2015.08.23

時に厳しく、時に優しく…本田圭佑が子どもたちに伝えた“熱き志”

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ミラノで子どもたちと交流した ©HONDA ESTILO

 現代の子どもたちに欠けているものは何か。

 競争意識、ハングリー精神、覚悟、はたまた情熱か――それらのものを一つひとつ埋めていくかのように、熱く語りかける本田圭佑の姿があった。いかなる時も真剣勝負。子どもたちに真っ正面から向き合う本田が発した一言一句が、少年少女の心を刺激した。

 本田がプロデュースする「SOLTILOサッカースクール」に通う小学2年〜6年生までの11人が、7月30日〜8月10日にイタリア・ベネチアで行われた「ACミランキャンプ」に参加した。

 世界各国から総勢約100名の子どもたちが集まり、7日間のスケジュールではサッカーのトレーニング以外にも、共同生活の中で様々な文化交流が行われた。最初は言語や習慣の違いに戸惑っていた子どもたちも、サッカーを通じて互いのコミュニケーションを深めていき、この年代から海外で経験する意義を感じさせる内容であった。

 キャンプを終えた8月8日、ミラノのホテルで過ごす子どもたちのもとに本田がサプライズ訪問。11人の子どもたちを前に、本田はゆっくりと口を開いた。

プロになりたい人はいますか?

「まず、このミランキャンプに参加させてくれた両親の気持ちを理解すること、そして感謝することを忘れてはいけない。その上で、この貴重な体験からたくさんのことを学び吸収して成長してほしいと思います。ここに来たことを無駄にしてはいけないし、ここで得たことを自分の成長に変えてほしい」

 本田が初めて海外の地を踏んだのは小学4年生の時。今回、参加している子どもたちと同年代の頃に海外遠征でタイに行く機会を得た。「親にはとても感謝をしたし、良い経験をさせてくれたことに対して、プロになって必ず恩返しをしようと思った」と自身の経験から、まずは“感謝の気持ち”を持つ大切さを伝えた。

 そして、子どもたちにこう問いかけた。

「サッカーは好きですか? プロになりたい人はいますか?」

 手を挙げた過半数の子どもたちを見渡すと、「一番伝えたいことは、プロになりたいのであれば人よりも多く練習しなければいけないということ。世界で活躍している選手たちはみんなたくさん練習をしています。練習せずに上手くなった選手はいません」と、厳しい言葉を投げた。

「チームなどの練習だけでなく、自分でボールを蹴っている時間を含めて、一週間に何日練習していますか?」

「3日か4日」と答える子どもたちに対して、「僕は週7日練習していました。練習しなかった日を覚えていません。夏休みに宿題をどれだけ出されても毎日練習していました。君たちは当時の僕に勝てますか? 君たちと当時の僕はどっちがプロになれますか?」と言い募った。

「周りから『才能がある』とか『上手い』と言われている子たちは、才能があるのではなく、たくさん練習をしているはず。一度聞いてみてください。将来は誰もが競争する。サッカーの世界で競争する時に、週7日の練習と週1日の練習ではどっちが競争に勝てる? 練習日を増やすチャンスはみんなにあるし、自分自身がそれをきめることができるんです。もちろん、週に7日練習している選手は他にもたくさんいます。この世界に絶対はないので、絶対にプロになれるかは分からないけど、週7日練習すればプロになれる可能性は高くなります」

 さらに本田は、「ここにいる全員がプロになれるほど、サッカーの世界は甘くない」とシビアな現実を突きつけた。ハングリー精神を培ってほしいという願いを込めて発したこの一言が、子どもたちの心に火をつけたのは間違いない。

「この中で頑張った人には、日本代表になれるチャンスがあるのも事実です。競争する中で誰が一番頑張れるか。頑張らなければ何も得ることはできません。将来、サッカー選手を目指さなくても、必ずその世界には競争があります。全員が必ず、将来自分でお金を稼がなければいけない時が訪れます。大人になってから頑張るのではなく、今から競争をして頑張ってほしい」。本田自身、幾度となく競争を勝ち抜いてきた。今では日本代表の座を勝ち取り、ミランの10番を背負うまでに登り詰めたが、それでもなお、高みを目指して日々競争している。

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子どもの頃に夢見ていたミランの10番を背負った [写真]=Getty Images

 本田は20代最後の誕生日を迎えた今年6月13日、「時の流れの速さに対して怖さを感じています。やっぱり1秒足りとも無駄にできない」と自分に言い聞かせるように語っていた。それだけに、「一瞬一瞬の時間を大事にしてほしい」という子どもへのメッセージは重みをたずさえていた。

 本田はもう一度、子どもたちに問いかけた。

「プロになりたい人は? 自分の人生です。人に決められるのではないから自分で決めてください」

 話に熱心に耳を傾けていた子どもたち全員の手が挙がった。

 プロになりたいという明確な意志を示した子どもたちに「では、1日に何時間練習していますか? 多くても2時間くらいかな。答えは間違っていないけど、考え方は間違っています」と指摘。首を傾げる11人に「僕は24時間練習していました。どういうことかと言うと、ご飯を食べる時、寝る時、学校へ行って勉強する時も、『何かサッカーに結びつかないかな?』と思いながら、全てがサッカーの練習のうちだと思って、勉強もしていたし、ご飯も食べていたし、睡眠も取っていました。睡眠も食事もトレーニングの一つ。勉強することも、先生から色んなことを教わるのも、サッカーでプロになるための練習の一つだと思っていました。これを合計すると、2時間の練習も含めて合計で24時間になるんです」と丁寧に説明した。

 だが、普段の生活が全てサッカーとリンクしているという発想に至る子どもは少ない。もちろん大人であっても容易ではない。だからこそ本田は「何気なくご飯を食べてはいけない。何気なく寝ていてはいけない。何気なく友達と話していてはいけない。もっとサッカーが上手になるために何が必要なのかを考えるんです」と子どもたちの意識改革を促した。

 SOLTILOでは「自分で判断する、決断する」を理念のひとつに掲げている。本田の言葉を受けて、実行するかしないかは子どもたち自身が判断することだ。ただ、「これを実行できればプロになれる可能性は格段と高くなるはず。現に、才能があったわけではない僕がプロになれたんだから」と言い切る本田を見上げる子どもたちの目は輝きを放っていた。「できたら僕の話をノートに書いてほしい。忘れないようにノートに書いて、今日から実践してください」との呼びかけにも、力強くうなずいた。

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真剣な表情で話を聞く子どもたち、11人に向けて本田は熱く語りかけた ©HONDA ESTILO

もっとサッカーがうまくなりたいなら相手を喜ばせることをしないといけない

 真っ直ぐな想いを受け取った子どもたちが、今度は素朴な疑問をぶつけた。

「ミランで10番をつけてどんな気持ちでしたか?」と問われた本田は、「二つあります。一つは率直に嬉しかった。そして、もう一つは大きな責任感。ミランの10番、世界を代表する10番への大きな責任を感じました」と回答。入団会見時に「夢がひとつ叶った」と笑みを浮かべていたが、改めて10番への想いを明かした。

 そんなエースナンバーを背負う本田にも「喧嘩も強くて、いわゆるガキ大将のような子ども」だった時代があり、当時の監督に言われた一言が今でも心に残っているという。

『お前が私生活で人の嫌がることしかできないのであれば、サッカーでもお前には人の嫌がるパスしか出せないよ。人の嫌がることをしているということは、相手の気持ちが分かってないということだから。そうであれば、お前には相手がどういったパスをもらったら嬉しいか分からないよね?』

 初めての海外遠征中に言われたその言葉が、「サッカーがうまくなりたい」と強く願う小学4年生だった本田“少年”の心に響いた。「相手にとって嬉しいパスはどんなパスなのか。それを考えた時に私生活の中で相手の嫌がることはするのはやめようと。もっとサッカーがうまくなりたいなら相手を喜ばせることをしないといけないと思ったのを覚えています」と具体的なエピソードを交えながら、当時の心境を明かした。

 また「試合中に周りが見えない時があって、そういう時はどうしたら良いですか?」という質問には、「僕だって今でもあります」と答えた。信じられないといった表情を見せる子どもたちに、「サッカーはそんなに簡単に周りが見えるものではないから。何回も、何試合も経験してちょっとずつ見えてくるものです。それでもまだ見えない。大事なのは見えるようになりたいと思って毎日練習することです。簡単に見えるようにはならないので、今、見えないことをネガティブに捉えるのではなくて、ポジティブに捉えること。そのうち見えるようになってやる、というつもりで練習してください。ボールが来る前に周りを見る努力を毎回する。それでも、ボールばかりを見てそれを忘れてしまう。それでも繰り返し努力していくことが大事だと思う」とアドバイスを送った。

君たちの人生、でも競争は避けられない

 継続なくして成長はない。憧れのサッカー選手から激励を受けた子どもたちが、本気でプロを目指すのであれば行動に移すのみだ。

「何をやるべきかクリアになりましたね」と優しく話し掛ける本田。最後はこんなメッセージを送った。

「あとは、君たち次第です。帰ってゲームをして、プロになれないのも君たちの人生。本当にプロになりたいと思って週7日間練習して、将来日本代表になるのも君たちの人生。プロになるために競争するのか。違う道に行って、そこの競争で勝つのか。どういう人生を歩むのかも、君たちの人生。そこには、競争は避けられない。頑張ってください」

 厳しい言葉の裏側には、子どもたちへの期待と大きな愛情が溢れていた。本田はこれまでも「大きな夢を持ってほしい。可能性は無限だ」と繰り返してきた。まさに可能性は無限大。11人が今日抱いた熱い思いを胸に、それぞれの未来を切り拓いていってくれると期待している。


◆8月30日(日)SOLTILO×為末大学「ランニング教室」開催
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陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者、為末大さんが監修を務める「為末大学」ランニング部との共同イベントを開催

◆SOLTILOサッカースクール品川校、無料体験会開催
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