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遠藤彰弘「地元に恩返しという気持ちでクリニックを始めました」

2012.06.21
 鹿児島実業高校卒業後、横浜FMに入団し、U-23日本代表としてアトランタ・オリンピックにも出場。2008年に現役を退いた後、現在は子供たちの指導など精力的に活動する遠藤彰弘氏に話を聞いた。昨年、地元・鹿児島で開催した「城彰二&遠藤彰弘 サッカーキャンプ2012 in 桜島」への思いとは……。

 そして、実弟である日本代表MF遠藤保仁について、ロンドン・オリンピックについてもインタビューをした。

まず「城彰二&遠藤彰弘 サッカーキャンプ2012 in 桜島」について。今年も開催するとうかがいました。

遠藤彰弘 去年初めて実施しました。自分が生まれた地元で、元プロ選手が一緒に寝泊まりするというキャンプを継続的に続けていこうと思ったのがきっかけですね。

その動機として は、どういう経緯で「始めましょう」となったんですか

遠藤彰弘 基本的には1dayのクリニックだったり、午前中だけになり ます。イベント的な感覚のクリニックって結構あるじゃないですか。ただ、代表クラスの選手が子供たちと一緒に寝泊まりして、朝に一緒に起きて走ったりと か、夜もミーティングしたりとか、そういう機会って本当に少ないな、というか、多分ないんじゃないかと僕は感じていました。だから去年、まずは地元に恩返 しという意味も込めてキャンプをやろうと思いました。城(彰二)も地元で一緒にやってた仲間なので、ちょっとチャレンジしようかなと。それをいずれは鹿児 島だけじゃなく、いろいろな場所でできていければと思ったんですね。地元にゆかりある選手がそこに来て、一緒に寝泊まりするという……そういう経験って、 子供たちなかなかできないと思うんですね。まずはそういう機会を作ってあげると。その一発目が去年だったんですね。

寝食をともにするというと、ずっと一緒にいる感じですか

遠藤彰弘 そうです。もうずーっとです。

何人くらい集まったんですか?

遠藤彰弘 スポット参加という形で、地元の子も練習ひと枠から参加できるようにしたんですけど、トータ ルだと170人以上ですね。泊まりの子は10人弱です。

では、その10人くらいの子は遠藤さん、城さんと一緒に生活したわけですね。いかがでした?

遠藤彰弘 僕らも楽しいですし、子供たちもすごく、まあ、城と一対一で話 せる機会なんてまず考えられないじゃないですか。だから「絶対来年も来る!」っていう感じで。本当にやってよかったなと思ったんで、これは継続的にやるべ きものだな、と。

小学生を対象にしたのは何か意味 あるんですか

遠藤彰弘 基本的には小学生限定なんですけど、中学生もいろんな声が上 がってきていて。「中学生はダメなんですか」とか、その辺りは融通を利かしていこうとは考えてます。中学生のキャンプも作ってあげようかなと考えてます。

小学生の年代に、どういうことを教えようとか、教えたらいいとかありますか?

遠藤彰弘 このキャンプに限っては本当に「一回原点に戻ろう」というの が一番のテーマですね。人としてもそうですし、サッカーについても、派手なもの、難しいことをいっぱい教えるわけではなくて、僕らがこの年代に一番大事 だった基礎の部分ですよね。人としても、技術のところも含めてです。そういうベースに戻って、基礎ってくだらないと思われがちですけど、それがないとプロ にはなれないっていうことを、グラウンドでも、寝食をともにして接する中でも教えていきたいと。子供って吸収が速いので、その効果はすごくあると思いま す。普段のクリニック1回やって城さんにちょっと教えてもらったけど、声も掛けてもらえなかったとか、そういうのじゃなくて、一人ひとり部屋に呼んで「キ ミのこういうところは良かったね。でも、こういうところが課題だよね」というのを城から言ってもらうと。僕ももちろんやりますけど(笑)。

コーチングも大事にしつつ、コミュニケーション、体験のほうに軸足を置くよう な?

遠藤彰弘 そうですね。 僕らが何でプロになれたのか、たどり着けたのかっていうと、そこは僕も城も同じ考えなんで。そこをやっぱり、今の若い時に考えて、ちゃんとやってほしいと いう思いがあるんです。

その点で言うと、今の子供たちに一番伝えたいことって何ですか

遠藤彰弘 まずは例えば、グラウンドに入る時、そこにグラウンドがある ことに感謝するとか。そういう気持ちですよね。ここにボールがある。それは親御さんのおかげだったり。そういうものに感謝したり、あいさつをきちっとする とか。朝のあいさつもそうだし、「いただきます」、「ごちそうさま」とかです。食べるものも、基本的にはアレルギー以外は残さないとか。そういうことから スタートするんですよね。

グラウンドでは?

遠藤彰弘 グラウンドに入ったら、一番サッカーで使う技術、インサイド キック。もうゲーム中に一番大事なところを、派手なカーブかけたシュートとかじゃなくて、サッカーの本質をもう一回子供たちにちゃんと認識させるっていう ところがメインのテーマですね。だから、子供たちからすると、トレーニングあんまり面白くないかもしれない(笑)。基礎ばっかりやるんで。でも、それがで きてないとゲームに行けないよと。自分たちが思うようなゲームはできないよということを、体験させて上げると。それをまた、元プロがやるっていうことで、 説得力が増すと思うんですよ。

ちなみに桜島のア ピールポイントって何でしょう?

遠藤彰弘  基本的には何もないです(笑)。なんにもなくて、宿舎とグラウンドの行き来だけで。最近ようやくコンビニができたくらいのド田舎なんで。逆にサッカーに集 中できる環境というか。

じゃあ、特に都会の子供に 来てほしいんじゃないですか

遠藤彰弘 そういうところはあります。結局、僕も弟もそうですけど、こ ういう環境からプロになれてるっていうのはね。人工芝じゃないとプロになれないとか、そういうわけではなくて。じゃあ、僕らがなんでプロになれたんだろ うっていうことを考えると、やっぱりベースの部分、基礎の土台がすごく広かった。そういう答えに行き着くんで。それを、僕らがやってた同じグラウンドで、 子供たちに体験してほしいんですよね。

この溶岩グ ラウンド、桜島中学校というのは、実際に遠藤さんがやってたところなんですよね。

遠藤彰弘 そうです。僕らがプレーしていたところです。

城さんと遠藤さんは同級生なんですよね。

遠藤彰弘 僕が高校の時、鹿児島実業の同級生です。

やっぱりすごく仲いいんですか?

遠藤彰弘 いや、普通です(笑)。けど、まあ彼も地元に恩返ししたいとい う気持ちがあったみたいで。で、僕のほうから声をかけて、「一緒にやんねえか」って。で、まあ去年やらせてもらったんですけどね。

他、練習以外で何かアピールポイントがあればお願いします。

遠藤彰弘 夜バーベーキューやったりとか、花火が毎日上がってるんです ね。みんなで一緒に見たりします。

花火? 毎日上 がってるんですか。確かに夏ですし、そういう時期ですね。

遠藤彰弘 結構大きいお祭りがあるんですよ。そういうのも一緒に行って子供たちと交流する。それもこのキャンプの売りです ね。他にないと思います。


城彰二&遠藤彰弘サッカーキャンプ 2012 in 桜島とは……
元日本代表の城彰二と遠藤彰弘が、出身地の鹿児島県桜島にて小学生を対象にサッカーキャンプを開催。寝食を共にし、ビギナーからプロ志望まで、各レベルに応じて直接トレーニング指導。練習のみの参加ができるスポット枠もある。

開催日程:7月28日~8月1日(4泊5日)
参加対象:小学3・4・5・6年生
宿泊先  :国民宿舎「レインボー桜島」
募集期間:7月14日まで受付

キャンプの詳しい内容、お問い合わせはこちらから:http://11aside.jp/


さて、話は変わりますが、ロンドン・オリンピックの件で質問です。オーバーエイジ枠で弟さん(遠藤保仁)を呼ぶべきという話がありますけど、お兄さんとしてはどうお考えですか?

遠藤彰弘 家族としては、行ってほしいですが、今の五輪代表に本当にマッチするのかっていうと、最後は監督が決めることなんでね。家族としてはぜひ行ってほしいですし、そこからまた、ブラジル・ワールドカップにつなげて行ってほしいですよね。

ご本人とそんな話したりします? 弟さんと。

遠藤彰弘 いやいや、しないです。サッカーの話はないです。ただ、本人が出たいのは間違いないですし、その中で、彼がうまく若手を操るというか、そういうプレーは十分可能だと思いますし、個人的には入ったほうがいいとは思っています。

つまり、オーバーエイジ枠を使うべきだという考えですか?

遠藤彰弘 オーバーエイジを呼ぶことによって、今の五輪世代が学ぶことがすごく多いと思うんですよね。競争も激しくなりますし。僕は呼ぶべきだと思います。

遠藤さんならオーバーエイジで誰を呼びますか?

遠藤彰弘 誰がいいんでしょうね(笑)。やっぱり、精神的な柱になれる選手で周囲が萎縮しない選手がいいと思うんですよ。その人が入ったことで、若い選手が萎縮して、その人に気を使いながらプレーするっていうのだけはナシだと思うだよね。そうじゃなく、うまくバランスを取る選手。技術、戦術、普段の生活とかでも、うまくバランスの取って、コミュニケーションを取れる選手を呼ぶべきかと思います。

その点で言うと、弟さんピッタリですね(笑)

遠藤彰弘 ……だと思いますけどね(笑)

あと、五輪と言うと、アトランタ大会をすぐ思い出すんですが、ご自身の五輪を振り返ってもらえますか。五輪に出るってどのような心境なのですか?

遠藤彰弘 僕らは久しぶりに五輪に出た世代だった。だから、すごく実感がなかったんです。逆に「五輪ってどんなものなんだろう」って感じで行ったんですけど(笑)。やっぱり日の丸を背負うっていうことの重み、国を背負って戦うわけで、責任感も必要ですし、何人も選ばれるわけじゃない。そういうところでは、気持ちの部分ですごく興奮してたのは事実ですね。

「マイアミの奇跡」がありました。今から見て、あのチームは何がすごかったんですか?

遠藤彰弘 そうですねえ。一人ひとりがサボらないというか、誰かに任せるんじゃなくて、あと1メートルでも行くところまで行くと。西野(朗)監督もそういうことを徹底されていたし、ユース時代から「世界」っていう2文字を西野さん、山本(昌邦)さんが常に言ってましたからね。「世界だ世界なんだ」って。僕ら最初はそんなに意識していなかったけど、ずーっと言ってましたから(笑)。

当時のメンバーは、城(彰二)さん、前園(真聖)さん、中田(英寿)さん、個性の強いメンバーですよね。

遠藤彰弘 チームワークがすごくよかったかと言われると、そうかなあと思うし。仲いいヤツはすごく仲いいけど、それはどのチームでもそうでしょ。すごく仲悪い人なんて、そうそういないわけで(笑)。ただやっぱり、山本さんがバランス取って、西野さんは威厳があってという……。バランスがよかったのだと思います。

なるほど!

遠藤彰弘 そう。僕らは指導者には本当に恵まれたと思ってます。

今の五輪代表チームを見ていて、ロンドンで上を目指していくには何が必要でしょうか?

遠藤彰弘 ポゼッションしている時間は、昔の日本より確実に増えているんで、世界に出ていっても、五輪に行ってもポゼッションはできると思うんですね。けど、それが目的じゃなくて、やっぱりゴールを目指すべきで、チャンスがあったらシュートを打つべきですね。だから、ゴールからの逆算、そういう部分をもっと意識して高めるべきだし、たった1本のシュートで1点でも、1ー0で勝てば結果として出てくる、次に行けるわけですよ。やっぱりそういう大会なんでね。延々とリーグ戦が続くわけじゃないので、貪欲に勝負にこだわって、ゴールにこだわって、やるべきだなと思いますね。

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