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【ファインダーを覗いて…ピッチサイドからの考察】トッテナムを変えるエースと指揮官

2015.02.16

 2月7日の“ノースロンドン・ダービー”、トッテナム対アーセナル。この数年、シーズン途中でトッテナムがアーセナルを上回ることがあっても、シーズンが終了してみるとチャンピオンズリーグ圏内にいるのはアーセナルで、トッテナムは結局ヨーロッパリーグに回るという図式が多かった。

 9月に行われたエミレーツ・スタジアムでの一戦は1-1の引き分けだった。しかし、今シーズンのトッテナムが今までのチームと大きく異なることは2つある。

 1つはユース育ちの21歳、ハリー・ケイン。2009年にトッテナムと契約し、今シーズンは戦前の時点でリーグ戦11ゴールを挙げているのだが、それは12月以降の14試合で達成したものだ。彼が、いかに短期間で急成長しているかの証である。2012-13シーズンの前半は、レンタルでチャンピオンシップ(2部相当)のノリッジ、後半戦はレスター・シティでプレーしていた。トッテナムにとってはさながら「スター誕生」の雰囲気だ。ガレス・ベイルがレアル・マドリードに引き抜かれた経験からか、2月2日には2020年までの契約延長を発表している。

 ケインの凄いところは、いつ、どこからでも、「シュート」を打って「ゴール」を狙う意識が高いこと。相手マークがぴったり付いていても、ボール1個分の隙間からシュートを打ってくる。そのため、相手DFがマークしてゴールへのコースをカットしているから大丈夫、と思ってもタックルの足が伸びてきた先や、股間からもゴールめがけて打ってくる。

 ドリブルが凄い、ヘディングが凄いというより、全選手が好調のトッテナムにおいても、彼の体のキレは特別だ。僅か2カ月半で2桁のゴールを奪っている自信が、さらにゴールを狙う意識になるという好循環になっている。

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トッテナムの中でも体のキレが凄い、ケイン [写真]=Kazuhito Yamada/Kaz Photography

 もう1つは今シーズン、サウサンプトンから引き抜かれたマウリシオ・ポチェティーノ監督の存在だ。スペインのエスパニョールで90年代後半、守備の要として活躍し、パリ・サンジェルマンでもプレーした。最後はエスパニョールに戻り、コパ・デル・レイでは通算2回の優勝をしている。元アルゼンチン代表だ。

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DF出身の監督らしく守備に注文は厳しい [写真]=Kazuhito Yamada/Kaz Photography

 中村俊輔がセルティックからエスパニョールに移籍したシーズンの監督でもあった。そして、吉田麻也が所属するサウサンプトンでも2シーズン監督を務めていて日本人とは縁がある。サウサンプトンでは2012-13シーズン後半から指揮をとり、翌2013-14シーズンはクラブ初のプレミアリーグ8位に導く。この手腕を買われて、トッテナムの監督に引き抜かれたわけだ。

 まだ41歳。そして、サウサンプトンを8位に導いた手腕。ディフェンダー出身だけあって、チームの前線からの守備意識が高い。ケインも1試合で13キロ近くを走り回り、ボールを取られたらすぐにボールを追いかける。

 また、相手ボールになったときに、どう守るかの意識がチームとして統一されているのがよくわかる。特にサイドにボールが行くと、相手の選手がボールを受けてゴールに向かせないことが徹底されている。

 試合はアーセナルが前半11分にメスト・エジルのゴールで先制。最初の15分はアーセナルが優位に進めていたが、次第にトッテナムペースに。前半こそアーセナルリードのまま終えたが、56分にケインの同点弾でトッテナムが追いつく。今シーズンは試合最後の5分間での逆転劇多い。その統計どおり、86分にトッテナムが再びケインのゴールで逆転し、勝利を収めた。選手もシーズン前の特訓により、年末年始の厳しい日程で他のクラブの選手の疲労がピークのときに、自分たちがよく走れていることが、最後の5分間の逆転劇に繋がっているようだ。

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ライバル、アーセナルを倒す2発。今シーズン最優秀選手も夢ではないケイン [写真]=Kazuhito Yamada/Kaz Photography

 チェルシー、マンチェスター・C、アーセナル、マンチェスター・Uいう強豪に加え、サウサンプトン、トッテナム、リヴァプールがトップ戦線に加わり、上位争いが面白くなってきた。今の勢いを考えると、サウサンプトンとトッテナムがCL圏内に入ってくるのではと予測するが、どちらも外国人監督であるところが、イングランドのサッカーファンが気になるところだろう。

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ヴェンゲル監督の後ろから若手監督が追いつき追い越そうとしている [写真]=Kazuhito Yamada/Kaz Photography
山田一仁(やまだ・かずひと)。1957年、岐阜県生まれ。大学卒業後、1981年から(株)文藝春秋写真部にスタッフカメラマンとして在籍。1989年にイギリスへと渡り、1990年からフリーカメラマンとして活動を始める。2007年に(有)Kaz Photographyを設立。日本人フリーランスカメラマンとして、プレミアリーグの撮影ライセンスを所持し、現在は年間の半分近くをロンドンを拠点として、主にプレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、海外で活躍する日本人選手を中心に取材している。

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