[写真]=ムツ カワモリ
バルセロナは今シーズン、３−４−３の新布陣を採用して攻撃的なスタイルをより進化させたが、このシステムは主力ＤＦを欠いたことによって生まれた“けがの功名”でもある。
シーズン序盤からプジョルとピケが負傷により戦線を離脱。グアルディオラ監督は最終ラインの枚数を減らし、中盤にパスの受け手を増やすことでさらにポゼッションを高める３−４−３を本格導入した。中盤の人数が増えたことにより、高いポゼッションを生かした攻撃により磨きがかかり、結果的にこれまで以上の攻撃的なスタイルを確立したチームはリーグ戦15試合で47得点をマーク。圧巻のゴールラッシュを披露し、大きなインパクトを与えている。
このシステムが期待以上の成果を生んだ背景には、セスクの加入やチアーゴの台頭による中盤の選手層アップによるところが大きい。とりわけ、セスクは瞬く間にチームに順応し、開幕直後から持ち前のダイナミックなプレーを存分に披露。中盤ダイヤモンドの先端でチャビやイニエスタと息の合ったパスワークを見せている。下部組織時代のチームメートであるメッシとの連係も抜群で、「同じ教育を受けてきたから分かり合える」というセスクの言葉どおり、一方が突破を図れば、もう一方は中盤に下がってフォローに回るというスムーズな縦の関係を確立し、ここまでメッシが得点ランクトップタイの17ゴール、セスクは同６位タイの７ゴールを記録している。
一方、今シーズンからトップチーム所属となったチアーゴもイマジネーションに富んだトリッキーなプレーを武器に、ここまで９試合に先発出場し、１ゴール２アシストを記録。チャビがベテランの域に達し、イニエスタがコンディション不良に苦しむ中、セスクとともに新時代の到来を予感させるようなプレーを見せている。
さらに、前線ではＢチーム所属のクエンカが４試合に先発出場するなど、アレクシス・サンチェスやペドロが離脱した穴を埋める活躍を披露。ルーレットなど華麗なテクニックを駆使したドリブルで、バルサのサイド攻撃にアクセントを加えている。
2011-12シーズン、バルサの前半戦５大トピックを挙げるなら、①「３−４−３システムによる攻撃サッカーの進化」、②「セスクとメッシの共演で生まれた新たな攻撃オプション」、③「チアーゴの主力定着に伴うチャビの代役問題の解消」、④「クエンカのブレイクに代表される若手の台頭」、⑤「バルデスの無失点記録樹立を支える強固な守備組織」といったところだろうか。
もっとも、順調に得点を重ねるチームにあって唯一の不安材料を挙げるとすれば、それはエースであるメッシへの高すぎる依存度だろう。昨シーズンを上回るほどのペースで得点を積み重ねるメッシ。チーム総得点の実に４割は彼の足から生まれている。今シーズン、ここまで５ゴールとビジャが精彩を欠いているだけに、万が一、メッシが長期離脱を余儀なくされるような事態に備え、代役セスクで計算が立つことを考慮に入れた上でも、昨シーズン以上の栄冠を臨むのであれば新たな得点源を確保しておく必要性は高い。
一方、守備陣ではアビダルの契約更新が難航中。交渉決裂なら１月に退団する可能性もあり、マクスウェルにも退団の噂がささやかれる中、左サイドバックの新戦力確保も急務なる。現状では、バレンシアのアルバやトッテナムのベイルなど、攻守両面でチームに貢献できる左サイドのスペシャリストに白羽の矢を立てているようだが、３−４−３のシステムを考慮すれば、ウイングもこなせる両者のニーズは高い。もっとも、ベイルを冬の移籍マーケットで獲得できる可能性はほぼゼロ。バルセロナの下部組織出身でもあるアルバが現実的な候補と言えるだろう。
いずれにせよ、攻撃力を増した現王者につけいる隙は少ない。クラブ・ワールドカップ後に迎える冬の移籍マーケット。王者バルサがいかなる補強戦略に出るかに注目するのも一興かもしれない。
◇間もなくクラシコ
・バルサが“クラシコ”に向け温存か…CLでメッシら13人を招集外
・R・マドリードのモウリーニョ監督、チームに“クラシコ”かん口令
◇クラブ・ワールドカップへの準備は？
・バルサが“クラシコ”に向け温存か…CLでメッシら13人を招集外
◇選手も監督も大賞候補に
・最優秀監督の最終候補にバルサのグアルディオラら3名が選出
・メッシ、シャビ、C・ロナウドがFIFAバロンドール最終候補者に
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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(twitterアカウントはSoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではグラビアページを担当。