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イブラヒモヴィッチの代役マキシ・ロペスはミランの救世主になれるか

2012.02.25

ワールドサッカーキング 2012.03.01(No.208)掲載]
 この冬、カルロス・テベス獲得を望んでいた人々は失意の声を漏らした。ミランがテベスではなく、マキシ・ロペスを獲得したからだ。しかし今、スクデット争いのカギを握っているのは、そのマキシ・ロペスなのだ。

 Text by Roberto FUSARO

■殴打事件をきっかけに高まったマキシ・ロペスの存在価値

 冬の移籍市場が閉まった時点で、イタリアのメディアはミランの補強にこぞって「ノー」を突きつけた。ミランがカルロス・テベスの獲得に動いていたのは事実だ。アドリアーノ・ガッリアーニ副会長はテベスの静養先であるブラジルのリオ・デ・ジャネイロに飛び、本人の合意を取りつけて、マンチェスター・シティとの交渉も具体的な段階まで進んでいた。ところが、交渉成立直前でこの話は立ち消えになり、その代わりにやって来たのがマキシ・ロペスだった。

 今のミランのFW陣は充実している。ズラタン・イブラヒモヴィッチが核となり、そのパートナーの座をロビーニョとパトが争っている。また、急成長中のステファン・エル・シャーラウィも若手好きのマッシミリアーノ・アッレグリの期待に応えている。現在は心臓の病気で療養を余儀なくされているアントニオ・カッサーノもいずれ復帰する(もっとも、チャンピオンズリーグの登録リストからは外れたが)。あのフィリッポ・インザーギがほぼ構想外で、一度は「移籍先のクラブを探すように」と通告されるぐらいだから、“豪華すぎる陣容”と言って差し支えないだろう。ミラン番の記者たちは、ロビーニョやパトを追い越して絶対的なレギュラーになる可能性が高いテベスならともかく、控えの層をこれ以上厚くする意味はないとして、マキシ・ロペスの獲得を批判したのである。

 だが、その状況はすぐに変わってしまった。2月5日のナポリ戦で、イブラヒモヴィッチが相手DFに平手打ちを食らわせて一発退場となり、3試合の出場停止処分を言い渡されたのだ。特に、2月25日に予定されているユヴェントス戦、スクデット争いを大いに左右するであろう大一番を、ミランはエース抜きで戦わなければならなくなった。

 ミランのFW陣は頭数こそそろっているが、前線でポストプレーをこなせる重量級FWはイブラヒモヴィッチしか存在しなかった。マキシ・ロペスを獲得していなければ、パトの負傷に加え、ロビーニョ、エル・シャーラウィといった“軽量級FW”を並べて戦わなければならなかったところだ。

 当面の話はともかく、チャンピオンズリーグ再開に伴う今後の過密日程を乗り切る上でも、イブラヒモヴィッチの代役となる重量級FWは絶対に必要となる。ナポリ戦での“殴打事件”をきっかけに、マキシ・ロペスに対する人々の見方は180度転換した。

■カターニアでの2年で大きな自信を得たマキシ・ロペス

 マキシ・ロペスとしては、加入早々にビッグチャンスが訪れたことになる。カターニアというプロヴィンチャ(地方クラブ)からの加入とはいえ、20歳にしてバルセロナに引き抜かれ、一時は「バルサの将来を担う大型新人」と騒がれたFWだ。その後は不運が重なり、ロシアやブラジルでプレーすることを余儀なくされたものの、2009−10シーズン途中にカターニアに加入して以来、2年間にわたり不動のエースに君臨したことで、トップレベルでプレーする自信も得た。

 マキシ・ロペスはミランへの加入会見の席で、次のように抱負を述べている。「自分は世界レベルのチームでもやっていけると信じている。だが、言葉を並べるだけでは意味がない。監督からチャンスを与えられた時に、それを証明するつもりだ」

 イタリアの厳しいディフェンスを独力でこじ開けることもできるし、懐の深いポストプレーから決定機を演出することもできる。大柄だがパワーに頼るだけではないし、チームのために体を張ることもいとわない。前線で孤立しがちだった弱小カターニアで孤軍奮闘して、あれだけの実績を残したのだから、チームメートのレベルが格段に上がり、ゴールチャンスの数も増えるミランでは、さらなる活躍も期待できるだろう。

 リーベル・プレート、バルサと華やかな出世街道を歩みながら、その後は“陽の当たらない場所”でのプレーを強いられてきたマキシ・ロペスが、キャリアを左右するミランでの終盤戦に向けて、どのような意気込みで臨むのかは容易に想像できる。「現在のコンディションは100パーセント」と断言しているだけに、かなりの期待を寄せていいのではないだろうか。

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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING @SoccerKingJP』の編集長に就任。
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