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監督メモの言葉が「Stupid cornerkick ?」だったならば(前編)~ファン・ハール監督が会見で指摘したツメの甘さ~

2015.01.05

Getty Images

ショウクロス
Photo by Getty Images

 2015年1月1日、プレミアリーグ第20節、マンチェスター・ユナイテッド(以下、マンチェスター・Uと省略)は、アウェイの地でストーク・シティと戦った。

 試合開始早々、ストークが先制する。前半2分にコーナーキックからライアン・ショークロスがヘディングを決めた。その後マンチェスター・Uは、26分に得たコーナーキックをファルカオがゴールして同点となる。

 両チームとも何度か好機を演出したが、試合は1-1の引き分けのまま終了の笛が鳴らされた。

 この試合である事柄が話題になった。それはファン・ハール監督が、試合中に乱暴な文字でいくつかのポイントをメモしていたことだった。あるカメラマンがそのメモを監督の背後から盗撮する。メモに綴られていたいくつかの文の中には、「Stupid freekick ?(馬鹿げたフリーキック?)」という言葉があった。

 もしも、より正確に言葉を綴れば「Stupid cornerkick ?(馬鹿げたフリーキック)」ではないかと思われる。それは、試合後の監督会見を聞けば、問題にしたのが「フリーキック」ではなく「コーナーキック」だったのではないかと疑いたくなってしまうからだ。

監督会見で語られたメッセージ

ファン・ハール

 試合後の会見でファン・ハール監督は、ストークに与えた先制点に関して次のように述べた。

「こうなることはわかっていたはずだ。私は、2度のミーティングでも話した。(ピーター・)クラウチが、あのようなプレーをすること、そして2人が連係をしてゴールを決めることもあるとわかっていた。彼らを完全にフリーにしてしまったことはとてもまずかった」。

 監督が言及したプレーとは、ストークが右コーナーキックを得て、ファーサイドのFWクラウチがヘディングで送ったボールに、DFショウクロスが右足のボレーでゴールを決めた先制点を与えた場面を指す。

 プレミアリーグでは、セットプレーの守備のとき、守る側のチームが全員自陣に戻ってゴールを固めるチームが多い。マンチェスター・Uも伝統的なやり方を継承して、センターライン近くに味方の選手を残さず全員が自陣に戻って守備をする。その際に、相手の選手1人に1人がマークするというアンツーマンでゴールを守るのである。

 マンチェスター・Uのどの選手がストークのどの選手にマークしていたのかは、図を参照してみると以下のようになる。マンチェスター・Uのフィールドプレーヤーの10人全員がペナルティー・エリア内にいる。

 ロビン・ファン・ペルシーがゴールのニアサイドに立つ。GKのダビド・デ・ヘアを挟んでファーサイドにアシュリー・ヤングがいる。そしてペナルティー・アークとペナルティー・エリアが交わるライン上にファン・マタとラダメル・ファルカオがセカンドボールのケアのために守備をする。

<マンチェスター・U | ストーク>
マイケル・キャリック → スティーヴン・ヌゾンジ
ウェイン・ルーニー  → ピーター・オデムウィンギ
フィル・ジョーンズ  → ショークロス
ジョニー・エヴァンス → ジェフ・キャメロン
ルーク・ショー    → クラウチ
クリス・スモーリング → マメ・ビラム・ディウフ

 ストークのコーナーキックのやり方は、最初にほとんどの選手をキッカーから離れたファーサイドの側に立っている。キッカーがボールを蹴った瞬間にニアサイドの方に走り出す。

 このときに、マンチェスター・Uの選手はストークの選手の動きにつり出されてマークにズレが生じる。それが、ゴール前にヘディングでボールを送ったクラウチのマークを外したルーク・ショーであり、さらに得点したショークロスを見失って自分の役割を忘れてしまったフィル・ジョーンズだった。

 ファン・ハール監督が会見で述べたように「2度のミーティングで話した」こととは、失点した場面を想定しての発言であろう。クラウチがヘディングでボールをゴール前に送って、そこにいる味方の誰かがシュートをする、というやり方をストークがとってくることを事前に注意した。しかし選手たちは、まんまとストークの術中にハマってしまったのである。

 マンチェスター・Uの同点弾は、ストークが挙げた得点と同じくコーナーキックから生まれた。ストークも1人の選手が相手の1人の選手をマークするというマンツーマンの守備でゴールを守る。ストークは8人で守備をして、マンチェスター・Uは攻撃に6人の選手をあてている。

 ルーニーがコーナーから蹴ったボールは、ゴールエリア内に落ちてくる。そのボールに対して、ファーサイドにいたファルカオが、マークするマルク・ムニエッサを躱して左足でゴールを決めた。

 両チームの得点がコーナーキックから生まれたことは、実は、なかなか見られないほど確率的には低いゴールシーンだったのである。

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