準々決勝オーストラリア戦で決勝点を決めた岩渕真奈 [写真]=Getty Images
6月27日、FIFA女子ワールドカップ・カナダ2015の準々決勝が行われた。なでしこジャパンはオーストラリアサッカー女子代表を1-0で破る。日本代表はベスト4へ駒を進めた。準決勝の相手は、カナダ代表に勝ったイングランド代表に決まる。
ディフェンスの裏狙いを意識させる
今回のW杯での試合において、なでしこジャパンは「大人のサッカー」を実践している。「大人のサッカー」とは、試合のために考えられたプランをきちんと実行して、相手がどのような対抗手段をとってきたのかを試合中に判断して、それに対する応用力をはっきりと示せるチーム、それが「大人のサッカー」である。
オーストラリアとの試合に備えたミーティングで、佐々木則夫監督が指示したことは、おそらく次のような点だろう。
[1]試合が始まったらロングボールを相手のディフェンスの背後に放り込んで、オーストラリアの最終ラインを上げさせないようにすること。
[2]自分たちができる限りボールを保持してプレーをする。
[3]コーナーキックからのセットプレーの際に、攻撃の選手はファーサイドに飛び込むようにする。
[1]については、試合を見ていて「日本は最初から相手ディフェンスの裏にボールを出しているな」と気づいた読者も多いと思う。これは、リスクマネージメントを考慮してのことだろう。
オーストラリアの攻撃陣はスピード力がある。前を向いてボールをもったなら、ものすごいスピードで縦に突破していく。相手の最終ラインが相手のゴールから近いところにあれば、ビルドアップするのにも時間が掛かる。そのあいだに日本の選手は、プレスバックしたり、ディレイしたり、あるいはリトリートして自陣に戻るための時間を作れる。人数を増やして守ることができれば、それだけリスクが軽減させることになる。
さらに、「日本の攻撃陣は裏を狙っている」とオーストラリアに意識させておけば、最終ラインを簡単には上げられないので、ディフェンダーとフォワードの距離が開いて攻撃陣が孤立する状況を作れることも重要だ。
ジュネーヴ大学大学院文学部言語学科終了。青森県出身。『サッカープロフェッショナル超分析術』『サッカープロフェッショナル超観戦術』(カンゼン)『大宮アルディージャの反逆』『俺にはサッカーがある』( 出版芸術社)。『サッカー批評』(双葉社)「田中順也TJ リスボンからの風」を連載中。Web「サッカーキング」でコラムを執筆。
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