2014.12.10

不調ドルトムントに見えた前主将ケールの輝き/ドイツ現地直送コラム

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ホッフェンハイム戦で勝利を喜ぶケール(左) [写真]=Borussia Dortmund/Getty Images

 5日に行われたブンデスリーガ第14節で、日本代表MF香川真司が所属するドルトムントはホッフェンハイムに1-0で勝利し最下位を脱出。順位を14位まで浮上させた。

 ドイツ紙『デア・ヴェステン』は7日、この試合の勝因として、昨年まで主将を務めていた元ドイツ代表MFセバスティアン・ケールの存在を挙げている。

 今シーズン限りでの現役引退を表明している34歳の同選手だが、開幕からここまでのパフォーマンスは非常に良く、スポーツディレクターのミヒャエル・ツォルク氏やユルゲン・クロップ監督など首脳陣は、引退撤回の説得に動く可能性も示唆している。

Borussia Dortmund - Training & Press Conference
今季での引退を表明しているケール [写真]=Bongarts/Getty Images

 そんなケールの役割はピッチ上に留まらない。同紙によると、上述の試合が始まる前のロッカールームで、ドイツ代表DFマッツ・フンメルスとケールの間でこんなやり取りがなされたという。

ケール「君がやる? それとも俺がやる?」
フンメルス「君がやってくれ」

 そのやり取りの後、ケールは周囲を鼓舞するためチーム全員の前に立ち、スピーチを行ったという。また、自身の後を継いで現在主将となったフンメルスの顔を立てるため、そのスピーチの前に同選手の意向も確認するという、ケールなりの気遣いもそこにはあった。

 フンメルスがこの件について試合後、CS放送『Sky』でのインタビューで「ケリー(ケール)は試合前にみんなの前で話してくれたんだが、それは彼の才能だよ。ファンタスティックな人間だ」と話せば、MFイルカイ・ギュンドアンも「ケリーはいつだって、どんな状況だって、正しい言葉を見つけることができる。彼は今日再びそれを証明した。彼がみんなの前で語りかけるように話すと、僕は感銘を受けるんだ。その言葉は彼のハートから出ているからだろうね。それを聞くと、残っていた数パーセントの力が湧きあがってくるんだ」と最大級の賛辞を送っていた。

Borussia Dortmund v 1899 Hoffenheim - Bundesliga
ホッフェンハイム戦後、サポーターの声援に応えたケール [写真]=Borussia Dortmund/Getty Images

 ただし、当の本人が「何を話したかは全く覚えていない。ひょっとしたらその中には、言ってはいけない言葉も含まれていたかもしれないね」とはぐらかしたように、ケールが周囲をどのように奮い立たせたのかは内緒なようだ。

 かつて負傷で長期離脱していた同選手は2011-12シーズンで本格的に復帰したものの、切り替えの早いドルトムントのサッカーに当初はついていけず、ドイツメディアからも“終わった選手”と見られていた。

 しかし今や同クラブにおいて、精神面だけでなくプレー面でも最も輝きを放つプレーヤーがケールであることに、異論を挟む者はいない。

鈴木智貴(すずき・としき)。1981年生まれ。静岡県天竜市(現:浜松市天竜区)出身。日本での社会人生活を経て、2010夏よりドイツ在住。現在デュッセルドルフのアマチュアクラブでU-12監督を務め、プロチームの指導者になるべく修行中の身。ドイツサッカー連盟公認C級(UEFA-B級)指導者ライセンスを取得。