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自信を失った香川へのラストチャンス、アジアカップ連覇が導く“再生”への道…もう失敗は許されない

2015.01.11

[ワールドサッカーキング2月号掲載]

イングランドでの不遇の日々とブラジル・ワールドカップでの失意、
転機とすべき古巣ドルトムントへの復帰も完全復活への特効薬とはならなかった。
迎えた2015年、香川真司は早くも再生へ向けての正念場を迎える。
香川真司
文=編集部
写真=原田亮太

失った「自信」

 試合終了のホイッスルが鳴り響くと、香川真司はビブス姿のままベンチコートを羽織り、ファンが待つゴール裏へ挨拶に向かった。足取りは重く、表情も冴えない。それはこの1年、我々が何度となく目にした光景だった。

 ジグナル・イドゥナ・パルクに好調ヴォルフスブルクを迎えたドルトムントは、2度のリードを守り切れず2014年のホーム最終戦をドローで終えた。終始、試合を優位に進めながらどうしても勝ち切れない。今シーズンを象徴するかのようなゲーム展開に選手たちはただうなだれるしかなかった。

 この試合の香川はベンチスタート。ピッチサイドで精力的にウォーミングアップを続けていたが、最後まで彼に出場機会は訪れなかった。これでリーグ戦では3試合連続の出番なし。しかも、この日は交代枠が2つ残っていたにもかかわらずだ。

 昨シーズン、マンチェスター・ユナイテッドで不遇の時を過ごした香川は、恩師ユルゲン・クロップ監督の強い要望もあって古巣復帰を決断。今シーズンは自ら「全く新しいチャレンジ」と位置づけて臨んだ勝負の年だ。復帰初戦でいきなりゴールを挙げた時には、誰もが“停滞期”の終焉を予感した。だが、主力にケガ人が相次いでチームが不振に陥ると、それに引っ張られるようにして香川のパフォーマンスも低下。一度リズムを崩したチームと香川が前半戦のうちに調子を取り戻すことはなかった。

 ユナイテッド時代から続く長いスランプに、当初は復活を信じていたファンやメディアからも「ピークを過ぎたのでは?」、「既に終わった選手」といった辛らつな声が聞かれるようになった。香川は一体どうしてしまったのか。技術や体力が急激に衰えたわけではないし、ユナイテッド時代にたびたび指摘されていた「試合勘の欠如」もドルトムント移籍を機にほぼ解消されている。では不調の原因は果たして何なのか。

 以前に所属した時とはチームメートやサッカーの内容が変わっていて、連係の構築や戦術理解に時間が掛かっているのも原因の一つだろう。だが、最大の原因として挙げられるのは、やはり「自信の喪失」。これは多くのクラブ関係者も認めている事実だ。

ドルトムント

早期の自信回復へカギを握るアジア杯

 ドルトムントをリーグ2連覇に導いた頃の香川の持ち味は、ボックス内にタイミング良く入り込むセンスと、密集地帯でも巧みにボールを操れる繊細なテクニックだった。しかし、所属チームの不振と長いベンチ生活で自信を失った現在は、ここぞという場面で判断に迷いが見られ、決定機を逸する場面が増えた。またビルドアップに参加したり、守備に奔走したりするうちに、本来の特長だった“相手に脅威を与えるプレー”が鳴りを潜めている。

 もちろん、「ゴールに絡めないなら、せめて違った形でチームに貢献したい」と考えた結果だろうが、そうした責任感がアダとなった格好だ。不振の原因が単にプレーの微修正で改善できるものならさほど心配はなかったかもしれない。しかし、メンタル面の問題は1試合や2試合で解消できるものではなく、今後更に深刻化する恐れもある。

 その意味で、昨夏のブラジル・ワールドカップやドルトムントへの復帰は、“再生”のきっかけとするまたとない機会だった。しかし、承知のとおり、ワールドカップは失意のうちに幕を閉じ、満を持して復帰したドルトムントではまさかの残留争い。香川は再生へのきっかけとすべき絶好のチャンスを2度も逃してしまったことになる。

 それでも2015年、再生のきっかけとなる機会はすぐに訪れる。日本代表の一員として臨むアジアカップは、自信回復のためにこれ以上ない舞台だろう。

 既に2度の機会を逸している香川は、今度こそ再生のきっかけをつかめるのか。日本代表の中心選手としてアジアカップ連覇を果たし、自信とともにドルトムントへ帰還する。それが、苦しかった2014年を払拭する唯一の手段となる。3度目の正直へ、もう失敗は許されない。

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