2015.01.12

新時代のGK像を作り上げるノイアー「今は世界中のたくさんのファンが僕のプレーに注目してくれている」

[ワールドサッカーキング2月号掲載]

“世界最高のGK”と称されるマヌエル・ノイアーが
新たな称号を手に入れるかもしれない。
1963年のレフ・ヤシン以来、史上2人目となるGKのバロンドール受賞――。
偉業は手が届くところにある。
ノイアー
インタビュー=イェルク・アルメロート
翻訳=安藤正純
写真=ゲッティ イメージズ

“ダブル”達成は僕らの明確な目標

――まずはシンプルな質問から。2014年がどんな1年だったかを振り返ってほしい。

ノイアー 本当に忘れられない1年になったね。今は誇りと感謝の気持ちでいっぱいだ。ヨーロッパのチームとして初めて南米開催のワールドカップ(W杯)を制することができた。ドイツにとって最高の勲章さ。

――昨年末にはベルリンのベルビュー宮殿に招かれて『シルバー・ローレル・レリーフ』を受賞したね。あれは国内スポーツ界最高の栄誉だ。

ノイアー 素晴らしい1年の締めくくりになった。ドイツ代表は全員の心が一つになった最高のチームだっただけに、受賞には本当に感動したよ。

――ブラジルで優勝することができた要因は何だと思う?

ノイアー 長い年月を掛けてやってきた“成長プログラム”が実を結んだんだと思う。僕らは過去の大会から、もちろん失敗例も含めて、重要な試合で何がポイントになるのかを学んできた。タイトルへの飢餓感もあったし、その野心をどうしても満たしたいという強い気持ちがあった。どの選手も限界までプレーしたよ。それは見ている人たちにも十分に伝わったと思う。

――改めてW杯を振り返った時に特に思い出すのは?

ノイアー 決勝戦で試合終了のホイッスルを聞いた時だ。理由は簡単さ。僕らがあらゆるプレッシャーからやっと解放された瞬間だったからね。W杯で優勝するために何週間も集中力を切らすことなく、必死にトレーニングをこなした。その苦労がついに報われた瞬間だったんだ。それから準決勝のブラジル戦も忘れられない。あのスコアは信じられないよ。電光掲示板を見上げても「これって本当なの?」という感じで、夢か現実か分からないほどだった。

――W杯後のチームの成績はあまり良くない。アルゼンチンにリベンジされ、ユーロ予選ではポーランドに初勝利を献上、アイルランド相手に引き分けてしまった。

ノイアー それにはいくつもの理由がある。まず、長年チームを引っ張ってきた中心選手の(フィリップ)ラーム、(ペア)メルテザッカー、(ミロスラフ)クローゼの3人が代表チームを去ったことだ。特にラームとメルテザッカーは守備の要だったから影響は大きいよ。それにW杯後はケガ人も多かった。(メスト)エジル、(バスティアン)シュヴァインシュタイガー、(サミ)ケディラ……彼らの代役なんて早々に見つかるものじゃない。もちろん、選手の入れ替えも一因だろう。チームはうまく回っていた時代から転換期に入ったんだ。それにW杯王者ということで他のチームから追われる立場になった。親善試合だろうと、相手は「ドイツに勝てば権威が上がる」と考えて、猛烈な勢いで向かって来る。

――2015年のドイツ代表は再び上昇気流に乗れそう?

ノイアー もちろんそうなるよ。長期間の合宿、W杯決勝での120分の戦いなど、ブラジル大会でとことんやり切ったことで影響が出たけど、来年には持ち直してまた以前の輝きを取り戻すはずだ。

――ドイツの多くのファンがスペインの再現(W杯とユーロの連続優勝)を望んでいる。

ノイアー “ダブル”達成は僕らの明確な目標だ。2015年はその足固めをしたい。それがW杯王者の務めでもある。

GKの受賞はないと思っていた

ノイアー

――君はW杯でGKの新たな理想像を築いたね。

ノイアー 自分ではそうは思わないな。だって僕のプレースタイルはW杯以前から何も変わっていないからね。単に舞台と世間の反応が大きかっただけさ。僕が重要視しているのはプレーのバランスを崩さないこと。例えば、ペナルティーボックスを大きく飛び出した後、取り乱さないよう長年訓練してきた。バイエルンでも代表でもチームメートとのコンビネーションを意識し、ボールを絶対に失わず、確実に前線へフィードできるよう心掛けている。そうした現代的なプレーが僕には合っているんだ。もっとレベルを向上させたいと思っている。

――君のプレーは既にかなりハイレベルだと思うけど、まだ向上の余地があると?

ノイアー 頂点まで上り詰めるのは難しいけど、頂点に留まり続けるのはもっと難しい。これはアスリートにとっての常識だよ。だから、常にハイレベルだと証明することが大事なんだ。僕は「自分はこれ以上向上できない」なんて思ったことは一度もない。ディテールをとことん追求して、もっともっとうまくなりたい。そのために、来る日も来る日も練習しているんだ。

――FIFAバロンドールの最終候補3名に残ったけど、これは意外な出来事だったのでは?

ノイアー 少しね。何しろGKはどんなに頑張っても受賞には手が届かないと思っていたから。サッカーで目立つのはゴールやスペクタクルなドリブル、そして審判への抗議ぐらいだ。GKはそれこそ誰もが驚くようなプレーを何度も見せて強いインパクトを与えなければ評価なんてされない。でも、うれしいことに、今は世界中のたくさんのファンが僕のプレーに注目してくれている。それが救いだよ。

――事前予想だと、やはりクリスティアーノ・ロナウドかリオネル・メッシの受賞が堅いと言われている。彼らは“魅せる”タイプの選手だね。

ノイアー “魅せる”という意味では、今の僕がこの1年で見せてきた以上のプレーを提供するのは難しいかな。いずれにしても、ロナウドとメッシは超一流のプレーヤーだ。どちらもバロンドール受賞にふさわしい第一人者だよ。

3冠を狙っている。可能性はあるよね

ノイアー

――バイエルンは開幕以来、ブンデスリーガで無敵を誇っている。今シーズン前半戦の成績は14勝3分けと負けなし。GKとしてはちょっと退屈なのでは?

ノイアー 僕らはとても良い仕事を続けて、良いゲームを展開している。「W杯の疲れが残るバイエルンはきっとつまずくはずだ」と思っていた人たちの“期待”を裏切っているよ(笑)。でも、GKの僕が暇そうに見えるというのはちょっと心外だな。むしろその反対で、たまに訪れるピンチに備えておくのはかなり大変な作業なんだ。ゲーム中、GKに視線が注がれるシーンなんて数えるほどしかない。だからこそ、そこで判断を誤ったり、ヘマしたりするのは絶対に許されない。GKにとって最も大事なことって何だと思う? 集中、集中、とにかく集中だよ。集中力を切らしては絶対にダメなんだ。たとえ10分間、一度もボールに触れてなくてもね。

――バイエルンにおけるGKの役割はちょっと特殊だよね。

ノイアー バイエルンではGKがフィールドプレーヤーの一人としてプレーするのが当たり前になっている。ボールに何度もコンタクトして、後方からゲームを作り、チームのピースとして機能するんだ。これが楽しいんだよね。僕はジッと立ち尽くして錆びついてしまうGKになんかならない。(ジョゼップ)グアルディオラ監督は就任当初から現在の役割を望んでいたよ。

――長年のライバルであり、「打倒バイエルン」の一番手でもあったドルトムントが苦しんでいる。リーグ前半戦を終えて順位は17位。このままでは2部へ自動降格だ。

ノイアー ドルトムントはこれから順位を上げていくだけのクオリティーを備えたチームだと思う。ただし、サッカーは優れた選手を集めればいいというものではないし、自動的に勝てるわけでもないんだ。勝ち点を奪うためには、とにかく必死に戦う必要がある。どこも残留のために必死だし、それが順位にも反映されている。前半戦のブンデスリーガで意外なチームが上位に進出してきたのも、そうした理由からだよ。

――では最後の質問だ。2015年の目標は?

ノイアー 取れるタイトルはすべて取りたい。そのために全力を尽くすよ。ブンデスリーガはもちろん、DFBポカールとチャンピオンズリーグの3冠を狙っている。僕らなら可能性はあるよね。ポテンシャルは十分だし、後は実行に移すのみだよ。

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