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<インタビュー>川淵三郎「キャプテンから大学サッカーへ提言」

2014.12.19

大学サッカー×SOCCERKING
vol.3 日本サッカー界にとって大学サッカーとは

 平成26年度全日本大学サッカー選手権大会(通称:インカレ)が12月11日より開催中。大会は21日の決勝を残すのみとなり、流通経済大学と関西学院大学が両校が初優勝をかけて戦います。大学日本一を決める本大会に合わせて、大学サッカーの魅力を計3回のコラムでお届け。最終回となる今回は、現在、日本サッカー協会 最高顧問ならびに2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 評議員を務める川淵三郎キャプテンのインタビューをお伝えします。

川淵三郎

――昨年の全日本大学サッカー選手権大会では観衆9,053人。この数字が示すように現在、大学サッカーへの注目度は高いとは言えない現状にあります。早稲田大学ア式蹴球部所属時、世間の大学サッカーに対する見方はいかがでしたか?
「当時は、日本にそんなにたくさんスポーツがなかった中で、関東大学サッカーリーグの注目度は高かったと思いますね。関西の一般紙にも、関東リーグの結果だけでなく、メンバー表までも毎試合、掲載されていたから(川淵さんは大阪出身)。今ではとても考えられないでしょ?スポーツを取材するマスコミの数も今ほど多くなかった中で、割り合い大学サッカーは、記事的に見ればメインの扱いだった。関東リーグ戦も2試合ぐらいはNHKで生中継されていたからね。」

――しかし、それだけ人気があっても当時の大学卒業後はJリーグという道はなかったわけですよね。
「そうだね。当時、卒業後は会社に就職して実業団でプレーするしかなかった。卒業後のサッカーでの目標は天皇杯くらいしか大きなタイトルはなかったからね。そうゆう意味から考えても大学1位のチームが日本一と考えてもおかしくないくらいのレベルにあったし、注目度があったよね。」

――なるほど。そのように高い注目度の中で川淵さんは大学在学時、関東大学リーグ3回優勝と輝かしい成績を残されましたが、大学サッカー生活の中で一番印象に残っていることは何ですか?
「日本サッカーにおいて当時、一番観客が入る試合が早慶ナイター定期戦だった。後楽園競輪場(当時、芝生のピッチで、ナイター設備のある会場がここしかなかった)で行われていたんだけど、今よりライトの照度も相当低くて、ボールに白いエナメルを塗って試合をしていたんだ。それでも遠くのボールはあまり見えなかったね。それにエナメルのせいでボールが重くて。今、ボールがピッチ外に出たあと、すぐに替えのボールを使うマルチボールシステムがあるけど、あれを日本で初めて実施したのは早慶ナイターだと思う。早慶ナイター定期戦は大体1万人を超える観衆が入っていて、後楽園競輪場の観客席が満杯でピッチのすぐ横までお客さんがいたんだ。その試合の観衆の多さには本当に驚いたし、『大学サッカーすごいな。早稲田のサッカーすごいな』と思ったね。高校サッカーとは一段レベルの違うところでやっているんだなと感じた試合だった。これが一番印象深い。」

――大学当時早稲田大だけでなく、日本代表としてもご活躍されましたが、代表としての当時の思い出はありますか?
「初めて代表候補に選出されたのが大学1年時の東西学生王座決定戦(関東リーグ1位と関西リーグ1位が年に一度大学サッカーの日本一を決めるために実施していた。現在は実施されていない。)で、その試合で得点して、それをきっかけに、その次の年(1958年)に日本で開催されたアジア大会の候補選手に選出されたんだ。でも、東西学生王座決定戦のときに肉離れを起こして候補者合宿に行けなくなってしまって‥‥。行ってたら選ばれてたんじゃないかなと思うんだけど‥。ちなみにそのアジア大会で日本はフィリピンや香港に負けて、代表は強化のために改革が求められたんだ。その中で若返りを図ろうと代表が再編成されて、世代交代の形で選出されたのが、僕を含めて大学生が10名くらい。それが代表初選出の時(大学2年時)。代表での初試合が香港とだったんだけど、当時アジアではセミプロだった香港が一番強かった。今じゃ考えられないけどね。香港以外にもマレーシア、シンガポール等に遠征したけど、成績は3勝5敗3引き分けだった。国の代表ではなくて、県代表クラスに対してこんな戦績だったくらい当時の日本代表は、アジアの中でも弱小国だったね。」

――川淵さんは現在、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 評議員でいらっしゃいますが、サッカーの五輪世代(U-22)はちょうど大学サッカーの年代です。そのオリンピック世代である大学生に求めることは何ですか?
「現在のU-21代表のメンバーには大学生から1人(室屋成 現:明治大学)しか選出されていないわけで。個人的な意見を言わせてもらうと、“情けない”の一言につきる。ロンドン五輪の時も大学から2名しか選出されなかった。今の状態では『オリンピックには大学生は関係ないよ』というイメージ。選出されない要因は、様々あるとは思うけど、現状では代表に選出される感じがしない。今は多くの選手が7~8歳くらいからサッカーを始めていて、昔に比べれば断然日本サッカーのレベルは上がっている。大学生選手が選出されないわけは、練習時間、練習方法、競争相手、環境など、同年代のプロ選手に比べて差があるように思う。それでも、武藤や長友のように大学進学して開花することもあるから大学在学の選手たちは、もっと大きな夢を持って頑張ってほしいね。少なくともU-21や次のオリンピックまでには4、5人選出されるようにならないと!そうじゃないと寂しいよ。少なくとも、選考する人はJクラブも大学サッカーも均等にみているわけで、そんな中でこれだけしか選出されていないわけだから、どうしたら大学サッカーからもっと代表に選出されるようになるかを真剣に考えるべきだと思うよ。」

――日本サッカー全体から見て大学サッカーはどのような位置づけだと思われますか?
「大学の4年間で、社会で生きていくための知識や人間的な余裕というか、幅がつくことは無駄ではない。だけどそれが高卒でプロに加入する選手よりいいかとは一概には言えない。将来のことを考えるのであれば大学で4年間サッカーをやった方がいいと僕自身は思っているけど、サッカーだけで考えると、今の状況ではメリットが低い。Jリーグができた当初は、高卒の優秀な選手は必ずと言って良いほどプロに行っていた。けれど、特別指定選手制度ができ、大学サッカー部に所属しながらJクラブでもプレーができるようになって、大学生選手が増えてきた。この制度があるのだから、僕としては、できたらやっぱり大学に進学して、武藤のようにJクラブと大学サッカー両方やる形になっていってほしいと思っているよ。」

――大学サッカーで現在頑張っている選手たちへメッセージをお願いします。
「最近の大学サッカー出身選手といえばなんと言っても長友(長友佑都 明治大出身 現:インテル・ミラノ)だね。彼が象徴的だったのは、大学1年時にはレギュラーではなかったけれど2年生時に初めてレギュラーになって、たまたま北京五輪予選時の反町(反町康治氏 現:松本山雅FC監督)の目にとまって選出された。国立競技場で予選の試合を僕も観戦したけど、『すごく動く選手がいるな』と。上手いとかそんなのではなく、びっくりするほどよく動く、走り回る。ただそれだけのプレーで多くの人の目にとまり、現在は技術もレベルアップしてインテル、そして日本代表で活躍するに至るわけで‥‥。今では技術もついて凄く良いプレーヤーになったね。大学サッカーに所属する選手に言いたいのは、人と同じことをやっていたらだめだということ。何か自分の得意技を磨いて欲しい。宇佐美(宇佐美貴史 現:ガンバ大阪)が一試合の間に『もう少ししっかりやれよ』という場面があるけど、必ず点を取るのであれば、宇佐美の存在は価値があるよね。メッシに『守備をしろ』とはみんな言わないだろう。攻撃に力を費やしてもらった方がチームとしていいわけだから。サッカーなんてそんなもんで、自分が人より秀でるものを一つでも持っていたら全然違うと思う。それは、人と同じことをしていてそうなることはありえない。何か犠牲にしてそこに打ち込まなければ。打ち込むということが一番大事なんじゃないのかな。だからしっかりサッカーに打ち込めと、それだけだね。」


 過去に同じ舞台を経験した大先輩から後輩たちへのメッセージ。厳しい言葉の裏には、大学サッカーへの期待も込められているのだろう。キャプテンからの言葉を胸に、大学サッカーは進化を続けなければならない。そしていつか、大学サッカーから多くの日本代表が選出される日を信じて。

○川淵三郎(かわぶち さぶろう)
1936年12月3日生まれ、大阪府出身。早稲田大学ア式蹴球部出身。大学時代には3度の関東リーグ優勝を経験。大学2年時に日本代表初選出。その後も大学在学時にローマオリンピック予選・チリW杯予選に出場。大学卒業後は古河電工に入社し、同サッカー部に入部。64年、東京オリンピックに出場。70年に現役を引退した後は、古河電工サッカー部監督、日本代表監督を務める。88年に日本サッカーリーグ(JSL)の総務主事に就き、サッカーのプロ化をけん引。91年、Jリーグ初代チェアマンに就任。2002年、日本サッカー協会(JFA)第10代会長。名誉会長を経て、現在は最高顧問。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会評議員も務める。2013年、公立大学法人首都大学東京の理事長に就任。2009年旭日重光章。

いよいよ全日本大学サッカー選手権大会も決勝を残すのみ。

【FINAL】
11:00 キックオフ 流通経済大学 vs 関西学院大学 @味の素フィールド西が丘
BS朝日にて生中継も実施。当日には試合以外にも様々な企画も実施予定。
是非、大学日本一決定の瞬間をご覧ください!

なお、全日本大学サッカー選手権大会の詳細は下記にて発信中!
全日本大学サッカー連盟公式HP:http://jufa.jp/
全日本大学サッカー連盟公式Twitter:@JUFA_soccer
全日本大学サッカー連盟公式Facebook:全日本大学サッカー連盟

[インカレ公式プロモーションビデオ]
約1,200枚の絵を組み合わせ、大学サッカーを描いたアニメーション映像 
是非、ご覧下さい!

作成者:INEMOUSE

取材協力:日本サッカー協会
取材:一般財団法人全日本大学サッカー連盟

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