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スペインを制した2年目のモウリーニョ。黄金時代を目指すレアルの『真の強化方針』

2012.05.03

ワールドサッカーキング 2012.05.17(No.214)掲載]

文協力=ホセ・フェリックス・ディアス・フェルナンデス、翻訳・構成=高山港、写真=ムツ カワモリ

■モウリーニョが考える移籍市場の課題

 2節を残し、スペイン史上最多32回目のリーグ制覇を決めたレアル・マドリー。ジョゼ・モウリーニョも残留の意向を示す今、マドリーが来シーズンに向けて夏の移籍市場でやるべきことは明確だ。

 指揮官の頭にあるのは、まずは右サイドバックの強化だろう。セルヒオ・ラモスが完全にセンターバックに定着した今、マドリーの右サイドバックを担えるのはアルバロ・アルベロアただ1人。このポジションの補強が最も急務であることは誰の目にも明らかだ。次に必要なのは、シャビ・アロンソと協力して、攻撃のビルドアップと相手の攻撃にフィルターを掛ける仕事を効率的にできる即戦力。そして最後のミッションは、今シーズン、ほとんど戦力として機能していないリカルド・カルヴァーリョ、ヌリ・シャヒン、ハミト・アルティントップらの代わりとなる人材探しである。

 右サイドバックの強化でマドリーのフロント陣が考えている理想的な人材はチェルシーのブラニスラフ・イヴァノヴィッチである。対人に強いパワフルな守備だけでなく、攻撃参加から鋭いクロスを供給できる点をモウリーニョは高く評価している。

 セントラルMFのポジションに関しては、アスレティック・ビルバオのハビ・マルティネスの獲得でフロレンティーノ・ペレス会長とモウリーニョ監督の意見が一致している。しかし、ビルバオが設定しているハビ・マルティネスの違約金は約42億円。果たしてマドリーが、それだけの大金を投資するのかは疑問が残る。

 現有戦力の見直しについては現段階で不透明だが、モウリーニョがフロントに即戦力を求めていることは間違いない。余剰戦力の“見極め”はシーズン後に時間を掛けて判断することになるというのが大方の見方だ。

■今夏の去就が不透明になっている3人の主力

 マドリーの移籍市場での補強課題は以上の3点だが、今夏は主力の去就問題も浮上している。これまでクラブを支えてきたペペとゴンサロ・イグアイン、さらにカカーの3人がマドリーを去る可能性があるのだ。

 ペペに関しては、クラブ側が放出の意向を強く示しているという。今シーズン、何度となく汚いファウルとマナーの悪さでマドリーのファンからもひんしゅくを買っているペペに対して、首脳陣はこれ以上擁護することはできないと考えているのだ。だが、モウリーニョがペペを信頼していることも事実である。首脳陣がモウリーニョの意思を無視してまでペペの放出に踏み切るのか。この夏の注目ポイントの一つだ。

 一方、イグアインのケースはペペとは大きく異なる。クラブはイグアインが来シーズンもマドリーでプレーしてくれることを強く望んでいるが、自身に正当な評価がされていないという不満を抱くイグアインが退団を示唆しているのだ。

 待遇面を見てもその格差は明らかだ。イグアインの年棒約4億円に対し、クリスティアーノ・ロナウドの年棒はその3倍の約12億円。さらに、今シーズンの後半戦でレギュラーポジションをカリム・ベンゼマに奪われたことも、新天地を求める気持ちが強まった大きなきっかけだろう。とはいえ、優勝を決めたビルバオ戦でも証明されたとおり、モウリーニョにとってイグアインが貴重な選手であることに変わりはない。普通にゲームに出ていればシーズン30ゴールを挙げられるような選手を簡単に手放すことは考えにくく、仮に放出があるとすれば、イグアインと同等の得点能力を持った選手を確保できた場合のみ。そこで名前が挙がってくるのが、マンチェスター・シティのセルヒオ・アグエロである。

 昨夏、一度はマドリー入りが決まり掛けたアグエロの獲得にメドが立つようなら、今シーズン終了後、イグアインが新天地を求めるというシナリオも現実味を帯びてくる。既にイグアインの代理人は、マンチェスター・シティやチェルシーからオファーがあったことを認めている。イグアインが現状に不満を抱いていることは間違いなく、クラブは何らかの解決策を見いださなくてはならない。同時にイグアイン自身も、C・ロナウドやベンゼマがいる今のマドリーで、絶対的スターになることはほぼ不可能だと気づいているはずだ。

 さらに、今シーズン、復調の兆しを見せたカカーの去就も注目を集める。クラブが彼を保有するために掛けているコストは約10億円の年俸を含め18億円超。費用対効果の面での大きなマイナスは否めず、首脳陣は水面下でカカー売却に動いているという。ここで急浮上したのが古巣サンパウロへの復帰話。ブラジルサッカー界に残された“最後の大物”と言われるルーカスの譲渡を含めた条件で交渉が進んでおり、退団は決定的とも伝えられている。

 モウリーニョ政権2年目で見事ビッグタイトルを獲得したレアル・マドリー。結果が示すとおり、チームの完成度は高まったが、宿敵バルセロナを上回り、黄金時代を築くためには更なる戦力の上積みが求められる。

「まずは優勝を祝おう。しかし、明日以降もしっかりと働いていかなければならない。なぜなら来シーズンも厳しいものになるし、今シーズンもあと2試合残っているからだ」と語るモウリーニョ。補強の権限を持つ“スペシャル・ワン”はいかなるプランを携え、3年目のシーズンへと臨むのだろうか。

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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING @SoccerKingJP』の編集長に就任。
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