2014.12.15

“キング”の座を巡るC・ロナウドとベイルは衝突する運命にあり? 2枚看板のライバル関係に迫る

表向きは親友同士。しかしレアル・マドリードの2人のプリンスは、“キング”の座を巡り、やがて衝突する運命にあるのではないか? 今夏には王位を狙う者がもう1人加わり、チームに波風が立つ可能性もある。
Previews - UEFA Super Cup
文=ニック・ムーア
翻訳=町田敦夫
写真=ゲッティ イメージズ

ロナウドを脅かすベイルの存在

 ここ最近のフットボール界には派手な“いがみ合い”がなく、どうにも物足りない。サー・アレックス・ファーガソンは悠々自適を決め込み、ジョゼ・モウリーニョはすっかり「ハッピー・ワン」(満足した男)になっている。パトリス・エヴラとルイス・スアレスの因縁が再燃することも当面はないだろう。この夏、ネイマールの代理人が元代表監督のルイス・フェリペ・スコラーリを「傲慢でうぬぼれた愚かなジジイ」とののしったが、ネイマール自身はそれに乗ろうとしなかった。

 何よりがっかりなのは、世界最高のプレーヤーの座を争うクリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシが、互いに憎み合うのを断固として拒否していることだ。リーガの覇権とバロンドールを巡って毎年激闘を繰り広げているにもかかわらず、2人のライバル関係は一向に私怨には発展しない。一度でいいから、クラシコの前にプロレス団体“WWE”式の舌戦を見せてくれたら面白いのに。しかし彼らは“ザ・ロック”とは違い、「オマエ、見掛けはターザンだがプレーは女みたいだな。このメッシ様にサンドイッチでも作ってこい!」などと言って、相手を挑発したりはしないのだ。

 もっとも、その手の泥仕合や子供じみたケンカを見るのが大好きな私たちにも、ちょっとした希望はある。幸いにして、それはCR7に関することだ。このレアルの騎士団長は表面的には順風満帆だ。クラブは昨シーズン、待望久しかった10度目の欧州制覇(デシマ)を成し遂げ、これでロナウドもサンティアゴ・ベルナベウの伝説に永遠に名を刻めるだろう。いずれは銅像が建つかもしれない。2014年の初めには、メッシを抑えて2度目のバロンドールも獲得した。世界最高のフットボーラーが、世界最高のクラブの黄金期にプレーしているのである。

 そんな“楽園”でトラブルが起こるのなら、私たち野次馬にとっては大歓迎だ。そして順風満帆のロナウドにも、一つだけ苛立ちの種があるように思える。ギャレス・ベイルの存在だ。ロナウドに匹敵するスキルを持ち、ロナウドよりも高額の移籍金で入団してきた4歳年下のこの男が、「銀河系軍団の旗頭」というロナウドの役回りを脅かそうとしているのだ。

 こうなることは多くの人が予想していた。2人の初顔合わせの様子は、英国のエリザベス女王がシンフェイン党のマーティン・マクギネス(IRAの元司令官)と交わした握手にも似たものだった。クラブ側が細心の注意を払ってお膳立てしたPR用の握手、いわば“1億6600万ポンドの握手”には、「ここにはいかなる利己主義もない。2人はともにクラブの大義のために尽くす」と示す意図があった。クラブ側がベイルの移籍金の額を「非公表」としたのも、ロナウドのエゴを傷つけないための配慮だろう。

 しかし実態が少し違ったものであったことは、ボディランゲージの専門家ならずとも見てとれた。ロナウドの態度たるや、ホワイトタイガーにまたがり、金の延べ棒をジャグリングし、ビッグイヤーを帽子代わりに頭に乗せていてもおかしくないと思えたほどだ。アルマーニのジーンズ、グッチのサングラス、ダイヤのピアス、6万ドルの腕時計、ルイ・ヴィトンのクラッチバッグといった出で立ちで、ステータスをひけらかしていたのだ。

 一方のベイルは全くの自然体。グレーのカーディガンを羽織り、身の回りの品はカーディフで買った5ペンスのビニール袋に入れていた。ロナウドがベイルを萎縮させるためにわざとブランド品で身を固めたとか(ロナウドは普段から高級品志向だ)、ベイルが意図的に下手に出ようとしてビニール袋を持ってきたなどと考えるのは荒唐無稽かもしれない。しかし、その心温まる光景がほんの数秒しか続かなかったことを思うと、つい想像を膨らませてしまう。

 ロナウドはベイルとおしゃべりするでもなく、クラブハウスを案内するでもなく、さっさとその場を離れて新入りを戸惑わせた。トレーニングが始まってからも、ちょっとした事件が続いた。ラフプレーを好むとは思えないロナウドが、ベイルに股抜きをされた後、そのお返しにきついタックルを見舞ったのだ。取るに足らないことだろうか? そうかもしれない。だがその後もずっとそんな調子なのだ。ベイルのほうは明らかにロナウドを崇拝し、彼に認められたいと願っている。しかしロナウドのほうは、必ずしもそうは感じていない。

 2人の葛藤が表面化したのは、3月のセビージャ戦でFKのチャンスを得た時だ。ベイルが「蹴ってもいいか」と尋ねると、ロナウドは「蹴りたきゃ蹴れよ」と答え、PS4を取りあげられた7歳児のようにむくれた。そしてベイルのキックがクロスバーを越えると、ロナウドはチームメートに、自軍のベンチに、そして夜空に向かってわめき散らした。

 また、チャンピオンズリーグ決勝のアトレティコ・マドリード戦では、ベイルが延長に入ってゴールを決めても、ロナウドはピッチ上のチームメートで唯一、祝福に駆け寄らなかった。そして、蛇足とも言える自らのPKで4-1とすると、ユニフォームを脱ぎ捨て、鍛え上げた肉体を誇示したのだ。このテレビカメラ向けのパフォーマンスによってベイルの逆転弾はすっかり霞み、CR7の割れた腹筋がデシマを象徴するひとこまになった。

葛藤が表面化しつつある2選手は、レアル・マドリードで共存していくことができるのか? 続きは、ワールドサッカーキング1月号でチェック!