2014.12.12

“銀河系の仕掛け人”ペレス会長が語るクラブ経営とは

[ワールドサッカーキング1月号掲載]

[ワールドサッカーキング1月号掲載]

練習場の新設、ビッグネームの乱獲、スタジアムの拡張……。フロレンティーノ・ペレスは“銀河系”の仕掛人として、常に周囲の想像のはるか上をいくアクションを起こしてきた。世界一のクラブのトップが語る、クラブ運営とは?
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インタビュー・文=ホセ・フェリックス・ディアス
翻訳=高山 港
写真=ゲッティ イメージズ、アフロ

 フロレンティーノ・ペレスは現在67歳、レアル・マドリードの会長であると同時に、スペイン最大の建設会社『ACS』の社長でもある。2000年のレアル会長就任後、06年に一度は辞職したが、09年に復帰してから現在に至るまで、世界一のクラブの会長として数々のタイトルを手にしてきた。

 やり手の経営者としてクラブの収益アップに大きく貢献し、レアルを世界ナンバーワンの収益を誇るスポーツクラブにした功績も見逃せない。昨年度のクラブ収益は6億5000万ユーロ(約877億円)。これはNBAやNFLのどのチームも及ばない数字である。

 彼が経営する『ACS』社は16万2000人の従業員数を誇る超巨大企業へと成長し、2013年には純利益7億ユーロ(約1015億円)を記録。年商383億ユーロ(約5兆5000億円)のうち86パーセントはスペイン国外での事業によるものである。ペレスはレアルの会長として名声を得ると同時に、ビジネス界でも最大限の評価を得ている。ちなみに、彼の純資産は推定19億ドル(約2280億円)で、世界最大のビジネス誌『フォーブス』は、「世界で最も大きな個人資産を持つ人物の一人」としてペレスを紹介している。

 ペレスはマドリードに数多くのビッグネームを連れて来た。第一次政権時にはルイス・フィーゴ、ジネディーヌ・ジダン、ロナウド、デイヴィッド・ベッカムらを獲得して“銀河系軍団”を構築。会長に復帰した09年には2億5000万ユーロ(約362億円)を投じてカカー、クリスティアーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマらを獲得した。昨夏はギャレス・ベイル、そして今夏はハメス・ロドリゲスとトニ・クロースと、次々に大物を獲得してマドリディスタを興奮させている。

 ペレスはまた、初めて会長になった際に老朽化した練習場をマドリード市に売却して借金を清算し、郊外のバルデベバスに新たな練習場を建設。この施設では今、トップチームと下部組織の5チームが毎日トレーニングを行っている。更に建設業のプロとして本拠地サンティアゴ・ベルナベウの大改修工事にも着手。スタンドを9万人収容まで増設することに加え、ショッピングモールやホテルを併設して、近代的な多目的スタジアムへと改修するプランを打ち出している。

 世界一のクラブの会長としてその能力を遺憾なく発揮するペレスが、快くインタビューに応じてくれた。

リスボンでの勝利は特別だった

――レアル・マドリードの会長としてのあなたの信念、モットーは何でしょう?

ペレス レアル・マドリードは国際的なクラブだ。サッカー界で最も多くのタイトルを手にしてきたクラブであり、最も影響力のあるクラブでもある。当然ながら、世界中から注目され、クラブの詳細を常にチェックされる。だが、私はそれが良いことだと思っている。周囲からの“監視”が、クラブをより良くするのに役立つからね。私のモットーは「世界中から常に見られている」という状況を維持し、クラブの更なる成長に役立てることだ。

――レアルの会長職を務めるにあたって、参考にしている人物はいますか?

ペレス サンティアゴ・ベルナベウを手本として仕事をしている。彼は国内最高の選手、世界最高の選手をマドリードに呼び寄せてチーム強化を図っていた。加えて下部組織の充実に力を注ぐことも忘れなかった。私はベルナベウのやり方を踏襲してきたつもりだ。その結果、クラブにチャンピオンズカップ5連覇を成し遂げた時代のような黄金期をもたらすことができた。ソシオの皆さんに満足してもらえるような、強いチームを作り上げたと自負している。

――06年に一度会長を退いた後、もう一度戻って来ようと思った理由は何ですか?

ペレス 辞任した06年当時、クラブは2シーズン連続で無冠に終わっていた。クラブには何らかの変化が必要だと感じていた。熟考を重ねた末、自らがクラブを去ることで変化のきっかけになればと思ったんだ。ただ、辞任した後も「常に世界最高の選手が集うチーム」という考えを変えるべきではない、自分の運営方法に間違いはなかったと思っていた。ところが後任は私のやり方を踏襲しなかった。ラモン・カルデロンのやり方にファンは不満を抱いていたよ。だから、彼が辞任を発表した時、もう一度私が会長選に出るしかないと思ったんだ。私の政策に間違いはないという確信もあった。ソシオに新たな喜びをもたらすことができるのは自分しかいないとね。会長選に立候補したのは私だけだった。それですんなり戻れたというわけだ。

――そして昨シーズン、あなたはついに長年の夢だった10度目の欧州制覇を成し遂げました。“デシマ”の瞬間はどんな気分でしたか?

ペレス デシマはすべてのマドリディスタにとって強迫観念にも似た使命だった。レアルは1日も休むことなく、最大限の自己犠牲を払ってデシマを実現しようと努力していたんだ。それまで我々は3年連続で準決勝に進出していたが、優勝にはあと一歩手が届かずにいた。我々にとってチャンピオンズリーグ(CL)がどういう意味を持つのか、それはクラブの人間全員が知っている。レアルはこの大会の創始者のようなものだ。自分たちが生み出し育てた大会で、長期間優勝できないなんて耐えられない。だから、我々は常にCL制覇を目標に戦っているんだよ。誰もが知っているように、レアルの歴史と伝統はCLで作られてきた。我々のレジェンドはこの大会で育ってきたんだよ。

――アトレティコ・マドリードとの決勝は決して簡単な試合ではありませんでした。

ペレス 私自身、アトレティコに先制を許した時は悲惨な気持ちになった。しかしその分、アディショナルタイムにセルヒオ・ラモスが同点ゴールを決めた時は感激したし、誇らしい気持ちになった。デシマは特別なものだ。それを求めてから12年もの月日が経っていたのだからね。我々は毎年、デシマを口にしながら12年もの間、ファンの期待を裏切る形となってしまった。それだけにリスボンでの勝利は特別だったよ。

全員の契約が私にとって重要だった

――大きな成功を収めたにもかかわらず、クラブはこの夏、再び大金を投じてハメス・ロドリゲスやトニ・クロースを獲得しました。その理由を説明してくれませんか?

ペレス レアルはより強いチームになるという責務を担っている。常に成長することが義務づけられているんだよ。君が言うように、昨シーズンの我々は偉大なチームだったと思う。ただ正直に言えば、まだ修正すべき点もあった。今夏の補強は、もっと強くなれるはずだと考えた結果だよ。

――より強くなるための答えがハメスらの獲得だったと?

ペレス ハメスはクオリティーのあるサッカーを体現する選手だ。そのクオリティーはワールドカップ(W杯)でも立証された。類まれなテクニックと得点力で、大会優秀選手の一人になったのだからね。実はハメスに関しては、彼がモナコと契約する前から高く評価していた。そして、W杯での活躍を見て我々の目に狂いはないと確信したんだ。彼はレアルのサッカーにすぐに順応し、我々の判断が正しかったことを証明してくれている。クロースにしてもケイロル・ナバスにしても、私たちの選択に間違いはなかった。2人とも期待どおりの活躍を見せてくれている。

――一方でアンヘル・ディ・マリアとシャビ・アロンソの放出にはファンや選手から反対の声もありました。なぜ周囲の反対を押し切って、売却に踏み切ったのですか?

ペレス 選手の出入りは現在のサッカー界では当たり前のことだ。大抵のファンは去っていく選手との別れを惜しみ、入ってくる選手には懐疑的になる。移籍に関して反対意見があるのはある意味、当たり前のことなんだ。ただ理解してほしいのは、契約期間が残っているのにチームを去るということは、選手が新たな道を求めたからだ。レアルは常に他のクラブよりも良い条件を提示してきた。それでも、他のクラブでのプレーを選択したのだから、選手にそれなりの理由があったということだよ。残念ながらディ・マリアは他のチームでのプレーを選択した。ただ、それについて選手を批判する気はない。X・アロンソの放出も我々が望んでいたことではなかったが、彼が「新たな道を歩みたい」と言ってきた時、私も(カルロ)アンチェロッティもそれを認めるしかなかった。彼らはレアルに最大限貢献してくれたいわば功労者だ。功労者の希望は受け入れるべきだと思ったんだよ。人間として当然のことだ。

――自身が会長を務めている期間で、最も重要だったのは誰との契約ですか?

ペレス すべてが特別な状況下での契約だった。決定に至るまでにはそれぞれにドラマがあったからね。契約の話になるとどうしても直近の移籍が印象深いが、私にとって忘れられないのはやはりフィーゴ、ジダンとの契約だ。何せこの2人は現役引退後も役員や指導者としてクラブの発展に寄与している。重要な契約だったことは明らかだ。もちろん、ロナウド、ベッカム、クリスティアーノ、ベンゼマなど、数多くのビッグネームを獲得できたことは私の誇りでもある。質問の答えについては「比較できない」と言っておく。全員の契約が、私にとって、そしてクラブにとって重要だったと言うべきだ。

――間もなく冬の移籍市場が開きますが、新たな獲得候補として気になっている選手はいるのでしょうか?

ペレス 今はそういう話をすべき時期ではない。一つだけ言えるのは、現時点で我々のチームは非常にうまくいっているということだ。と言うことは、1月の市場で動く必要はない。新たな補強については6月まで封印するつもりだよ。そもそも私自身、シーズンの真っ最中に補強の話をするのは好きではないんだ。移籍のための期間はシーズン終了後の6月から8月31日まで。どの選手がいいかを考える時間はたくさんある。焦らずにじっくりやるよ。

“デシマ”達成の瞬間や選手補強について語ったペレスが、主力選手の一人であるクリスティアーノ・ロナウドやライバルクラブのバルセロナに言及。インタビューの続きは、発売中のワールドサッカーキング1月号でチェック!