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元代表G・ネヴィル「サイドバックの模範的守備」で吉田麻也を批評/イングランド現地直送コラム

2015.01.09

during the Premier League match between Southampton and Chelsea at St Mary's Stadium on December 28, 2014 in Southampton, England.

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アザールとマッチアップした吉田 [写真]=Getty Images

 イングランド代表コーチのガリー・ネヴィル氏が、自身が解説者を務める『スカイスポーツ』の番組『マンデー・ナイト・フットボール』で、プレミアリーグ第18節で1-1の 引き分けに終わったサウサンプトン対チェルシー戦を分析し、「サイドバックがすべき模範的守備」と題して、サウサンプトンの失点に絡んだ日本代表DF吉田麻也の守備を批評した。

 ネヴィル氏は自身の現役時代、当時アーセナルに在籍していたオランダ代表FWロビン・ファン・ペルシーや元フランス代表MFロベール・ピレスとの対人プレーに手を焼いたことを交えながら、次のように述べている。

Manchester United v Bolton Wanderers
現役時代のG・ネヴィル [写真]=Manchester United via Getty Images

「15~20年前、私は右DFとして相手の左MFの選手と対峙したが、当時は左利きの選手が多かったし、相手をサイドに追い込むことは今よりも簡単だった。だが、時代は変わり、(元ポルトガル代表MF)ルイス・フィーゴ、(元スペイン代表FW)フェルナンド・トーレス、(ポルトガル代表FW)クリスティアーノ・ロナウドといった切り返しを得意とする選手が現れると、その対応も難しくなった」

 ネヴィル氏は、冒頭で第18節のハル・シティ対レスター(1-0でレスターの勝利)を取り上げ、ハルのイングランド人左DFリアム・ロシニアーとレスターのアルジェリア代表MFリヤド・マーレズの1対1の場面を解説し、「右利きながら左DFを務めたロシニアーは左利きのマーレズに対し、サイドに追い込む守備をすべき場面で中に切り返されてしまい、失点した」と分析。

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サウサンプトン戦でのアザールの得点シーン [写真]=Getty Images

 次にネヴィル氏は「サウサンプトン対チェルシーで(ベルギー代表MF)エデン・アザールが得点した場面も非常に似通っていた」と同試合を取り上げると、吉田のプレーに言及しながら次のように解説した。

「右DFを務めた吉田はセスク・ファブレガスからの(裏へ抜けるアザールへの)絶妙なパスに対応できず問題を抱えた。アザールは相手ペナルティエリア内へ侵入し、吉田と(ベルギー代表DFトビー)アルデルヴァイレルトとの1対2の場面を作り出した」

「これはDFであれば何度も練習するドリルだが、アザールが狭い角度から左足でシュートするのは難しいため、吉田はアザールを縦に行かせるべきだった。だが、アザールは切り返して中央へドリブルすると、カバーに入ったアルデルヴァイレルトの対応も遅れた。ファーストDFの吉田の足はそこで止まり、(イングランド代表GKフレイザー)フォースターもなすすべがなく、簡単にゴールを許した」

Manchester City v Tottenham Hotspur - Premier League
トッテナムのカブール(左)を振り切ってシュートするアグエロ(右) [写真]=Getty Images

 ネヴィル氏の解説は過去にさかのぼり、マンチェスター・Cのアルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロに及ぶと、10月18日に行われた対トッテナム(4-1でマンチェスター・Cが勝利)と11月2日に行われた対マンチェスター・U(1-0でマンチェスター・Cが勝利)での右DFの対応場面を比較。

「最も重要なのはサイドバックが後ろに立つGKを考慮し、相手に極力難しいシュートを打たせるという事。トッテナムの(フランス代表DFユーネス・)カブールは周りにカバーがいるにも関わらず、同様に中央への切り返しを許し、失点した」

「一方、マンチェスター・Uの(エクアドル代表MFアントニオ)バレンシアが右DFを務めた同様の場面で、バレンシアはこの場面でアグエロに縦に抜かれた。DFが最もしてはならないことは相手に1対1で抜かれる事であり、抜かれるのは好ましい事ではないが、私が分析した3選手の中では最もいい守備を見せたと言える。彼は縦への突破を許したが、狭い角度からシュートを打たせており、(スペイン代表GK)ダビド・デ・ヘアに簡単にセーブさせた」

Thierry Henry of Arsenal scores their third goal
2003年のインテル戦で得点したアンリ [写真]=Getty Images

 最後にネヴィル氏は元フランス代表FWティエリ・アンリがアーセナル在籍時の2003年11月にインテルとチャンピオンズリーグのグループステージで対戦(5-1でアーセナルが勝利)した際の場面を解説。同場面でアンリは速攻からハーフウェーラインでボールを受けると左サイドを独走してゴールするが、対応に戻った元アルゼンチン代表DFハビエル・サネッティの守備を称賛している。

「この場面では3つの結果が想定された。サネッティがタックルを仕掛けて退場するか、なすすべなく失点するか、GKにセーブさせるか。ファウルで一発退場になることやPKを与えることは最悪なこと。だが、サネッティはアンリに並走してドリブルを遅らせると、足を止めることに成功した。結局縦へ抜かれてしまうが、アンリに狭い角度からのシュートを選択させており、チームが迎えた危機的場面において理想的な守備をしたと言える」

 ネヴィル氏は、バルセロナのアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ、レアル・マドリードのポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドといった選手への対応策として、サネッティの守備を「模範的」としており、現代サッ カー界において利き足とは逆のサイドでプレーする世界屈指の攻撃的MF選手やFWの攻略法として「逆へ切り返されるよりは、縦に抜かれた方がマシ」と、締めくくっている。

藤井重隆(ふじい・しげたか)。東京都出身。ロンドン大学ゴールドスミス卒。19歳からスポニチの英国通信員として稲本潤一選手の取材を中心にライター活動を開始。日刊スポーツ、時事通信を経て欧州サッカー界に精通。イングランド7部でのプレーも経験し、FAレベル2コーチング・ライセンス取得。現在も西ロンドンの社会人チームでプレーしながら、本場のフットボールに浸る。

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