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【ファインダーを覗いて…ピッチサイドからの考察】G大阪、J1優勝に宇佐美の復活有り

2014.12.12

 12月6日のJ1最終節。首位争いをするガンバ大阪、浦和レッズ、鹿島アントラーズの3チームに優勝の可能性があった。前節、首位の浦和がアウェーでサガン鳥栖と引き分け、2位のG大阪がホームでヴィッセル神戸に勝ち、得失点差で首位が入れ替わった。

 勝てば、文句なしの優勝となるG大阪は昨季、J2で優勝し、J1に昇格したばかり。ヤマザキナビスコカップをすでに制しており、13日に行われる天皇杯決勝にも駒を進めているため、三冠の可能性さえある。J1昇格のシーズンに三冠を取ったチームはないという状況に、フォトグラファーとして、日本にいながら優勝の瞬間を逃すことは出来ない。

 そう判断した私は、チャンピオンズリーグのグループ最終戦の取材をキャンセルして、日本に残り、G大阪が二冠、三冠を取る可能性に賭けた。

 名古屋から300キロの道のりを車で約4時間。暖かいというイメージの四国、徳島は山間部で大雪となり、一部の地域は停電で孤立しているという状況だった。

 相手は、最下位でJ2降格が決まっている徳島ヴォルティス。普段撮影をしているヨーロッパの場合、こういう相手との試合は意外と難しくなる。それは優勝の可能性のあるチームが、戦う相手が「最下位」ということで、どうしても油断してしまうからだ。

 一方、「最下位」のチームは、この試合で負けようと勝とうと「降格」することを変えることは出来ない。しかし、ホームで戦う以上、「無様な試合には出来ない」という気持ちが働く。

 前半はG大阪が有利に試合を運ぶものの、決定機には相手GKのファインプレーに阻まれたり、シュートが枠に飛ばなかったりと、チャンスを生かすことが出来ない。頂上決戦となった浦和対G大阪では今野泰幸が躍動。試合を決定付ける仕事をするのではと私が期待した宇佐美貴史は、自分で何とかしようとする気持ちが強すぎたのかボールを取られるシーンが多く、後半にリンスと交代。リンスが終了間際の先制点をお膳立てをした。

 さぞかし、悔しかっただろう宇佐美。そういえば宇佐美はG大阪から2011年にドイツ、いや欧州の強豪であるバイエルンに移籍した。プレシーズンマッチのバルセロナ戦では、その可能性を見せてくれた。対峙したマクスウェル(現パリSG)の股を抜いて突破して見せたのだった。

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バルセロナのマクスウェルを翻弄する宇佐美 [写真]=Kazuhito Yamada/Kaz Photography

 バイエルンでは、交代出場したデビュー戦で交代させられるという苦い経験もした。交代出場した宇佐美が、リードした試合で簡単にボールを奪われ、相手にゴールを許すようなピンチになったことに怒った監督がDFと交代させた。まだ、守備の意識が足りなかったのかも知れない。バイエルンでは各国代表のタレントが揃っている。この中で10代の選手が結果を残すのは難しすぎたかも知れない。

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宇佐美が座るベンチにもタレントが揃うバイエルン [写真]=Kazuhito Yamada/Kaz Photography

 レンタル移籍したバイエルンではシーズン終了後に契約するオプションがあったが、行使されずホッフェンハイムにレンタル移籍。2012-13シーズンも出場機会に恵まれず、最終的にG大阪に復帰。J2からの昇格に貢献したものの、今季は故障で前半戦を棒に振った。しかし復帰したW杯中断後はG大阪のV字回復に大きく貢献した。

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常にゴールを狙う姿勢を見せる宇佐美 [写真]=Kazuhito Yamada/Kaz Photography

 最終戦の徳島との試合でも相手が引いて決定的チャンスがなかなか作れない中、強引にシュートに持っていく姿も見られた。試合は引き分けに終わったものの、優勝争いを演じていた浦和と鹿島がそれぞれホームで敗戦。G大阪に優勝が転がり込んできた。

 これで今季二冠。ここまで来たら天皇杯にも勝って三冠を達成し、予備登録の50人に入った来年1月のアジアカップで日本代表に返り咲いて欲しいものだ。

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シャーレを掲げて感無量の宇佐美 [写真]=Kazuhito Yamada/Kaz Photography
山田一仁(やまだ・かずひと)。1957年、岐阜県生まれ。大学卒業後、1981年から(株)文藝春秋写真部にスタッフカメラマンとして在籍。1989年にイギリスへと渡り、1990年からフリーカメラマンとして活動を始める。2007年に(有)Kaz Photographyを設立。日本人フリーランスカメラマンとして、プレミアリーグの撮影ライセンスを所持し、現在は年間の半分近くをロンドンを拠点として、主にプレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、海外で活躍する日本人選手を中心に取材している。

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