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セリエA前半戦の主役…ジェノアとサンプドリアが“全員サッカー”でスタジアムを熱くさせる

2015.01.24

[ワールドサッカーキング2月号掲載]

ジェノア&サンプドリア — “全員サッカー”という強み —
ここまでの順位は欧州カップ戦を狙える6位と3位。
イタリアの古豪ジェノアとサンプドリアがセリエAで主役の一旦を担っている。
前半戦で見せた強さと勢いは本物。
ジェノヴァの町にカルチョの熱が戻って来た。
サンプドリア
文=弓削高志
写真=ゲッティ イメージズ

リーグ最多9つのドローこそサンプドリアの真骨頂

 ジェノヴァにあるルイジ・フェラーリスが例年以上に熱く燃えている。同スタジアムを本拠地とする2クラブが、今シーズンのセリエAを席巻しているからだ。第16節終了時点でサンプドリアは3位タイ、それを勝ち点1差で6位ジェノアが追っている。強豪クラブ相手に真っ向勝負を挑み、王者に一泡吹かせる2クラブは、シーズン前半戦の伏兵から一気に主役の座を奪うべく、後半戦での更なる躍進を狙っている。

 シーズン前半戦のサンプドリアのハイライトは、マノロ・ガッビアディーニのFK弾で勝利した第5節のジェノヴァ・ダービー、と言いたいところだが、リーグ最多9つのドローゲームこそ今シーズンのサンプドリアの真骨頂だろう。今の彼らから勝ち点3を奪うのは、どんな強豪クラブにとっても難題だ。

 第15節で対戦した王者ユヴェントスは、ホームで先制したにもかかわらず、後半にガッビアディーニのゴールで追いつかれた。第13節で対戦したナポリは完全に試合の主導権を握られ、終了間際に追いつくのがやっとだった。第8節にはローマの強力攻撃陣が完封されている。

 闘将シニシャ・ミハイロヴィッチに率いられたチームはとにかくしぶとい。U-21イタリア代表のアレッシオ・ロマニョーリや92年生まれのルカ・リッツォといった若き才能たちが、指揮官の求めるどう猛なサッカーを忠実に遂行。前線では“マラソン・ランナー”の異名を取るステファノ・オカカが献身的に走り回り、敵陣のスペースをこじ開ける。

 彼らを支えるベテランたちの奮闘も見逃せない。クラブ在籍13シーズン目の元主将アンジェロ・パロンボと現主将のダニエレ・ガスタルデッロは、3年前のセリエB降格の屈辱と再昇格の苦労を忘れてはいない。2012年1月に加入したエデルも、昇格に尽力した一人。クラブOBでもある指揮官の“サンプ魂”を継承するのが彼らなのだ。


ジェノア

「我々のロッカールームは一つだ」

 一方のジェノアは、本拠地にユヴェントスを迎えた第9節で大金星を挙げた。0-0のままタイムアップかと思われた95分、クロスに飛び込んだルカ・アントニーニが泥臭く決勝点を記録。スタジアムは蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。

 更に第14節では、主将ルカ・アントネッリの決勝弾でミランを撃破。目覚ましい活躍を見せた新加入の司令塔ディエゴ・ペロッティは、智将ジャンピエロ・ガスペリーニがサマーキャンプから期待をかけ、新たに磨き直した宝石だ。指揮官は故障に悩まされたセビージャ時代のトラウマを残すペロッティに「肩の力を抜いて少し笑ってみろ」と諭した。精彩を取り戻した背番号10は、ミラン戦で面白いようにゲームを操った。

 ジェノアでは練習開始時刻の1時間半も前に選手が練習場に現れ、ロッカールームでサッカーテニスに興じる姿が珍しくない。数年前、それを知ったガスペリーニは選手たちへやめるように言ったが、今では叱らなくなった。彼らがチームのロッカールームを本当に愛していることを理解したからだ。

 クリスマスまでに6ゴールを挙げたアレッサンドロ・マトリも、レアル・マドリードの下部組織出身でようやく陽の目を浴びつつあるイアゴ・ファルケも、「ジェノアには特定のリーダーや特別扱いされる選手がいない。全員が協力して戦っている」と口をそろえる。ミラン戦の白星はガスペリーニがクラブで挙げた記念すべき通算100勝目の勝利だった。

「今のチームはディエゴ・ミリートやチアゴ・モッタがいた08-09シーズンよりも強い。より完成度が高い」。当時5位に食い込んだ6年前のチームは、近年のクラブで史上屈指の強さを誇った。それを上回るというのだからガスペリーニの自信のほどが分かるというものだ。

 昨年10月、ジェノヴァが大規模な洪水災害に見舞われると、2クラブはいち早く被害支援を打ち出し、選手たちは町へ飛び出して汚泥の除去作業ボランティア活動に参加した。今、激しい対立で知られるドリアーニ(サンプドリア・ファン)とジェノアーニ(ジェノア・ファン)は団結し、ルイジ・フェラーリスの声援はより熱く、より力強く選手たちの背中を押す。

「我々のロッカールームは一つだ」(ダニエレ・ガスタルデッロ)。「ジェノアのスタメンは11人じゃない。登録されている25人全員だ」(マッティア・ペリン)。双方とも、個性豊かな選手たちが“全員サッカー”に力を尽くす。それこそが今シーズンのジェノヴァの2クラブが持つ強みなのだろう。

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