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パーデュー、愛される古巣へ電撃帰還/イングランド現地直送コラム

2015.01.28

<<enter caption here>> at on January 4, 2015 in Dover, England.

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[写真]=Getty Images

 プレミアリーグで二番目に長い任期を保っていたアラン・パーデュー監督が、4年間指揮したニューカッスルからクリスタル・パレスへと電撃移籍した。

 同リーグでパーデュー監督はアーセナルのアルセーヌ・ヴェンゲル監督(約18年)に次いで二番目に在籍期間の長い監督だったが、利益ばかりを気にするオーナー、マイク・アシュリー氏の支援を十分に受けられず。今シーズンは開幕から7戦未勝利と不振に陥ったことで、地元ではオーナーと共にサポーターから元凶として掲げられ、解任運動を実施されていた。

Newcastle United v Hull City - Premier League
「パーデューをクビに!」とメッセージを掲げるサポーターたち [写真]=Getty Images

 しかし、パーデュー監督は第8節から破竹の5連勝でニューカッスルを降格圏内の18位から5位に急浮上させ、ファンやメディアを見返すことに成功。次第に解任運動を叫ぶ声は無くなり、メディアは掌を返して称賛した。11月には3勝1敗の成績が評価され、リーグの月間最優秀監督にも選出された。

 その後、ニューカッスルは1勝1分3敗と再び不振気味となり、負傷者が続出した上に冬の移籍市場での軍資金がクラブから提供されない事を知ったパーデュー監督は、第18節終了後、6戦未勝利の末にクリスタル・パレスを解任されたニール・ウォーノック監督の後任ポストに間髪入れず飛び付いた。

Newcastle United v Liverpool - Premier League
「死の淵から生還した」とボードを掲げる“死神” [写真]=Getty Images

 クリスタル・パレス就任直後の会見でパーデュー監督は移籍理由を次のように説明した。

「ニューカッスルはビッグクラブだから去る決断は難しかった。クラブは支出規模を抑えて運営されていたし、実際の支出もリーグ最少を争っていたと思う。あの規模のクラブがあのような運営体制を取っていただけに、移籍市場では努力しなければならなかったし、進歩が遅かったことはファンにとって理解しがたいものだった。ファンの解任運動のいくつかは度を越していたが、私は監督として成長できた」

“コックニー(ロンドン下町)のマフィア(悪党)”とまで称されるアシュリー氏はパーデュー監督の足かせとなっていた。昨シーズンも6位と健闘してクリスマスを折り返したものの、直後にパリ・サンジェルマンから受けた1900万ポンド(約34億円)のオファーに目が眩んだオーナーは、主力だったフランス代表MFヨアン・キャバイェを放出。チームは後半戦に5勝1分13敗と負けこみ、10位でシーズンを終えた。同様に今シーズン開幕前にも主力のフランス代表DFマテュー・ドゥビュシーをアーセナルに1200万ポンド(約22億円)で放出しており、そこにはまさにアシュリー氏の損得勘定が見え隠れする。

 現に2011年にリールから430万ポンド(約8億円)で獲得したキャバイェ、13年にリールから550万ポンド(約10億円)で獲得したドゥビュシーからは、総額2120万ポンド(約38億円)の利益を得たことになる。

Newcastle United V Everton - Premier League
ニューカッスルでプレーしたドゥビュシー(左)とキャバイェ(右) [写真]=Newcastle United via Getty Images

 パーデュー監督はクラブの上位進出よりも利益を優先させる経営体制について次のように話す。

「軍資金が限られた中、私はニューカッスルで2度、全盛期を築くことができた。一つはリーグ5位で終えたチーム(2011-12シーズン)。もう一つは1年前にリーグ6位につけていたチームだ。後者の方が強かったが、ひどく気持ちを害されたのは、クラブが当時から後退したことだ。キャバイェの移籍は制御不能だったし、主力の負傷も痛手だった。だが、私は安定したチーム基盤は残したと思うし、次の監督も問題なく引き継げるだろう」

 イギリス紙『テレグラフ』によると、クリスタル・パレスはニューカッスルに350万ポンド(約6億3000万円)の違約金を支払ったとされており、年俸200万ポンド(約3億6000万円)の3年半という長期契約を結んだ事からも、パーデュー監督への期待の大きさがうかがえる。言わば、パーデュー監督は自分がアシュリー氏の利益となるタイミングを見計らっていたのかもしれない。

Sport. Football. pic: 1991. Division 1. Alan Pardew, Crystal Palace.
クリスタル・パレスでプレーしていた現役時代のパーデュー [写真]=Getty Images

 ロンドンのウィンブルドン出身のパーデュー監督は現役時代、1987年から4年間クリスタル・パレスに在籍し、1989年に2部プレーオフで勝ち抜いて1部昇格に貢献すると、1990年にはFAカップで準優勝し、1991年にはクラブ史上最高位の1部3位で終えるなど、弱小チームに黄金期を築いた伝説的選手だ。

 パーデュー監督の移籍を境に2連敗で11位まで順位を落としたニューカッスルとは対照的に、クリスタル・パレスは2連勝で降格圏18位から13位に浮上しており、ニューカッスルと勝ち点4差に迫っている。FAカップも含めれば4連勝という成績だ。

「現実的に見て、プレミアリーグに残留できたら成功と言える。自分が一流監督だということを証明したい」

 そう語るパーデュー監督はファンに愛されるクリスタル・パレスで、すでに真価を発揮し始めている。

藤井重隆(ふじい・しげたか)。東京都出身。ロンドン大学ゴールドスミス卒。19歳からスポニチの英国通信員として稲本潤一選手の取材を中心にライター活動を開始。日刊スポーツ、時事通信を経て欧州サッカー界に精通。イングランド7部でのプレーも経験し、FAレベル2コーチング・ライセンス取得。現在も西ロンドンの社会人チームでプレーしながら、本場のフットボールに浸る。

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