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南米最優秀選手に選ばれたネイマール。モヒカンヘアの天才はスペインに渡るのか

2012.01.02

 2012年の始まりとともに幕を開けた冬の移籍市場。ケガ人を抱えたチームや、不振に陥っているチームは後半戦の戦いに備えて補強の準備を進めている。レアル・マドリードを始めとする上位陣にも、2011年度の南米最優秀選手、ネイマールの獲得を筆頭としたうわさは絶えない。この1月にどのような動きがあるのか、スペイン人記者が移籍市場を考察する。


文/翻訳協力=ホセ・ルイス・カルデロン/オフィス・アドオン、協力=EIS

■モヒカンヘアの天才はこの冬スペインにやって来るのか

 昨シーズン、FW不足に陥ったマドリーが大物FWの獲得に乗り出し、エマニュエル・アデバヨールを獲得したことは記憶に新しい。今シーズンも2強にそのような動きがあるのだろうか。

 現時点では、マドリー、バルサともに戦力は十分に整っていることから、大きな動きはないと予想される。だが、そんな中で消えることのないうわさは、やはりブラジルの新星ネイマールの獲得だ。今シーズン開幕前にもバルサ、マドリーの両クラブが獲得に動いていると報じられ続けたネイマールはサントスに残留し、12月のクラブ・ワールドカップに出場することを選んだ。しかし、日本で行われたこの大会が彼にとってサントスでの最後の大会となる可能性はまだ消えていない。

 マドリーの強化部門は10月にブラジルを訪れてネイマール獲得への足固めを行った。というのも、ネイマールの肖像権を扱うマネージメント会社の経営者は、かつて銀河系軍団の一員としてマドリーでプレーしたロナウドなのだ。マドリーはロナウドを仲介人としてネイマール獲得を有利に運ぼうとしている。

 ロナウドがマドリーのフロレンティーノ・ペレス会長と密接な関係にあることは周知の事実だ。当時インテルでプレーしていた彼を獲得したのはペレスであり、ミランで全盛期にあったカカーとのトレード話が持ち上がった時にも、ピークを過ぎたロナウドが体重増に苦しんでいたにもかかわらず、ペレスがその交渉を打ち切った。2人の強固な関係は現在も続いており、やはり元銀河系軍団の一員であるSDのジネディーヌ・ジダンと同じく、マドリーにおいてクラブ大使のようなポストに就くという話もあるほどだ。

 そんなロナウドを介し、既にネイマールとマドリーが2015年までの契約を結んでいるとも報じられている。サントスのルイス・アルヴァロ・リベイロ会長はこれらの報道を一切否定しているが、かねてから欧州でのプレーを希望しているネイマールをいつまでもサントスに置いておくことができないことは、リベイロ自身が一番分かっていることだろう。2005年にクラブのアイドルだったロビーニョをマドリーに強引に引き抜かれた時から、サントスとマドリーの間には遺恨が残ってはいるものの、マドリー側がサントスの希望する金額を支払うことができれば、モヒカンヘアの天才ドリブラーがマドリッドにやって来る可能性は十分にある。

 だが、ここで肝心なのは、モウリーニョが1月の段階でネイマールを必要とするか否かということだ。チーム状態が上向きになっている今、重度のケガ人がそれほどいない現状では新戦力の必要性は低い。モウリーニョがネイマール獲得を強化部に求めるとすれば、攻撃の中心選手に長期離脱者が出ることになった場合のみではないだろうか。

■ブロンドの貴公子の2年ぶりの母国復帰はなるか?

 リーガの上位陣に長期離脱者が少ないこともあって、スペインでは冬の移籍市場を巡る報道はそれほど活発化していない。それでもいくつかの噂はある。11月にべジクタシュとの契約を解除したグティのスペイン復帰だ。マドリッドに住んでいる家族との生活をグティ自身が望んでいることから、マドリッドを本拠地とするヘタフェへの移籍がささやかれている。また、彼の生まれ故郷であるトレホンにほど近いバジェーカスを本拠地とするラージョ・バジェカーノのサポーターも、グティの獲得を熱望している。ただ、ラージョは資金不足の渦中にあるため、彼の給料を支払うのは困難と見ていい。

 獲得を狙っているとの噂もあるマラガなら資金に不自由しないが、マラガのマヌエル・ペジェグリーニ監督とグティとの関係が良くないため現実味は薄い。ペジェグリーニがマドリーの監督を務めていた2009−10シーズン、グティはマドリーで最後のシーズンを過ごした。彼は当時3部のアルコルコンに0−4で大敗したコパ・デル・レイの試合でプレーすることを拒否したため、その後は数カ月にわたって出場機会が与えられなかった。マラガはサンティ・カソルラという優れたゲームメーカーを抱えているだけに、わざわざトラブルメーカーになりかねないグティをチームに迎えることはないだろう。マラガのGMで、現役時代にマドリーでグティの面倒を見ていたフェルナンド・イエロも、現場指揮官が望まない補強は行わないはずだ。

 となると、やはりグティはヘタフェにやって来ることになるかもしれない。しかし、バルサを完封した時のようにコンパクトな守備陣形を徹底させるルイス・ガルシア監督は、献身的な選手を好む指揮官である。“永遠の未完の大器”とも呼ばれる気まぐれなグティを中心にチームを作る可能性は低い。仮にヘタフェにやって来たとしても、スーパーサブとして起用されることになるのではないだろうか。

 国外からの復帰という話題では、ユーロ2008、2010年ワールドカップの優勝メンバーであるスペイン代表DFジョアン・カプデビラの名前も挙がっている。今夏、ビジャレアルからベンフィカへと移籍したカプデビラは、シーズン開幕前から不可解なまでに冷遇され、これまでプレー機会を与えられていない。彼の代理人は、シーズン開幕直前までベンフィカからの脱出先を探したものの、ベンフィカがカプデビラの移籍金を800万ユーロ(約8億4000万円)に設定したため、獲得を希望していたナポリ、ユヴェントスといったセリエAのクラブも最終的には諦めることとなった。チャンピオンズリーグ(以下CL)の登録メンバーからも外されていることから、冬の移籍市場で彼の獲得に名乗りを上げる強豪クラブは欧州にいくつかあるかもしれない。スペイン国内では、エスパニョールがカプデビラの移籍先候補と報道されている。

 しかしながら、エスパニョールにはディダク・ビラという不動の左サイドバックがいる。彼はカプデビラのように堅実でクレバーなタイプで、ジョルディ・アルバとともに次代のスペイン代表を担うスター候補生。ベンフィカが現在の移籍金を下げない限り、エスパニョールがカプデビラ獲得に動く可能性は低いと言わざるを得ないだろう。

■ビジャレアルはニウマールら主力流出の可能性も

 前述のように、冬の移籍での獲得の話題はそれほど多くはないが、対照的に放出に関する報道は多い。その代表格は、ビジャレアルのニウマールだ。既にCLの試合でプレーしていることから、CLに参戦中のクラブの名前は多くは挙がっていないものの、プレミアリーグの数クラブが獲得を希望しているようだ。これまで巧みな補強と育成によってリーガ上位の地位を守ってきたビジャレアルは、不況の影響からクラブ経営が悪化し、主力選手の放出が避けられないほどの状況になっている。今夏カソルラを放出したのに続き、ニウマールの売却が今冬に行われる可能性は否定できない。

 ちなみに、ユヴェントスが狙い続けていたビジャレアルのジュゼッペ・ロッシの獲得は、ひとまず今冬は見送られることになりそうだ。10月下旬にロッシが右ひざのじん帯を損傷し、全治約6カ月と見込まれているため、移籍があるなら来夏以降になるだろう。

 これまでの報道を整理する限り、私は比較的に落ち着いた冬になると見ている。ただ、ネイマールの去就、グティの復帰、ニウマールの動向など話題は多い。後半戦の巻き返しを狙うクラブはもちろん、上位陣にも動きがないとは言い切れない。いつ、どんなことが起こるのか分からないのがサッカーの世界である。我々があっと驚くような移籍が成立しても不思議はないのだ。

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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(@SoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではCover&Cover Interviewページを担当。

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