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7部の弱小クラブが3回戦へ…FA杯台風の目となるか/イングランド現地直送コラム

2014.12.16

<<enter caption here>> at Victoria Park on December 5, 2014 in Hartlepool, England.

Hartlepool United v Blyth Spartans - FA Cup Second Round
FAカップのトロフィー [写真]=Getty Images

 今年で134回目を迎える世界最古のカップ戦、FA(イングランド協会)カップの64強が出そろった。FA杯の魅力と言えば、下部リーグのクラブが強豪相手に番狂わせを起こす『ジャイアント・キリング=大物食い』だ。

 プレミアリーグ勢も参戦する3回戦には、セミプロレベルに相当する7部リーグのブリス・スパルタンズが最もカテゴリーの低いチームとして登場する。8日に行われた3回戦の抽選会の時点で、プレミアリーグで首位に立つチェルシーと7部のノーザンプレミアリーグ・プレミアディビジョンに所属するブリス・スパルタンズの順位差は実に157位。

Hartlepool v Blyth Spartans - FA Cup
ハートリプール対ブリス・スパルタンズの会場を訪れたシアラー氏 [写真]=Getty Images

 ブリス・スパルタンズは2回戦で対戦したプロ4部のハートリプールを2-1の劇的な逆転勝利で撃破した。試合前には元イングランド代表FWアラン・シアラー氏がチーム控室に現れ、激励の言葉をかけてチームの士気を高めたとされる。終了間際に逆転ゴールを決めて話題をさらったのは、母が経営する地元の小さなコンビニで働く21歳のジャレット・リバーズだった。

 ブリス・スパルタンズは予選から6回勝ち抜いた末、本戦3回戦までたどり着いたが、予選1回戦では8部ダーリントン1883に引き分け再試合に持ち込まれるなど、冷や汗をかかされていた。1月3日に行われる3回戦で2部バーミンガム・シティをホームで迎え撃つブリス・スパルタンズのトム・ウェイド監督は「我々はフットボールに情熱を注いでいるし、FAカップは世界最高の大会だ。その大会の一部になれるのは、社会人選手やサポーターにとって特別なこと」と語っている。

■ブリス・スパルタンズの予選1回戦からの戦績
予選1回戦:<8部>ダーリントン1883に0-0、再試合3-0
予選2回戦:<7部>スケルマーズデール・ユナイテッドに4-1
予選3回戦:<8部>ミックルオーバー・スポーツに2-1
予選4回戦:<8部>リーク・タウンに4-3
本戦1回戦:<5部>アルトリンチャムに4-1
本戦2回戦:<4部>ハートリプールに2-1
本戦3回戦:<2部>バーミンガムと対戦

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勝利を喜ぶブリス・スパルタンズのサポーター [写真]=Getty Images

 1899年創設のブリス・スパルタンズはプロ昇格の経験が一度もなく、彼らがFA杯で本戦3回戦に姿を見せるのは史上4度目のこと。1977-78シーズンには史上最高の5回戦(16強)まで進んだが、当時3部のレクサムに引き分け再試合の末に敗退した。その後、3回戦に姿を現したのは2008-09シーズンで、当時プレミアリーグのブラックバーンに0-1で敗れたが、史上初めて1部のクラブとの対戦を実現させた。

 5部リーグ以下の社会人クラブが戦後、FA杯5回戦(16強)に進出したのは7チームのみで、ブリス・スパルタンズはそのうち唯一、予選1回戦から参戦し、引き分け再試合まで粘ったチームとなっている。戦後、16強の壁を越えた社会人クラブは無いだけに、1977-78シーズンと酷似した快進撃を見せるブリス・スパルタンズに注目が集まっている。

■今季の3回戦では、過去の決勝戦が4つ再現

 このほか、3回戦で注目を集めているのは、過去の決勝戦の再現となる4つのカードだ。

Arsenal v Hull City - FA Cup Final
昨季のFAカップを制したアーセナル [写真]=The FA via Getty Images

 中でも注目は昨季決勝戦のカード、アーセナル対ハル・シティの試合で、前回はアーセナルが延長戦の末に3-2で逆転勝利を収め、マンチェスター・Uと歴代最多タイとなる11度目のFA杯を制し、9年ぶりの栄冠を手にした。

 クラブの買収・移転に伴い2002年にファンが創設したAFCウィンブルドンは、9部リーグからスタートして2011年にプロである4部リーグに昇格。以来3シーズン、4部残留に成功しているAFCウィンブルドンは、FA杯3回戦でホームに強豪リヴァプールを迎える。両チームは1988年の決勝で対戦しており、当時は旧ウィンブルドンが1-0で勝利し、初優勝を収めた。

 さらに、サンダーランド対2部リーズ、バーンリー対トッテナムのカードもそれぞれ1973年、1962年の決勝戦の再現となり、当時はサンダーランドが1-0、トッテナムが3-1で勝利している。

 なお、プレミアリーグで首位を走るチェルシーは敵地で2部ワトフォード、昨季の同リーグ覇者マンチェスター・Cはホームで2部シェフィールド・ウェンズデー、日本代表DF吉田麻也が所属するサウサンプトンはホームでイプスウィッチと対戦する。ちなみにサウサンプトンが129年の歴史で唯一獲得した栄冠は1976年のFA杯のみとなっている。

藤井重隆(ふじい・しげたか)。東京都出身。ロンドン大学ゴールドスミス卒。19歳からスポニチの英国通信員として稲本潤一選手の取材を中心にライター活動を開始。日刊スポーツ、時事通信を経て欧州サッカー界に精通。イングランド7部でのプレーも経験し、FAレベル2コーチング・ライセンス取得。現在も西ロンドンの社会人チームでプレーしながら、本場のフットボールに浸る。

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