の得点でオマーンに快勝
日本対オマーンに6万3551人…埼玉スタジアム最多入場者数を更新
ル・グエン監督「確たる差があった。日本の勝利を祝福したい」/オマーン戦

【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING @SoccerKingJP』の編集長に就任。

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

RANKING今、読まれている記事

  • Daily

  • Weekly

  • Monthly

SOCCERKING VIDEO