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クラシコ迫る、雪辱を期すモウリーニョ・レアルは“バルサ攻略法”を世界に示せるか

2011.12.07
文/翻訳協力=ホセ・ルイス・カルデロン/オフィス・アドオン、協力=EIS

■クラシコの結果がシーズンの行方を占う

 全世界の注目を集めるビッグマッチのキックオフが迫る。12月11日、レアル・マドリードのホーム、サンティアゴ・ベルナベウでクラシコが開催。次回がシーズン終盤の4月22日となるため、目前に迫ったクラシコがタイトルレースの流れを決定づける重要な一戦となることは間違いない。

 ここ数シーズン、リーガのタイトルはバルセロナとレアル・マドリードが分け合ってきた。そして、優勝したチームはクラシコで必ず好成績を残している。ジョゼップ・グアルディオラ監督が就任した2008ー09シーズンからリーグ3連覇中のバルサは、この間のリーガにおけるクラシコで5勝1分けと完勝。一方のレアルも、2連覇を達成した06ー07、07ー08シーズンには3勝1分けという好結果を残した。クラシコが単なるダービーではなく、シーズンの行方を占う大一番であるということを、このデータは明確に示している。

 さて、今シーズンのクラシコでは、どのような戦いが展開されるのだろうか。昨シーズン、大きな衝撃をもたらした“5ー0”のようなバルサの圧勝劇か、それともジョゼ・モウリーニョ率いるレアルがバルサをねじ伏せるか。今シーズン開幕前のスーペル・コパでは、互いに点を奪い合う拮抗した展開となった(第1戦は2ー2、第2戦は3ー2でバルサが勝利)。プレシーズンでの準備の遅れや負傷者の続出によってバルサが本来の姿ではなかったとはいえ、あの2試合で良いプレーを見せていたのは敗れたレアルのほうという意見も少なくない。

 バルサの華麗なパスサッカーの特長は、ボールを持っていない選手が素早くスペースに入り、連動したパスの出し入れをスムーズに行っている点だ。しかし、バルサよりも早く相手の守備者がその動きを把握し、ボールを持つ選手を潰しにいくことができれば、バルサの美しいパスワークを遮断できる割合が高まり、高い位置でボールを奪い返すことができる。自慢のパスワークを封じられてしまえば、たとえバルサでも試合をコントロールすることは難しいし、そうなったとき、バルサはこれまで組織力によってカバーされていた弱点を露呈するかもしれない。

 バルサの弱点とは、守勢に回った状態での守備が得意ではないということだ。バルサの守備の大半は、相手チームに対して数的有利な状況で行われる。圧倒的なポゼッションとハイプレスを駆使して試合を支配するバルサに対して、相手が人数を割いてじっくりと攻めることは極めて難しく、おのずと、手数を掛けずにカウンターで勝機を見いだす方法に限定されてしまう。バルサの強さのポイントは、相手よりもボールをつなげる高い連動性によって、その状況を容易に生み出せることにある。だが、相手がバルサを上回る連動性を発揮したとしたらどうか。バルサがボールを持てなくなり、自陣での守備の時間が長くなれば、普段とは異なる状況から綻びが生じる可能性がある。

 しかし、グアルディオラ率いるバルサは、ほぼすべての公式戦で相手を上回るポゼッションを記録してきた。昨シーズンのチャンピオンズリーグ決勝でマンチェスター・ユナイテッドが実践したように、高いエリアからのハイプレッシャーを試みたチームはあるが、選手の体力的に15分続けるのがやっとというところだった。だからこそ、バルサは無敵の強さを誇ってきたと見ることもできる。

 だが、仮にマンチェスター・ユナイテッドが仕掛けたようなハイプレッシャーをより長く持続できれば、バルサは苦しい状況に立たされるのではないだろうか。それを実現するために必要なのは、人並み外れた精神力でもなければ、走り続けるための体力でもない。必要なのはボールを奪ってから、そのボールをすぐに奪い返されないだけの攻撃を展開する、技術と連動性を持つことだ。

 そういう意味で、レアルはその条件を満たすのに最も近いチームと言えるだろう。速攻は既に世界最高のレベルにあり、ポゼッションを重視したとしても、クリスティアーノ・ロナウド、メズート・エジル、シャビ・アロンソの存在をもってすれば、高いレベルでポゼッションを維持できる可能性は高い。

■進化を続けるバルサの新たな武器

 しかし一方で、レアルの試合を見る限り、バルサを倒すために必要な“相手陣内で攻撃を展開する”プレーがあまり見られないことも事実だ。これまでレアルはリーガでの14試合中、実に11試合で3ゴール以上を奪って勝利している。しかし、そのゴールのほとんどは自陣からの高速カウンターで奪ったもの。相手陣内でボールをつなぎ、ゴール前に相手を封じ込め、その守備網をも揺さぶって崩し切るという、バルサのような攻撃はほとんど展開されていない。通常の相手であれば、それで問題はないが、バルサにポゼッションを許し、主導権を渡してしまうような戦い方では、得点を奪われる危険性のほうが高くなってしまう。

 今回のクラシコは、“バルサの攻略法”というテーマに焦点を当てることができるのではないかと思う。それは、バルサの攻撃をどう阻むかではなく、バルサに対していかに攻めるか、ということで、よりシンプルに言えば、バルサにはない強力なカウンターを武器とするレアルが、加えてポゼッションサッカーを使い分けることができれば、彼らはバルサを超えることができるのではないかということだ。

 だが、既にグアルディオラも“バルサ攻略法”に対する先手を打っている。今シーズンのバルサが獲得したセスク・ファブレガスとアレクシス・サンチェスは、パサーとドリブラーという違いこそあれ、いずれも攻撃を縦に加速させるスペシャリスト。そこに、バルサのサッカーに“カウンター”という選択肢を加えようとするグアルディオラの構想を読み解くことができる。

 実際、今シーズンのバルサは昨シーズン以上に、ラインを高く上げてきた相手の最終ライン後方のスペースを積極的に突いき、ゴールチャンスを増やしている。セスクとアレクシス・サンチェスの2人が直接的に絡まなくても、速攻の場面が増えてきているし、これはカウンターが選手の組み合わせだけによるものではなく、チーム戦術として機能していることを意味するのではないだろうか。

 2年目のモウリーニョがレアルのスタイルを進化させているのと同様に、王者バルサも自らのスタイルを革新している。クラブ・ワールドカップ来日前のバルサが迎える大一番。日本のサッカーファンにとって、ますます目の離せないクラシコになることは間違いない。

◇クラシコに向けての両チーム
・モウリーニョ監督、チームに“クラシコ”かん口令
・主力不在のバルサが4ゴールで圧勝…ミランは敵地で引き分け

◇個人賞レースでもクラシコが展開
・メッシ、シャビ、C・ロナウドがFIFAバロンドール最終候補に
・最優秀監督の最終候補にバルサのグアルディオラら3名が選出

【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(@SoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではCover&Cover Interviewページを担当。

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