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【インタビュー】ベッカム「もう少しアメリカに残って、サッカーの成長に貢献したい」

2012.03.19

ワールドサッカーキング 2012.04.05(No.210)掲載]
かつて、“銀河系軍団”の一員だったデイヴィッド・ベッカムは、サッカー界を代表するスターとして君臨していた。その後、アメリカに渡り、代表から遠ざかっても彼の魅力は色あせない。それどころか、故郷で開催される“夏の祭典”への出場がうわさされる今、ベッカムは再びサッカー界の話題の中心として脚 光を浴びている。永遠のスターが近況を語ってくれた。
ベッカム

インタビュー・文=クリス・ヘザラル 翻訳=田島 大 写真=フォトスポーツ

 リオネル・メッシやクリスチアーノ・ロナウドがスーパースターとしての地位を築く以前、デイヴィッド・ベッカムの存在抜きにサッカーは語れなかった。少なくとも、2007年に彼がアメリカに渡る決断を下した時、ヨーロッパサッカー界全体が一種の“喪失感”を味わったことは紛れもない事実だろう。

 ビッグネームの移籍の話題がほとんど聞こえてこなかったこの冬、ベッカムの「ヨーロッパ帰還」のうわさは各国の紙面を大いににぎわせた。結局、パリ・サンジェルマンへの移籍や母国のクラブへの復帰は実現しなかったものの、世界中のファンが彼の存在の大きさを再認識するには十分な出来事だったと言える。

 渡米から5年、LAギャラクシーで同国のサッカー人気向上に務めてきたベッカムにとって、同クラブの契約最終年、しかも年間王者に輝いた昨シーズンはキャリアの一つの節目だった。本人も「この地を離れるべきか?」、「他のことをしようか?」と真剣に悩んでいたと打ち明けている。チームのこと、自身のキャリアのこと、大切な家族のこと……結論に至るまでには様々な葛藤があった。

 ベッカムは最終的にアメリカに残る選択をした。それでも、彼の言葉の端々からは、マンチェスター・ユナイテッドやレアル・マドリーでプレーしていた全盛期の頃と全く変わらない情熱がひしひしと伝わってくる。36歳になった今もサッカーに対する情熱は、何ら変っていないのだ。

 今年は大きな目標がある。自ら招致活動に携わってきたロンドン・オリンピックへの出場は、彼に「もっとプレーしたい」と思わせる大きなモチベーションとなっているようだ。キャプテンとして母国のオリンピック代表チームを率いたベッカムが、地元ロンドンで躍動する。その姿を期待せずにはいられない。

引退は考えなかった、意識さえしていない

やあ、デイヴィッド。てっきり、1月の移籍市場でパリSGに移籍するものだと思っていたけど、なぜヨーロッパに戻らず、LAギャラクシーへの残留を決めたの? 難しい決断だったはずだけど。

ベッカム ここで幸せだからさ。ヨーロッパの複数のクラブから声を掛けられたけど、僕はここでいいんだ。確かに大きな決断だった。家族、子供たち、ギャラクシーでのプレーなど、いろいろなことを考えたよ。でも、僕はここでプレーするのが好きだし、残るのが一番だという結論に至ったのさ。正しい決断だったと信じている。

パリSGの他に、どんなクラブから誘いを受けていた? イングランドではトッテナムや古巣のマンチェスター・Uへの移籍のうわさも挙がっていたけど。

ベッカム クラブ名は明かしたくない。興味を示してくれたクラブが2つほどあったとだけ言っておくよ。魅力的なオファーだったし、オファーをもらえて本当にうれしかった。でも、僕はアメリカに残ることにしたんだ。

LAギャラクシーに残留することを決めるまでには、かなりの時間が掛かったよね。決断するまで、どんなことを考えていたの?

ベッカム 昨シーズンの終わり頃から、いろんな人に『いつ決断するんだ?』とせかされたよ。でも、僕には時間が必要だった。正しい決断をするためにも、心と体を休ませる必要があったんだ。移籍を選択肢に入れた理由は、ギャラクシーと結んでいた5年契約の最後のシーズンに優勝することができたからなんだ。本当に素晴らしい思いを味わった。そういう終わり方をすると、「この地を離れるべきか?」、「他のことをしようか?」と考えてしまうものなのさ。だけど、自分の人生を考えると、僕が一番大切にしなくちゃいけないのは家族と子供たちだった。子供たちはロサンゼルスでの暮らしを満喫していたし、それを大事にしてあげたいと思ったのさ。

ベッカム
LAギャラクシーは昨シーズンのMLSカップを制し、通算3度目の年間チャンピオンに輝いた

でも、他の選択肢も真剣に検討したんだろう?

ベッカム もちろんさ。36歳の自分にオファーしてくれるクラブがあるんだから、真剣に考えなくちゃ失礼だよ。でも過去5年間、僕はギャラクシーでのキャリアを満喫してきた。特にブルース・アリーナが監督に就任してからの3年間は充実していた。

君が入団した頃と比べてクラブは変わった?

ベッカム いろいろなことが変わったね。僕は5年前、この国のサッカー人気の向上に貢献すると誓ってここにやって来た。そして昨シーズン、いや、もしかするとここ2年ほどかな。アメリカのサッカーが成長していると実感することができたのさ。世間のサッカーを見る目は変わったと思う。この国もサッカーで盛り上がるようになったのさ。だから、もう少しその変化を見届けたい。

君はこれまでに十分な成功を収めている。引退してのんびり暮らそうとは考えなかった?

ベッカム それは考えなかった。僕はプレーすることを愛してしまっている。だから引退は考えなかったね。引退のうわさもあったようだけど、それは周りの人が話していることさ。実際にはまだ意識さえしていない。

君は「フットボール」ではなく、「サッカー」に恋をしてしまったようだ。アメリカに渡った時、こうなることを想像できた?

ベッカム ここでの生活を楽しむ確信はあった。それに、昨シーズンは本当に特別な1年を送ることができた。優勝できただけでなく、プレースタイルやピッチ内外での振る舞いなど、仲間たちの変化を目の当たりにできたからね。若い選手たちが責任を持ってプレーし、勝利に貢献してくれるようになった。そういうことはこれまでになかった。だから、優勝する前から、特別なシーズンだと感じていた。シーズン中には言えなかったけど、今までとは違う体験ができたんだ。MLSのプレーオフ決勝前夜も、絶対に勝てると感じていた。そして実際に勝つことができた。まだまだこの気分を味わっていたいと思う。

アメリカのサッカー人気をもっと高められると思う?

ベッカム できたらいいね。僕にとってサッカーは世界一のスポーツだ。ただ、アメリカだけが例外なんだ。だからこそ、この地でもサッカーの地位を高めたい。もう少しここに残って、サッカーの成長に貢献したいんだ。

<続きは ワールドサッカーキング 2012.04.05(No.210)でお楽しみください>
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