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【インタビュー】マリオ・ゴメス――ピッチに舞う、情熱のマタドール

2012.02.05

ワールドサッカーキング 2012.02.16(No.207)掲載]
ブンデスリーガで首位争いを演じるバイエルンにあって、マリオ・ゴメスの決定力は不可欠な武器だ。第18節終了時点、チーム内で唯一2桁得点をマークしているゴメスは、チームを栄光へと導けるのか。ピッチ上で見せる彼の「舞い」が、バイエルンの命運を左右する。
ゴメス

インタビュー・文=ピーター・クラーク 翻訳=阿部 浩 アレクサンダー

 現在、ブンデスリーガで最も輝いているストライカーの一人がマリオ・ゴメスだ。リーグ戦では第18節終了時点で16ゴールと驚異的な得点力を見せつけ、チャンピオンズリーグ(以下CL)でも6得点の活躍ぶり。全大会でタイトル獲得をもくろむバイエルンにとって、紛れもなく命運を握る存在となっている。

 シュトゥットガルトから鳴り物入りで移籍してきた2009-10シーズンには、出場機会に恵まれない苦しい時期もあった。ポジションを争ったトマス・ミュラーが結果を出し続ける一方、持ち前のダイナミックなプレーは空回りを続け、一時はバイエルンへの移籍が失敗だったと囁ささやかれもした。だが、ゴメスは自らの復活を信じていた。昨シーズン中盤から得意の固め取りを見せ始めると、ゴールの量産体勢に入り、初のリーグ得点王を獲得。勝利を義務付けられたチームで絶対的なエースとして認められる存在にまで一気に上り詰めたのだ。 欧州で最も恐れられるFWを目覚めさせたものとは何か。スペイン人の血をひき、「マタドール(=闘牛士)」と呼ばれる男が、キャリアのピークを迎えつつある今、自らを語る。

FWとしてプレーするにはベストな年齢かもしれない。

今シーズンはリーグ戦で16試合に出場して16ゴールと、昨シーズンを上回る活躍を見せているね。ゲルト・ミュラーが持つシーズン40ゴールの記録を更新できそうな勢いだけど。

ゴメス 今シーズンはすべてが順調だ。でも、僕は個人の記録よりもチームのタイトルを望んでいるんだ。たとえ、僕が40ゴールを挙げても、チームがリーグ3位だったら何の意味もない。それに、40ゴールというのはとてつもない記録だ。1シーズン30ゴールでさえ達成したことがない僕が目標とする数字ではないよ(笑)。

ストライカーには何が何でもゴールを目指す姿勢が大切だと思うけど、君にもそういう考えはある?

ゴメス ストライカーである以上、エゴイスティックな部分は必要だと思う。でも、僕は自分のことばかり考えるタイプじゃないんだ。

君は、この前のブレーメン戦(第15節、4-1でバイエルンが勝利)でアルイェン・ロッベンに2度、PKを譲っているよね。これもチームのためを考えてのことなのかな?

ゴメス 僕はPKでゴール数を伸ばそうなんて考えないし、そのためにチームメートと争いを起こすのも嫌なんだ。それにPKは、確実に決めることのできる選手が蹴るべきだと思っているしね。

昨シーズンは公式戦で43得点を記録した。今シーズンも公式戦24試合で23得点を挙げている。キャリアのピークにあると言ってもおかしくない数字だよね。

ゴメス 確かに今はトップコンディションにあると感じている。経験を重ね、スランプから復活する方法を学び、冷静さだって増している。僕は今26歳だけど、FWとしてプレーするにはベストな年齢なのかもしれない。

確かに君はここ数年で精神的に強くなった。バイエルンに来て苦しみを味わい、それを乗り越えることができたからなのかな?

ゴメス 逆境で鍛えられたよ(笑)。実力によって、それまで批判的だった連中を黙らせることができたしね。選手なら誰だってファンのブーイングなんて聞きたくない。だから僕は彼らを納得させようと、一生懸命に練習してみんなを納得させる結果を出したんだ。

君の我慢強さやひたむきさは、どうやって身についたものなの?

ゴメス 間違いなく父親譲りだね。僕の父は外国人労働者としてスペインからドイツへとやって来た。そして、塗装工で独立するまで必死になって働いた。言葉の問題を始め、様々な障害を克服しながらね。僕はそんな父の背中を見て育った。だから、懸命に働くということの本当の意味を理解しているつもりだよ。サッカー選手だろうが労働者であろうが、仕事への情熱に違いはないはずだ。

君がバイエルンに来た直後はルイ・ファン・ハール前監督との“戦争”にも直面したね。この戦いに勝利したことも君にとっては大きかった?

ゴメス もちろんさ。バイエルンに加入した当初、ファン・ハールは僕を全く起用しようとしなかった。だけど、僕は自分の力で彼の考えを改めさせたんだ。

君がバイエルンに加入した時、アタッカー陣にはミロスラフ・クローゼ、ルーカ・トーニ、イヴィツァ・オリッチ、ミュラーという実力者がそろっていた。最終的にファン・ハールが自らの考えを改め、君をエースに据えた要因は一体何だったと思う?

ゴメス 2年目のキャンプでファン・ハールから、「お前は第4FWだ」と言われた。その時、すぐに移籍を考えたんだ。実際、リヴァプールへの移籍が決まりかけていたしね。でも、(カール・ハインツ)ルンメニゲCEOと(ウリ)ヘーネス会長に説得され、僕はクラブに残ることにした。2人からは「君の能力を信じている。君はクラブにとってとても重要な選手になる」と言われたよ。この言葉によって、僕は気持ちを入れ替えられたんだ。それからはトレーニングに集中して、どんなに少ないチャンスであっても結果を残してやろうと考えた。その内、出場機会が増えていって、周囲も認めてくれるようになったんだ。

<続きは ワールドサッカーキング 2012.02.16(No.207)でお楽しみください>

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